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39話『死の槍』

すまぬ。気付いたら爆睡してたんだ……

 ゴブリンキングがこちらへと向かってくる中、ディルムッドは目を瞑り立ち止まって何かを呟いていた。最初は何をしているのか分からなかったが、数秒後には明らかとなった。

 どうやら、さっきまでは使わなかった魔法を使ったようだ。魔法を自分に使ったディルムッドは赤いオーラを纏っていた。


「ふぅ。お待たせしました。私は今自分に『狂化』という魔法を使いました。この魔法は私の理性を徐々に無くしていく代わりにステータスを大幅に上昇させます。ただ、もう一度言いますが理性が無くなっていくんです」


「って事は、下手したら俺たちをも襲うってことですか?」


『マスターに害をもたらすものは味方であろうと許すことは出来ません』


「分かっています。ですので、()()。その間にゴブリンキングを仕留めます。一分経った段階で私はこの魔法を無理やり解きます。理性が持つ一分間だけの勝負。この魔法を解けば私は疲労で倒れるでしょう。ですので時間に余裕はありません。私はもう行きます」


 ディルムッドは話し終わった瞬間にゴブリンキングへと向かっていった。その速さは、さっきまでとは桁違いに速く、ゴブリンキングへと繰り出される攻撃も威力が目に見えて違いが分かる程だった。


「俺達も出来るだけ援護するぞ! 死の騎士は風の刃で頼む! 俺は隙があり次第攻撃に参加するから!」


『御意。お任せを』


 ディルムッドの圧倒的な攻撃に、ゴブリンキングは押されているようだった。もちろん、そんな状況で俺なんかが戦闘に入れるわけもなく、しっかりと風の刃で援護している死の騎士とは違って俺はホブゴブリンソーサラーが邪魔しないかどうか見ている事くらいしか出来なかった。


 そしてディルムッドの攻撃によって、ゴブリンキングには少しずつ傷が増えていった。

 その事に対して、配下であるホブゴブリンソーサラーは許せないのか、遂にディルムッドへと向けて魔法を構え始めた。


『ジャマヲスルナ!』


 だが、ゴブリンキングはこの状況を楽しんでいるのか、魔法の気配を察知した瞬間に近くに居たホブゴブリンソーサラーを一撃で殺してしまった。


「我が必殺の槍を受けよ。穿て!『死の槍(ゲイボルグ)!』」


 ホブゴブリンソーサラーの断末魔が響く中、ゴブリンキングが味方を殺した一瞬の隙を突いて、ディルムッドはスキルを放った。

 槍を構え、ゴブリンキングの心臓を確実に狙った一突きだ。


 ディルムッドの放ったスキルがゴブリンキングの心臓へと到達することはなかった。

 ギリギリの所で防がれてしまったのだ。それでも一分間の内に最後に放ったスキルは相当な威力があったのか、ゴブリンキングの左腕を使えなくする事は出来たようだ。


「今しかねえ!」


 左腕が使えなくなった事に少しだけ動揺しているのか、俺から見てもゴブリンキングは隙だらけだった。

 そんな隙だらけのゴブリンキングを狙い、俺は瞬時に移動して、目の前へと立った。そして、効くかは分からないが、ゴブリンキングのみぞ落ち部分を狙って俺は全力で殴った。

 その後、日本にいた時には絶対に出来なかったであろうサマーソルトを成功させ、見事にゴブリンキングの顎へと蹴りを入れると同時に距離を取ることに成功した。


「まだまだ体力あるじゃねえかよ……」


 狂化の魔法が解け、その場に倒れてしまったディルムッド。そんなディルムッドのお陰で、ゴブリンキングのHPも残り6割程度だが、それでもまだまだ多かった。


『マスター! 』


 死の騎士が何故か俺の方へと全力で走ってきていた。どうしてだろう。少しの間疑問に思ったが、答えはすぐに分かった。

 どうやらゴブリンキングは既に俺の目の前に居るようだ。


「ははっ。ちょっと甘く見すぎてたかも」


 俺は安心しすぎていた。少し距離を取れば、さっきみたいにゆっくりと歩いてくると思っていた。でもそれは間違いだった。当たり前だ。左腕まで使えなくされ、顎まで蹴られたのだ。わざわざ俺たちの為にゆっくり来る筈がない。


 俺たちを照らしていた太陽の光がゴブリンキングの体で遮られる。既に右腕を振り上げているゴブリンキングが居るのだ。あと3秒程度で俺は死ぬだろう。そう思っていた。だが、俺へと振り下ろされた無慈悲な右腕は俺へと届くこと無く、何かとぶつかったかのような音を響き渡らせた。


『マスター。お怪我はありませんか?』


 絶望していたその瞬間に俺を助けてくれたのは、持っている盾で攻撃を防いでくれた死の騎士だった。

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