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43話 『特殊な体』

ちょっとリアル忙しくなってるので、三日ごとに更新します。


というわけで、次の更新は火曜日の深夜です。

 意識を失ってからどれぐらいの時間が経ったのだろうか。未だ戦場に居るのか、自分が死の間際にいるのかも分からない。

 不思議と体の痛みがないことを考えれば、もしかしたらもう俺の体は死んでいるのかもしれない。


 元々俺はこの世界においてイレギュラーの存在だ。体は死んでも意識だけは生きてるなんて事も有り得るだろう。


「────!!」


 何かが聞こえる。まるで誰かが叫んでいるような音。そして、その叫んでいる相手はきっと俺なのだろう。

 目を開けば分かるのかもしれない。

 耳がしっかりと機能すれば聞き取れるかもしれない。

 口が動けば自分が生きていると実感できる筈。


 けれど、俺の体はどこも動かなかった。意識して目を開けようとしても開かない。

 やっぱり俺の体は死んでしまったのだろうか。


 分からない。仮に俺が死んだと仮定するならば、どうして俺の意識が残っているのだろうか。この世界がゲームだからと言ってしまえば、意識だけ生きているというのにも不思議と納得出来なくもない。

 もしかしたら、現実でも死んだあとは少しの間意識だけ残るのかもしれない。まぁ実際に死んだことはない訳だから考えても仕方ないだろう。


「────!」


 不思議と未だに聞こえてくる声。誰の声なのかも分からないが、戦場で俺が死んだとすれば聞こえてくるのは必然的に戦闘の音や、他の冒険者たちの声だろう。


 間違ってもゴブリンキングの前に倒れていた、シロや死の騎士、ディルムッドではない筈だ。

 いや、もう音なんてどうでもいい。今はひとまず考えることをやめて、また意識を閉じよう。


 ─────────────────────


「───マキト!!」


「……ん? あぁ。シロ。おはよう」


「マキトー!!! 良かったぁ。生きてたぁ……」


『マスター。ご無事でなによりです』


 目覚めた時、俺の目に映ったのは白い天井だった。戦闘の音もなく、寝転んでいる場所も戦場ではなかった。

 そして、俺に泣きながら抱きついているシロと、近くで座ってくれている死の騎士がいる。

 一体俺はどれ程の間眠っていたのだろう。あの意識だけの時間は一体何時の事なのか。まるで夢を見ていた時のように、あの意識だけの時に考えていた事が思い出せなかった。


「な、なぁ。俺ってどれくらい寝てたんだ?」


『マスター。マスターは丸々5日寝ておりました。そして、最初の1日は仮死状態。本当に生きてて良かったです』


 仮死状態。とすると、あの意識だけの時はやっぱり死んでたという事になる。どうして仮死状態から生き返ることが出来たのかは分からないけど、今の俺の体は傷一つない。疲れもなく、痛みなんてあるわけもなかった。折れていた腕も治っているし、きっと仮死状態の時にレベルアップしたのだろう。

 やっぱり、俺は運が良い。


「そうか。心配かけてごめんな」


「ホントだよ!!マキトの馬鹿ー!!!」


「ごめんな。お前にも俺は助けられちまった。心配もかけちまったみたいだしな」


 シロは俺の言葉を聞いた後に、俺の寝ていたベッドの中へと潜ってしまった。

 そんなシロや死の騎士も怪我はないみたいだ。死の騎士もボロボロだった鎧が綺麗になってるみたいだ。

 ただ、唯一持っていたゴーレムアクスが無いのが気になる。盾がないのは壊れてしまったからだろう。


「そういえば死の騎士。お前の武器はどこいったんだ?」


『申し訳ありませんマスター。武器はゴブリン共に奪われてしまいました……』


「マキト! 責めちゃダメだよ!! みんな倒れてたから仕方ないの!!」


「分かってるって。責めるなんてしねえよ。みんな生きてるだけ俺は嬉しいんだからな。それで、ディルムッドはどこにいるんだ?」


 シロや死の騎士、俺なんかはレベルアップで全快している。これはタイミングよくレベルアップ出来たことによる恩恵だ。でも、ディルムッドはどうだろうか。シロがそっと指さした俺とは逆のベッド。


 そこにディルムッドは寝ていた。全身が傷だらけで、腕も足も折れているのか、包帯も巻いている。


「……ディルムッド」


『マスター。どうやらマスターやシロ殿はこの世界の人間とは違ってレベルアップで全快するようです。私はマスターからの召喚による影響でその効果が得られてるのでしょう。ですから、ディルムッド殿は生きてはいるのですが、回復するのは何時になるか分からないそうです……』


「そうか。教えてくれてありがとな」


 なんとかディルムッドは生きている。それは確かに嬉しかった。けれど、ゴブリン達の戦闘で死傷者は少なからず居る筈。それに、元々は俺達も死んでた、もしくは今のディルムッドのようになっていたのだろう。


 それをこの世界の人間じゃなく、特殊な体だから生きれた。

 そう考えると俺は未だに目を覚まさないディルムッドに対して少しだけ罪悪感を感じてしまった。

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