51話 『圧勝』
表現方法少し変えたのですがどうだろ……?
槍を持ち、先陣切って駆け抜けてゴブリンを見据える。
(ちっ、さすがに速度じゃ勝てねえか……)
ゴブリンへと攻撃しようとしても、従属させているのか、ただの仲間意識なのかは分からないが、オオカミ型のモンスターが俺の行動を阻害しようとしてきた。
「クロ! ゴブリンの相手は任せたぞ! シロはその援護に回ってくれ! 俺はこの二匹を引き付ける!!」
『マスターの命令、必ず遂行してみせます!!』
「おっけー! 頑張って援護するね!」
幸いにも、オオカミ型のモンスターは俺が動けば俺の動きを制限する為か挟むようにして俺のあとを付いてきている。これならゴブリン達から引き離すのも簡単だ。
ただ、問題はクロとシロが二人で三匹のゴブリンに対応出来るかという点だ。一人でも逃して馬車まで辿り着けられてしまえば俺達の信用は一瞬で失わられると同時に、依頼主を危険に晒してしまうだろう。それだけは避けなければならない。
(クロはともかくとして、シロがゴブリン相手に侮らなければ良いけど……)
戦闘に集中せず、ゴブリン達の方を考えていたせいか、俺はオオカミ型のモンスターの姿を一瞬見失ってしまった。
「───くっ、あぶねっ!」
今はクロやシロの心配をしている場合ではない。こんな雑魚共と思って侮っているのはきっと俺の方だった。多分だが、単体で見ればこのモンスター達は弱いだろう。だが、先程のように侮れば簡単に殺られてしまう。
さっきは間一髪躱す事が出来たが、使い慣れていない槍を俺が使う時点でもっと集中して戦うべきなのだ。
「……よし。気合い入れろ。俺」
動きを止め、自分の頬を叩いて気合いを入れる。ここから先は倒しきるまでシロとクロよりもこちらへと集中しなければならない。
ゴブリン達を一切気にせず、オオカミ型のモンスター達をしっかりと観察する。行動を一瞬たりとも見逃さず、隙が出来るその瞬間を俺は待った。
そして、俺が前方のオオカミしか見ていないと思ったのか分からないが、俺の後ろからもう一匹のオオカミが攻撃を仕掛けてきた。
「───俺の勝ちだな」
オオカミが俺の首を噛み付こうと口を開けた瞬間、俺は持っていた槍を回転させ、その開いた口へと無理やりねじ込む。槍はぐんぐんオオカミを貫いていき、やがて口から完全に貫かれたオオカミは息絶えてしまった。
残すはあと一匹。と思ったが、どうやら残された一匹は俺との力の差を感じ取ってしまったらしい。ゴブリンすらも見捨てて逃げ出してしまった。
(念の為モンスターを召喚して追い掛けさせるか……?)
追跡させて倒させるにはモンスターを召喚するのが手っ取り早いと思ったが、今はまだダメだ。モンスターを召喚出来ることが依頼主や他の人間にバレてしまえば最悪な事態に陥る可能性もある。
「逃がしておくか」
視線を逃げているオオカミから離し、未だ戦っているシロとクロ達へと向けた。未だ戦っていると言っても、既に残すところゴブリンは二匹。それに、一匹はもう死ぬだろう。
と思った矢先にクロが一匹を仕留め、残すところは最後の一匹となってしまった。
『グ、グギャギャ……』
こちらも力の差を感じて恐怖を感じたのか、ジリジリと後ろへと後退していた。一匹となってしまい、殺されるのが怖いのだろう。
だが、クロにそんな情けはない。元はと言えば襲ってきたのはゴブリン達の方だ。殺されてしまってもこの世界ならば仕方がないと言えてしまう。
「私の仕事はおーわり! あとはクロに任せるー!」
『畏まりました。お任せ下さい』
シロがどんな援護をしたのか見ていなかったが、きっとシロなりに頑張ったのだろう。ただ、どうやら買ってあげたレイピアは使っていないようだ。
その点、クロは持たせた大剣をもう慣れたのか、両手で持ち、構えながら恐怖で遂に逃げ出してしまったゴブリンを追い掛け始めている。
「クロ! そのゴブリン俺が仕留めてもいいか?」
『はい。大丈夫です。マスターにお任せします』
逃げるゴブリンは恐怖によって足元がおぼつかなかったからか、転んでしまっている。どうやら震えているからか立ち上がるのにも時間が掛かってしまっているようだ。
「さて、この距離で届くかな?」
ゴブリンと俺の離れてる距離は大体だが30メートル程度だろう。槍を初めて投げる訳だが、正直届くかどうか分からない。だから、俺は念の為軽く力を込めるのではなく、全力の力を込めてゴブリンへと槍を投げた。
上手く綺麗に真っ直ぐ飛んだ槍は凄い勢いでゴブリンへと目掛けて飛んでいく。
そして、丁度ゴブリンが震える足で立ち上がった時、その頭を貫くように槍は突き刺さった。貫いた場所が良かったのか、それとも威力が単純に強かったかは分からないが、ゴブリンを絶命させた槍は、その場から持ち主である俺の手元へと瞬時に返ってきた。シロとクロが驚いているが、この槍についての能力は後で教えてあげれば良いだろう。
「おぉ!! あんたら強いじゃねえか!! これなら王都までどんなモンスターが出ても安心出来るぜ!」
「さすがに強すぎるモンスターはちょっと勝てるか分かんないですけど、どんなモンスターが出ても全力でお守りしますね」
「おう! 任せたぜ!!」
突然話し掛けてきた依頼主はやはりディルムッドと何度か仕事をしてきたからなのか、俺の持っている槍にも驚かないようだ。
『マスター。先程の槍は一体……』
「黙っててすまん。まぁこの槍についてはまた夜に説明するよ。話したら少しだけ長くなりそうだしな」
『畏まりました。マスターがそう言うのでしたら夜にお願いします』
クロと二人で会話していると、シロも近付いてきた。どうやら今回頑張ったから褒めて欲しいらしい。
「シロ、この先もお前には期待してるからな」
「うん!! シロに任せてよね!」
シロやクロと話している間に、依頼主の「進むぞ!」という声が聞こえ、俺たちはまた王都へと向かって歩き始めた。




