30話 『シロの危機』
遅れてごめんなさい(´;ω;`)
ゴブリンが迫ってきている中、俺はただ目を閉じていた。危険なのは分かっている。
でも、見るよりもこっちのが避けるのに適していると感じたから見ることをやめたのだ。
素手スキルの具体的な内容はまだ分からないが、目を閉じて相手の攻撃を紙一重で避けるのもこのスキルの影響だろう。
もしかしたら素手スキルというのは相当良いスキルの可能性もある。
そんな隙だらけの俺をゴブリン達が攻撃してくる。そりゃそうだ。まるで無防備の敵が目の前にいるんだ。攻撃しない方がおかしい。
だが、ゴブリンの攻撃を俺は目で見なくとも感じる事が出来た。
どうして自分がゴブリンの攻撃を感じて紙一重で避けれるのかは分からない。
「そこだ!!」
咄嗟に目を開け、攻撃してきた二体の盾持ちゴブリンにカウンターを叩き込む。
残念な事に、少し攻撃が遅かったからか盾に防がれてしまった。盾自体は俺の攻撃に耐えることが出来ずに壊れたからまぁ良しとしよう。
「シロ! スキルはまだか!!」
「うーん。もうちょっとー!」
今の状況は少し劣勢だ。俺一人なら五体を相手にしても勝てる可能性は充分あるだろう。けど、今は無防備なシロを守らなきゃいけない。守護魔法はそろそろ解けてしまう。
まだ棍棒持ちのゴブリンと盾を失って攻撃的になっているゴブリン二体が俺を狙ってきている。上手い具合に俺にヘイトがきているのは助かるが、個人は弱いくせに連携を組んで攻撃してくるからか、俺は防戦一方だった。
「────!!」
「まずい!! 避けろシロ!! 」
「……えっ?」
遂に動き出してしまった。
俺がゴブリン達の攻撃を避けているあいだにも杖持ちのゴブリンが詠唱しているのは見えていた。
ただ、俺に魔法が来ると思っていたんだ。けど違った。
魔法は俺ではなくシロの頭上に現れ、真っ黒な雲から無慈悲な雷が落ちた。威力は絶大なものだったのか、辺りにはシロを隠すほどの煙が舞い上がった。
「シロ!!! 大丈夫か!!!」
「「グギャギャギャ!!」」
俺がシロの近くに行こうにも、笑いながらゴブリン達が道を阻んでくる。
「お前ら。死ぬ覚悟は出来たか?」
シロの所に行きたい。無事を確認したい。その為には、手っ取り早くゴブリン達を沈めないといけない。
今なら守る者も居なく、俺の攻撃を見てくる人も居ないはずだ。
「それじゃ、死ね!!」
防御を捨て、ゴブリン達へと攻撃しようとしたその時だった。シロを隠していた煙から突然俺の見たことのある風の刃が飛んできた。
風の刃は俺に当たることなく、見事に槍を持つゴブリン二匹を切り裂き、死に至らせた。
「シロ……それがお前のスキルなのか……?」
俺の言葉にシロからの返事はない。けど、その理由はすぐにハッキリした。
煙が晴れて、中に居たシロは今にも倒れそうになっているのだ。けれど、そんなシロを守る者がいた。
シロのスキルによって召喚されたであろうモンスター。風の刃を放つことが出来る、俺も知っているモンスターだ。
ボスの時よりも一回り程小さいが、シロを守るそのモンスターは紛れもなく、アイアンゴーレムだった。