27話 『街中に鳴り響く音』
日がまだ昇ってるうちに俺たちは宿屋へと辿り着いた。
どうしてこんなに早くに宿屋に来たのかは単純に疲れを癒す為。正直ベッドが恋しいのだ。
ギルドからさほど遠くない宿屋へと辿り着き、俺たちは中へと入った。
それほど豪華ではないが、なんていうかイメージしてた通りの宿屋がそこにはあった。
異世界に転移する小説なんかや、マンガ、アニメなどに良くある宿屋だと思う。
中へと入った俺たちはすかさず宿屋の空きを確認する為にカウンターへと歩き出した。
「すいません。部屋って空いてますか?」
「はい! えーっと。そうですね。一人用の部屋の空きがただいま無くて、あとは二人用の広いお部屋しかないんですけど……」
ふむ。それは困った。俺たちは一応三人だ。二人部屋にしたらそれこそ狭くなってしまうかもしれない。
「大丈夫です! シロたちその部屋で良いです!」
「ちょ、おい! お前何言ってんだ!」
「かしこまりました! それではこちらの鍵をどうぞ! 一階は食堂となっていますので、お部屋は二階になります! 一泊につき、夕食と朝食付きとなっていますので、お時間になったら食堂へお越しください。延長ですが、冒険者様の場合は同じ部屋に何泊でも泊まれるようになっていますので、是非ご利用くださいね! それでは、良い休息を!」
「あ、はぁ。分かりました」
「やったー!みんな同じ部屋だー!!!」
「ったく。勝手に決めやがって」
受付の若い女の子から部屋の鍵を受け取り、俺たちは二階の部屋へと足を進めた。
「へぇ。二人部屋だけど結構広めなんだな」
扉を開け部屋に入って俺は少し驚いた。
広さは12畳くらいだと思うし充分。それに加え、最も驚いたのは部屋の綺麗さだ。木材を主に使って家具を作ったんだろうが、相当綺麗だ。まるで作り立てのように綺麗なのは、掃除がしっかりしてるからか、それともこの部屋自体がほとんど使われてないからなのかもしれない。
まぁ正直どっちでもいい。とりあえず綺麗な部屋が使えるというのは嬉しいもんだ。
ベッドが二つ置いてあり、サイズ的にはやはりシングルサイズ。という事は、俺か死の騎士が必然的にシロと寝る羽目になるだろう。別に嫌という訳では無い……いや、なんていうか複雑な気持ちになりそうなのでやっぱり嫌かもしれない。
「な、なぁシロ。お前は俺と死の騎士、どっちと寝たい?」
「もちろんマキトに決まってるー! 」
「あ、はい。そうですか」
まぁ考えてみればそりゃそうだ。死の騎士は普通にデカい。一緒に寝ようなんて思っても、ベッドに入り込むのすら難しいだろう。
となれば、必然的に俺になってしまう。
『マスター。そろそろアイテムを買いに行った方が良いのでは?』
「ちょっと待ってくれ。ステータスだけ確認するからよ」
「あ、シロもステータス見てみるー!」
ひとまず空いてるスペースに俺たちの荷物を置こうと思ったが、特に荷物がないことに気付いてしまった故に、俺はベッドへと腰掛けて自分のステータスを確認する事にした。
隣ではシロが自分のステータスを確認している。
『ステータス』
名前:櫻井 槙人
レベル:12
所持金:340円
HP:89
MP:40
スタミナ:69
STR:104
DEX:28
AGI:75
INT:35
LUCK:150
スキル: 【低位モンスター召喚】 【モンスターテイム】【素手スキル】【守護魔法】
お、おお。なんていうか凄い事になってんな。前回見た時よりステータスがまるっきり違くなってやがる。
まぁでも、この変化を知れたのはデカい。持っているスキルによってステータスも変動するというのは本来ゲームには無かったシステムだ。これを活用すれば、特価型のステータスも作れるだろう。
まぁステータスが変わって俺の攻撃力が飛躍的に跳ね上がったのは嬉しい。だが、多分その原因が俺の『光魔法』から『素手スキル』に変わったことだ。
まずそもそも素手スキルってなんだよ。素手にスキルって? ボクシングでもしろってことなのか?
「マキトー……なんかシロにも魔法増えてるんだけど」
自問自答している途中にシロから話し掛けられた。
まぁ俺の素手スキルは戦闘になれば分かるとして、今は放置しておこう。それよりも気になるのはシロの魔法だ。
「なんて名前の魔法だ?」
「うーんとね、ダンジョン───」
『緊急依頼発生! 冒険者様は全て街の入り口へ集合してください! 』
シロの言葉を聞こうとした瞬間だった。
辺りもようやく夕方になろうとした時に街中に響き渡らせるかのように招集が掛かった。
「緊急依頼? まぁあとで行けばいいか。ごめん。聞き取れなかったんだが、なんて魔法だ?」
「んー。とりあえずあとで話す!! 今は街の入り口行かないとだよ!」
「ん、そうか。シロがそう言うなら良いけどよ」
『マスター。私達も早く行った方がいいかと。多分ですが、噂にあったゴブリンの大軍だと思われます』
「よし。んじゃ行くか!」
正直シロの魔法が気になって仕方がないが、それも緊急依頼が終われば話してくれるだろう。今はとりあえず宿屋から出て向かうことが優先だ。
宿屋から出て、念の為に扉へと鍵を掛けてから俺たちは緊急依頼を遂行する為に街の入り口へと向かった。