42話『完全敗北』
まだバイトが忙しいので次の更新は土曜日の深夜か日曜日の深夜となります。バイトが落ち着いたらまた更新頻度も落ち着くと思います。
アイアンゴーレムで俺を守り、今尚動けない俺の前にフラフラの少女は立っていた。俺を守る為に自分を犠牲にするなんて許せない。
シロに守られるのが嫌とかそういう理由じゃないが、自分よりも小さい女の子に体を張って守られるっていう事実が俺は嫌だ。
でも、そんな事を考えていても、ゴブリンキングの攻撃が止まるわけがなかった。
「マキト。私がマキトの事を守るから。後のことは頼んじゃうね……」
「───っ! 何言って……」
シロは俺へと振り向いて、言葉を投げかけてからもう一度ゴブリンキングへと向き直した。
───その刹那、シロは吹き飛んだ。
俺の言葉を聞く前にゴブリンキングの攻撃を小さい体で受け止め、その衝撃に耐えきれずに地面を転がりながら遠くへと吹き飛んでいった。
そして、転がるのが終わった時、シロはその場に倒れてまるで人形のように動かなくなった。
「ははっ。はははっ……なんでだよ……なんでなんだよ!! なんで俺なんかの為に体張ってんだよ!! 」
シロに守られ、シロは死んだかもしれない。俺なんかを守る為にシロが犠牲になる必要なんてなかった。
なのにシロは俺を最後まで守って、俺に最後を任せた。
「───そう、だよな。最期の瞬間に任されちまったもんな。しっかり果たさねえと」
ゴブリンキングにビビって、恐怖して、死ぬのを怖がっていた俺をシロが守った。俺が守るなんて言っておきながら、二回も守られ、しかも最後は今にも倒れそうになりながら俺のことを守った。
守るだけ守られて、このまま死ぬなんてことは出来ない。いや、そんな事俺自身が許さない。
だから、俺はその場に立った。もちろん、腕は折れてるし、体はボロボロで力なんて入らない。だけど、俺は立った。立ってゴブリンキングを睨みつけた。
「シロの頼みだしな。俺の最後の力見せてやるよ」
ゴブリンキングを睨みつけ、挑発してから俺は『疾風迅雷』を発動させた。体力なんてない。一撃でも攻撃が当たれば俺は即死するだろう。
そんな事このスキルを使った時点で分かっている。けど、それでも俺は最後の一人になった今、みんなを守る為に戦わないといけない。
「さぁ構えろよ。俺の力見せてやる」
疾風迅雷を発動し、走るスピードが桁違いに変わった俺は、ゴブリンキングの背後へと回り、隙だらけの横腹に蹴りを喰らわせた。
やはり、威力はゴブリンキングにとって痛くも痒くもないらしく、俺の蹴りはほとんど意味を成さなかった。
さらには、たった一回の俺の攻撃で疾風迅雷使用時の俺の速さに慣れてきてるのか、既に俺の動きをゴブリンキングは目で追ってきていた。
「こいつ、やっぱ強過ぎるな……」
例えスキルを使って痛みとかがないにしても、俺の両腕は骨折していて使えない。となると、結局は足を使うしかなかった。
疾風迅雷の制限時間内に、俺は必死に足だけで戦い、掴まれそうになった時はサマーソルトを巧みに使って、地道に攻撃を与えていた。
とは言っても、ほとんど体力を削ることすら出来ずに、俺は最後にボブゴブリンナイトへとやった攻撃をする事にした。
もちろん腕は使えない為、蹴りで代用するしかない。
「ぅおおおお!!」
全力で走り、自分のスピードを上げてから俺は最後の攻撃を繰り出した。
最も危険だが、俺の中で一番殺傷性は高い攻撃。飛び膝蹴りだ。
だが、俺の最後の攻撃は無様にも防がれてしまった。ゴブリンキングの腹へと直撃するその前に、ゴブリンキングは初めて剣を取り出して俺の攻撃を防いだ。
どうして剣を取り出したのかは分からないが、もしかしたら俺の攻撃を脅威に感じてくれたのかもしれない。
『コレガナイトヲコロシタコウゲキカ。オモシロイ』
俺は疾風迅雷が解けた影響でその場に倒れてしまい、その後の意識は薄い。
だが、意識が途切れるその瞬間に聞こえたのは、高らかに鳴り響く笛の音だった。