21話 『進化』
こちらへと全力で走ってくる真っ黒な騎士。
俺は思わずシロを守るように構えるが、どうもこの騎士に違和感を感じていた。
俺の声に反応して走って来たのはまぁ敵対反応としてはあるかもしれないが、他にもスケルトンナイトがこの場にいないっていうのが少しおかしい。
それに、なによりも一番の違和感は黒騎士の持っている武器にある。
ゴーレムアクス。本来、スケルトンナイトが持っていたはずの武器だ。
確かに、スケルトンナイトを殺して武器を奪ったのなら、今この場にスケルトンナイトが居ないのも納得出来る。が、もしも黒騎士が敵だとしたらどうして遠距離からゴーレムアクスを使わないのか。
これか俺の推測だが多分、
「あいつ、スケルトンナイトだったんだろうなぁ……」
黒騎士は俺達の近くまで走ってくると、その場で止まった。やはり敵対していた訳じゃないようだ。
と言っても、本当にこいつがスケルトンナイトから進化したモンスターとは限らない。
「ステータス見れば分かるか」
俺は警戒を解き、黒騎士のステータスを確認してみることにした。ステータスさえ見る事が出来れば、テイムしたモンスターかどうかも分かるはずだ。
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『ステータス』
名前:死の騎士
レベル:15
HP:418
MP:73
スタミナ:309
STR:286
VIT:205
DEX:213
AGI:104
INT:0
LUCK:0
スキル: 【剣術】【盾術】【威圧】【恐怖】【眷属召喚】【話術】【言語理解】
情報:スケルトンナイトからの特殊的な進化の為情報なし。
テイム方法: なし。
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「まじかよ……」
ステータスを確認して、まず思ったのが強すぎるということだ。
なんかスキルも多いし、眷属召喚とかよくわからんし、ステータス自体も俺なんかよりめちゃくちゃ強いし、どうしてスケルトンナイトがこんな風に特殊的な進化をしたのだろうか。
「わからねぇ。なにが一体原因なんだ……」
「マキト。どうしたの?」
「いや、な。うん。シロ。俺たちは凄く強いモンスターをゲットしたようだぞ」
「ほんとに!? もしかしてこの黒いのが仲間なの!?」
「あ、あぁ。そいつが元々スケルトンナイトだったんだよ」
「凄ーい!! 全然見た目違くなってる!!!」
完全に仲間だと思った瞬間、シロは死の騎士へと走っていった。
シロが近付いても何も起こらないのを見る限り、死の騎士のスキルにある恐怖と威圧はオンとオフがあるのだろう。もしくは、仲間にだけ効かないが、常時オンという可能性がある。
「まぁ、仲間が強くなったのは素直に喜ばねえとな……って、シロ! お前! その兜外そうとすんな!」
「えー! 兜の下の顔見てみたかったのに!」
「駄目に決まってんだろ!」
「黒いのだって怒ってなかったから大丈夫だと思うもん!!」
「ばか! 内心はめちゃくちゃ嫌に決まってんだろ!」
『別に大丈夫ですよ?』
「「────えっ?」」
待て待て待て? あれ? 今この場には俺とシロしかいない。なのに、何故か低い男の声がしたようなしてないような気がしたぞ?
まさか死の騎士が喋れる訳……
「ねぇねぇ!黒いのはもしかして喋れる?」
そんなことを考えていたらシロが死の騎士へと普通にストレートに聞きやがった。まぁ個人的には助かるから一緒に聞いておこう。
『はい。喋ることは可能です。これも全てマスターが私に特殊武器を与えてくれたお陰です。感謝します』
死の騎士は俺へと頭を下げてきた。なんて礼儀の出来ているモンスターなんだ。
いや、ってそんなことより喋れるようになったって、モンスターの進化やべえな。幾ら特殊的な進化だからってここまで成長するのかよ。
「ま、まぁ、とりあえず強い仲間が手に入ったのは嬉しいしな。そろそろ街を探すか」
「うん。シロもそろそろ疲れてきたし休みたいなぁ……」
『前衛は任せてください。マスターは必ず守ってみせます』
「あー。俺よりもこのシロっていう小さい子供を優先的に守ってくれねえか?」
『御意。マスターの指示に従います。よって、最優先をシロ様に変更します』
「あぁ。頼んだぞ」
「ねぇねぇ!マキト! こっち来てー! 凄いのが見れるよ!!!」
パーティーが三人に戻り、テイムしたモンスターがこの辺りの敵なら殆ど敵無しの強さに加え、会話も出来る。
まさかこんな風になるなんて雪山の洞窟に居た時には思ってもみなかった事だ。
「凄いの? なにが見えるんだ?」
「いいから早くこっち来てよ!!」
シロに呼ばれ、シロと同じ位置から下を覗くと、そこからは街を囲む城壁と囲まれている街の光景が広がっていた。