4話 『召喚されしモンスター』
モンスターが出てくる魔法陣を見つめ、出てくるのを待つ。
だが、待つ時間も数秒程度だった。
足先からどんどん造られ、すぐに俺の前へとモンスターは現れた。
「こいつは……スケルトンか?」
俺の前で魔法陣から現れ、今は辺りを見渡して骨の軋む音を鳴らしながら歩いているのは、肉もなく、目もない。
人型の骨だけの存在だった。何も持たず、今にも壊れそうな骨の足を使って歩いている。
「そうだ!こいつをテイムしねえといけねえんだ!!」
俺の声が聞こえてしまったのか、スケルトンはこちらを向いて固まっている。
俺のスキルには『低位モンスター召喚』があり、もう一つは『モンスターテイム』。そう、俺はこのスケルトンをテイムしなきゃいけないのだ。
じゃなきゃ、召喚されたモンスターはただのモンスターであり、さらには生者への執着があるスケルトンは今の俺には危険だ。
だが、今の俺にテイムの方法なんてわからない。
「なんかねえのか……なんか……いやでもテイムなんて分からねえし」
アイテムを探っても出てくるものは何も無い。
俺の目に入るのは白紙の本くらいだ。
俺はそれを頼りに仕方なくもう一度白紙の本をめくっていく。
だが、今この間にもスケルトンは俺を捜しているのだ。俺を殺す為に。
そんな緊張感の中、俺はページをめくっていく。絶対になにかある筈なのだ。このスキルの組み合わせ、アイテム欄にある謎の本。これが関係しないわけがない。
そう信じながら俺は最後のページまでたどり着いた。いや、俺が逆から本を開いていたから、最後というよりも最初のページだ。
そのページには俺が召喚したモンスターの情報と、テイム方法が書かれてある。俺は急いでスケルトンのテイム方法へと目を通す。
『スケルトン』
推定レベル:1~5
HP:4~13
MP:6~9
スタミナ:5~16
STR:1~14
DEX:3~7
AGI:1~5
INT:0
LUCK:0~1
スキル: なし。ごく稀に固有スキルを持つ。
情報:一般的なスケルトンと比べ、ごく稀に強大なスケルトンが生まれる場合がある。そのスケルトンはレベルに応じて変化する場合もある。
一般的なスケルトンは下級冒険者でも倒すことが出来る。
テイム方法: 生きているものへと導き、それを与える。
テイム確率:65~95%。与えた生物により異なる。
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本にはスケルトンについてあらかた書いてあり、それも分かりやすかった。
ただ、今はまだこの世界を知らないため、冒険者の格付けなどが分からない。と言っても、書き方から考えて、スケルトンは基本的に弱いモンスターと考えて大丈夫だろう。
「生物を与えるかぁ……」
今この場にいる生きているものなど俺しか居ない。
だが、俺を与えるわけにもいかない。
幸運にも、洞窟の外で荒れていた猛吹雪は止んでいる。辺りは暗く、夜は続いているようだが、これは俺にとっては幸運だ。
「さすがに外には生き物くらい居るだろ!」
俺は荷物を持ち、スケルトンを誘導する。
もちろん、生者を追いかけるために壊れそうな骨を鳴らしながら俺の後へと続いてきてくれた。
あとは適当な生物をこいつに与えるだけだ。
そんなことを考えながら、俺は一つ知りたかった事を実践してみた。
それは、スキルの詳細、情報を見れるかどうかだ。
メニューを開き、自分のスキルを調べる。やはり、と言うべきか自分の持つスキルは詳細まで詳しく見ることが出来るらしい。
俺は真っ先に自分の『モンスターテイム』の情報を確認した。
『モンスターテイム』:モンスターを条件を満たせばテイムすることが出来るスキル。
このスキルを強化していけば、条件を満たさずとも、自分より弱い者をすぐにテイムする事も可能となる。
『モンスターテイム』→『低位モンスター支配』→『高位モンスター支配』→『モンスター支配』→『?』
この情報を見て分かったが、どうやらこの世界ではスキルを強化できるらしい。
その点、このテイムスキルは優秀な筈だ。強化にどれ程の時間が掛かるかは分からないが、いつかは問答無用でモンスターを支配できるのだから。
「支配出来るのは良いけど、どう強化するのかだよなぁ……」
本来のこのゲーム通りなら、スキルを使い続ければ熟練度が上がり強化される。魔法も同じように熟練度によって上昇するが、魔法には他にも知識や才能、スキルによって上限が異なるらしい。
第一位階魔法から始まり、第12位階まである魔法を覚えるのは一属性でもほとんど到達出来ないとか。
「おっと、危ねぇ危ねぇ」
考え事をしていたせいか、雪で滑るところだった。
咄嗟に気付き滑らなくて済んだが、下手をしたら死んでいただろう。
スケルトンも順調に付いてきてるし、ここからは気を付けないといけないかもしれない。
「ま、強化方法は使っていけば分かるだろ」
実際、やってみなくちゃわからない。俺のモンスター召喚だって、多分あらゆる強化があるだろう。
このゲームの事前情報以外のスキルもある。結局は自分で確認しないと分からないのだ。熟練度だって数値化はされない。
とにかく今はスキルを使い続け、レベルを上げるしかない。
「っていうか、マジ一面雪景色だな。モンスターの一体も居ねえじゃねえか」
そんなことを呟きながらも俺は歩き続ける。
段々とお腹も空いてきているのだ。そろそろ街や村なんかを見つけたい所だ。
「お、これは洞窟か」
さっきまで俺が居たような洞窟を見つけた。
中へ入ろうか迷ったが、どうやらこの雪山は俺の選択肢を潰したいらしい。
突如として辺りは吹き荒れ、次第には吹雪が起きたのだ。
俺はスケルトンなんて放っておき、今はとにかく洞窟へと走った。
そして、俺が洞窟へと入った瞬間、俺の真後ろで雪雪崩が起きて入口を塞いだ。
「あっぶねぇ……下手したら俺も巻き込まれてたな」
俺の後ろにいたスケルトンは確実に飲み込まれただろう。
召喚した手前、少しだけ惜しい気もするが雪に埋もれてしまってはどうにも出来ない。
「とにかく進むか」
今はとにかくこの洞窟を進むしかないだろう。
俺はそう思い、一歩を踏み出した。その瞬間、何処からか無数の蝋燭が現れ、洞窟内を照らした。
「って、洞窟じゃねえなこれ」
俺はこのゲームの事前情報を幾度となく見たお陰か、ほとんどは頭に叩き込んでいる。
そして、この不自然な蝋燭の点灯もその情報の一つにあったのだ。
「絶対こんなの無理ゲーだろ!!」
俺が無理と思うのも無理はない。情報通りだとすれば、洞窟だと思っていたこの場所は実はダンジョンなのだから。