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33話 『極意』

 ホブゴブリンナイトを前にして、俺は死を受け入れるように目を瞑った。

 その瞬間、俺の脳内に聞いたことのあるような機械の音声が流れてきた。


『特殊条件達成。格闘術スキルの極意取得。スキル名:疾風迅雷』


 特殊……条件? なにがなんだか分からないが、今この場で覚えられるスキルという事はこの絶望的な状況を覆せるスキルなのかもしれない。


 立っていられるのがやっとの状態でスキルを使ってどうにかなるなんて正直思えないが、どうせ死ぬのならせめて新しいスキルを使って死んだ方が少しでも悔いが残らないだろう。


「……疾風迅雷!!」


 残りカスくらいしかない力を使って、スキル名を叫ぶ。叫ぶ必要があるかないか分からないが、今はとにかく叫んだ方が少しでも牽制になるだろう。

 現に、目を開けた俺の前に居るホブゴブリンナイトは少し俺に警戒している。


「あ、れ? 体に力が……」


 スキルを発動した途端、体に力が湧いてきた。どういう原理か分からないが、残りHPは一割以下だというのに、痛みも消え、呼吸も落ち着き、震えすらも消えた。


 これなら戦える。あと少ないHPしかないが、シロが目覚めるまでの少しの時間でも稼げるならそれで良い。

 だから、俺は一瞬でも警戒してくれているホブゴブリンナイトへと突っ込んだ。

 拳を構えるのでもなく、蹴りを食らわすのでもなく、ただひたすらに真っ直ぐ走って、体を使って体当たりした。


「───えっ?」


 不自然な事が起きた。俺が走り出した瞬間に、ホブゴブリンナイトへとぶつかったのだ。意味が分からない。俺が早く走りすぎているのか? いや、俺の走るスピードはそんなに速くない。むしろ、ホブゴブリンナイトにとっては遅いだろう。だからおかしいのだ。


 今までなら俺が体当たりする前に普通に攻撃されて殺されているだろう。

 そもそも、俺が走り出した瞬間に殺している筈だ。なのにも関わらず俺は生きていて、それでいてホブゴブリンナイトは吹き飛んでいる。無論俺に痛みなんてない。ホブゴブリンナイトが吹き飛ぶほどの強さでぶつかったのに、だ。


「これが、疾風迅雷……?」


 ホブゴブリンナイトが吹き飛んで倒れている間に俺は瞬時に自分の使っている疾風迅雷のスキル説明を確認する。もちろん視界にホブゴブリンナイトを捉えつつだ。


『格闘術スキルの極意:疾風迅雷』:残りHPが一割以下の時にしか使えない特殊スキル。使えば飛躍的に走るスピードが上昇し、気力も湧き、痛みも消えるが、使い続ければ足が壊れ、動けなくなる。


 説明では足が壊れると書いてあるが、まだ使用時間が一分程度だからか、まだ足に痛みはない。だが、実際スキルがなければ俺の足は既に使い物にならなくなっている筈だ。そう考えると、やはりホブゴブリンナイトとの戦いは出来るだけ早く終わらせるのが得策だろう。


「ワンパターンだとさすがにヤバイよな……」


 もう一度普通に突っ込んで攻撃した所で、俺よりも強いホブゴブリンナイトに通用する気がしない。もしかしたらまだ通用するかもしれないが、念の為さっきとは全然違う攻撃をした方がいいだろう。


 モンスターの弱点は基本的には頭である。だが、俺の身長ではジャンプしないと届かない。近づいてジャンプすればと思うが、そうすると一旦動きが止まるわけだから不味い。


「ものは試しだよな。やってみるか!」


 一つの策を思いつき、俺はホブゴブリンナイトへと走り出した。走った俺の速さは尋常じゃないくらい速いが、なんとか今度は自分の速さを理解することが出来た。

 あとはタイミング良く()()()()を使うだけだ。


「低位モンスター召喚!『スケルトンナイト!』」


 正直タイミングは直感でしか分からないが、今は自分に出来ると言い聞かせる以外なかった。


「ぅおおおおお!!!」


 自分に似合わない程の大声をあげながら俺は召喚魔法から半分出てきているスケルトンナイトの頭目掛けて跳躍した。


 そして、骨を踏む感触と共に俺は更に跳躍した。自分のスケルトンナイトを踏み台にしたのだ。


 スケルトンナイトを踏み台にして跳躍したおかげで、俺の膝はホブゴブリンナイトの顔面へと見事に直撃したのだった。

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