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異世界っぽいVR世界に閉じ込められたけどなんとかなりそうです。  作者: ねぎとろ


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52話 『野営』

 王都へと向かいながら歩いていたが、やがて日が暮れ始めて辺りには暗闇が見え始めていた。

 街からどの程度進んだのかは分からないが、幸いにもゴブリン達以降はモンスターに出会うこともなかったのだからある程度は進んだ筈だろう。


「よし。そろそろ野営の準備を始めるか! そっちの、えーっと、クロ? だっけか? はテントを張るのを手伝ってくれると助かる! 残りの二人はモンスターへの警戒と、そうだな。出来るなら火起こしを頼んでいいか?」


 依頼主からの指示通りに俺達は頷き、行動を開始した。俺とシロは依頼主の持ってきた火打石と細枝の束を受け取ってから少しテントから離れて火を起こし始めた。だが、ここである問題が一つ生じてしまった。

(やべぇ……火の起こし方が分からねぇ)

 カンカンと音を鳴らして火打石を使ってみてももちろん火なんて起こせるわけがなかった。もちろん、現実の世界でもやったことがないのに、この世界で突然出来るわけがないのも分かっている。


 だが、今更火打石が使えませんなんて依頼主にも言えない。そもそも、俺が火打石を鳴らしている間中ずっとシロが尊敬の眼差しで見てくるのだ。


「シ、シロ? そんなに見てなくていいんだぞ?」


「ううん! マキトは気にしないで!! 勝手に見てるだけだから!」


「そ、そうか。それじゃ続けるぞ!」


「うん!!」


 シロが見てくる中でも俺は淡々と火打石を使うが、どんなにやっても火花が散ることなくただ音だけが鳴り響く。

(見られてるっていう理由で緊張して上手く出来ないのかな)

 そんなことを思いながら、シロを一度見ると、どうやら今は俺を見てるのではなく、火打石を見ているように思えた。


「シロ。これやってみるか?」


「えっ!! 良いの!?」


「おう。ほら、やってみていいぞ」


 シロへと火打石を渡し、俺は自身のステータスを見る。と言っても、見るのはステータスの数値でなく、俺の魔法の欄にある『火魔法』を調べるだけだ。


『火魔法』

 第一位階:(ファイア)

 第二位階:火の玉(ファイアーボール)

 第三位階:???


(まぁこんなもんか。あとは詠唱を見るだけだな)

 シロが火打石をカンカンと鳴らしているうちに俺は今使えそうな第一位階の『炎』の詠唱を見ることにした。


 炎:荒ぶる火の精霊よ、その力の片鱗を今ここで見せつけよ。


「うわっ……」


「ん? マキト、どしたのー?」


 詠唱を見て余りにも厨二病っぽい言葉に少し声が出てしまった。ゲームの世界だから仕方ないかもしれないが、やはりいざ自分が詠唱するとなると恥ずかしい。


「いや、気にしないでくれ。それより火の方はどうだ?」


「んー。全然ダメ〜」


「そうか。んじゃ、俺の魔法を使ってみるか。危ないからシロは少し離れてくれ」


 クロと依頼主が立てているテントはもうそろそろ出来あがる。今火を起こせば丁度良いくらいの筈だ。


「荒ぶる火の精霊よ、その力の片鱗を今ここで見せつけよ。『(ファイヤ)!』」


 俺の放った魔法は狙い通りに火を起こすことが出来た。だが、威力が少し強すぎたのか、火が想定よりも強くなってしまった。


「マキトは火の魔法も使えたの!?」


「あぁ。って言っても、今初めて使ったけどな」


 シロが尊敬の眼差しで見てくる中、俺たちを呼ぶ依頼主の声が聞こえた。どうやらテントが立て終わったみたいだ。


「よし! テントも出来たし、ちょっと強いが火もある。あとは飯を食って寝るだけだ!」


 依頼主から夜ご飯を受け取り、俺達は火の周りでは普段より早い気がするが、夜ご飯を食べる事にした。

 どうやら、火自体は多少大きい方がモンスターも近寄りづらくなるから良いらしい。


「野営とかする人って基本的にこういうご飯なんですか?」


 俺は手に持った干し肉と少し固めのパン。それに、日本にもあったチーズを持ちながら依頼主へと訊ねた。

 シロとクロも別にこのご飯に不満はないみたいだし、俺ももちろん大丈夫だが、もしも俺達がこんな風に野宿を頻繁にするようになった場合、さすがに毎回このご飯じゃ辛いと思ったからだ。


「うーん。まぁ基本的には干し肉とパンはセットだな。俺は火でチーズを溶かしてパンと肉と食べるのが好きだから毎回チーズを使ってるが……まぁ、人それぞれだな。料理が出来るやつは材料やらを買ってきて料理するしな」


「へぇ。そうなんですね。あ、ちなみに、チーズをどんな風に溶かしてるんですか?」


「ん? あぁ。まぁ俺が先にやってやるから真似してみろ。それで出来ると思うぞ」


 依頼主に言われた通り、俺達は一度真似してみることにした。まず、チーズを火に近づけ過ぎないようにして溶かし、ある程度溶けたところで、パンに乗せて、その上に干し肉を乗せる。

 真似するまでもなくとてつもない簡単な作業だった。


 だが、こんな簡単に作れるのにチーズのお陰もあってかものすごく美味くなっていた。シロも「美味しい〜」と言いながら食べているし、俺やクロも充分満足出来た。


「それじゃ、飯も食い終わったことだし、俺は寝させてもらうよ。夜の警戒はあんたらに任せたからな」


「はい! それも依頼の内容ですから任せてください!!」


 依頼主がテントへと入ったのを見てから、俺達は少しだけテントから離れた。

 もちろん、テント周辺への警戒も怠ってはいない。ただ、さすがにモンスターを召喚するところを見られたら不味い事になる。それに、俺がディルムッドから貰った槍についても説明しなければならなかった。


「んじゃ、とりあえず俺の持ってるこの槍から説明するよ」


『はい。私はそれを聞き次第念の為テントへと戻ります。テイムモンスターの方については後ほど説明をお願いしても宜しいですか?』


「あぁ。それで大丈夫だ。依頼主を少しの間任せるからな」


『お任せ下さい。マスター』


「シロは槍なんかより早くモンスターが見たいんだけどな〜」


「まぁまぁ。手短に話すからシロは聞き流しといてくれていいぞ」


「ううん〜。一応聞いとくー!」


「そうか。ま、とりあえずテントが心配だから重要な所だけ話すぞ」


 こうして、俺はシロとクロにこの槍の名前が『ゲイボルク』という事と、特殊能力で、どんな原理かは知らないが、持ち主の手元から離れた場合、任意で瞬時に戻すことが出来るということを伝えた。

 シロは終始驚いたりしてくれて、クロは『良かったですね。マスター』と言ってくれた。


 その後、さっき話した通り、クロには先にテントの方へと戻って貰い、一人での警戒を任せた。

 もちろん、俺とシロは更にテントから少し離れて、久しぶりのモンスター召喚を試すことにしたのだった。

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