44話 『ディルムッドとの会話』
お久しぶりです。
また不定期で更新していきますね!
いつ目覚めるか分からないディルムッドへと最後に挨拶をしようと思った矢先だった。
ピクリとディルムッドの指が動き、起き始めたのだ。
当然、そんなすぐに会話出来るはずもなく、俺たちはディルムッドが会話出来るようになるまで待っていることにした。
そして、待ち始めて数十分が経った時、ようやくディルムッドが口を開いた。
「あぁ。お前達か。元気そうでなによりだ」
「おう。おはようディルムッド」
傷一つない俺たちを見てさすがに少し不信感を抱いてしまっているだろう。
そりゃそうだ。ディルムッドから見れば俺たちは明らかにおかしい筈だ。一緒に死の間際まで戦ったはずなのに、自分だけ傷だらけで仲間は無傷。
でも、しっかりと説明したところで信じてくれるのだろうか。
「ディルムッド、俺たちがお前みたいに傷がない理由はな……」
「───説明なんて必要ない。そして、そんな悲しそうな顔をしなくても大丈夫だ。薄々お前達は何かが違うと思っていたのだよ。なによりも、お前達は強くなる速度がおかしい。あのゴブリンとの戦いでお前達は相当強くなっただろう。正直、俺から見ても羨ましい限りだよ」
「ありがとう、ございます」
「あぁ、それとだな、俺の体は心配しなくても大丈夫だ。確かに、骨折が酷くてまともに冒険者として活動出来るのは一ヶ月後くらいだが、まぁ金はある。ゆっくり休ませてもらうさ。それに、あの伝説級の強さを持つゴブリンキングを相手に生きてたってだけで、中々運が良いと思うしな」
それから、俺とディルムッドはどれくらいか分からないが、二人で会話し続けた。
さすがにずっと待たせている訳にもいかず、とりあえずシロと死の騎士には俺がディルムッドと話している間に買い物に行ってもらう事にした。
「マキト君。突然で済まないが、率直に言って君に頼みたい仕事がある。これは元々私に来た依頼なのだが、まぁ見ての通り私は動けない。そこでだ、君達にこの仕事を譲ろうと思う」
「どんな仕事ですか……?」
「まぁそうだな。簡単に言えば『王都までの護衛』をする仕事だ。少し難しいかもしれないが、君たちほどの実力があれば可能な筈だ」
「いや、でも、依頼主に怒られるんじゃ」
「そこら辺は任せてくれ。明日か明後日には依頼主に私から説明しておく」
「まぁそれなら大丈夫、か」
軽く1時間程度話していたところで、ディルムッドは疲れてしまったのかもう一度眠ってしまった。
まぁ仕方がないだろう。ディルムッドは今さっき起きたばっかなのだから。
「伝説級の相手……か」
ディルムッドとの会話で知り得た事だが、ゴブリンキングはやはりと言うべきか、相当強いモンスターだったらしい。
弱い個体でも伝説級冒険者が相手をし、強いのだと英雄級でギリギリだという話もあるそうだ。以前、一度だけディルムッドが王都に居る時にも現れたらしいが、その時はたまたま居た英雄級の冒険者が倒したらしいが。
だが、やはりゴブリンキング本体の強さはもちろん、軍勢を率いて来るという事もあり、ゴブリンキング発生時はもはや災厄とも言えるだろう。
「そんな強いやつに俺は勝てるのか……?」
正直言って負けた事が悔しい。全力を出しても歯が立たなかった。その事実が俺には凄く悔しかった。
だから、ディルムッドが王都まで行ける依頼をくれた時、物凄く嬉しかったが、同時に不安もおぼえた。
本当に次で勝てるのかどうか。ディルムッドからゴブリンキングの強さを教えられた今だからこそ、依頼を断った方が良いのではないかと思えてしまう。
「気にしたってしょうがないよな。ディルムッドが俺たちを推してくれたんだし」
王都まで行き、ゴブリンキングたちの襲来も伝えるのが俺たちの役目だろう。その際に、ゴブリンキングの見た目なども伝えないとならない。そうなれば、実際に戦った俺達がやはり適任だ。それも見越しての依頼譲渡なのだろう。だったら、俺たちはその期待に応えないといけない。どうせいつかは王都に向かうんだし、丁度行けるのならそれはむしろ運が良いと捉えるべきだろう。
「そうだ。名前も考えねえと」
自分の中での決意が固まり、あとは死の騎士とシロの帰りを待つだけとなった。二人には後で依頼の事を話せば良いだろう。それに、思えば俺は死の騎士の名前も決めなきゃいけない。
どんな名前にするか迷った結果、とりあえず俺はディルムッドが寝ている横で自身のステータスを確認しつつ、考える事にした。
もう一度言います。不定期更新です……