20話 『的確な狙い』
ホブゴブリンはなんとかスケルトンナイトが抑えてくれている。
あとは、弱そうな俺とシロを狙ってくるゴブリン二体を相手にしないといけない。
さっきシロにカッコイイ所を見せると言った手前、さすがに頑張るしかない。
「シロ。俺の守護魔法がどの程度耐えれるかは分からないから、一応俺の後ろから離れるなよ?」
「うん! ダンジョンをクリアしたマキトなら絶対勝てるって思ってるから!」
ははっ。どうやらシロは俺のことを強いと思ってるかもしれない。
ダンジョンなんて大体テイムしたモンスターが攻略してくれたし、今ここでゴブリンすら倒せなくて幻滅されたらどうしようか。
「って、そんなこと考えてる暇ねえな。弱き者を守護する盾となれ『魔法障壁!』」
ひとまずシロの前に障壁を張り、俺は向かってくるゴブリンを見据える。
1体は右から残り10メートル少しで俺へと攻撃してくる。左から近付いてくるのは足が遅いのか、まだ20メートルはあるだろう。
「まずは近くからが基本だよな!天翔る矢よ、我が敵となる者へと放たれよ!『光の矢!』」
攻撃力が致命的にない俺にとって、というより、魔法使い全般にとってだろうが、近付かれたら殺られてしまう。
というのも、このゲームにも無詠唱自体はあるが、基本的に魔法は詠唱が必要だ。
動きながら詠唱も可能だが、例えばゴブリンに近付かれて攻撃され続けられたら喋る暇もなく、避けることに専念する羽目になるだろう。
そして、魔法使いは体力も少ない。回避に専念してもいずれ殺られてしまう。だから、近づいてくる前に倒さなきゃいけないのだ。
もしくは、近くでもある程度戦える短剣や、すぐに詠唱出来る魔法で距離を取ったりするしかないが、まぁ俺には両方ないから結局近付かれたら即死は免れない。
「グギャッ!」
「グギギッ!?」
俺の光の矢は狙った通り右に居たゴブリンの目に直撃し、ゴブリンを怯ませることも出来、本来の目的の視力を奪う事も出来た。
残った片目では距離感を測ることも難しい筈だ。
「お前ら、やっぱり少しは喋れるんだな」
「目に当てるなんてマキトすごい!! 」
「まぁな」
ついつい褒められて少し照れてしまうが、正直に言うと、自分でも当たるとは思わなかった。
たまたまちょっと狙ったら当たっただけで、運が良いだけだ。
だが、この運の良さのお陰で、ゴブリンは警戒を始めたのか持っている武器を盾にしながらジリジリと向かってきている。
「ゴブリンに喋られると殺すのに罪悪感を感じちまうなぁ……」
「大丈夫だよ!ゴブリンも殺しにかかってきたってことは殺される覚悟もあるはずだから!」
「シロ。お前、なんていうか強いな」
「ん……?」
まさかシロが言うとは思わなくて少し驚いてしまったが、まぁ言っていることは至極真っ当だ。
幸いにもゴブリンの言葉は何言ってるか分からない。
「それじゃ、今の内にサクッと仕留めるか!」
警戒してさっきのように走って近付いてこない今なら魔法でサクッと倒せるはず。
「まずは一人目!天翔る矢よ、我が敵となる者へと放たれよ『光の矢!』」
頭部を狙い、一本目を放つ。その後、次は心臓部を狙ってもう一本を放った。
俺の魔法は吸い寄せられるように、俺の狙った場所へと飛んでいき、直撃した。
「よし。あとはもう一体!」
「マキト! 左のゴブリンの後ろから何か来るよ!!」
「えっ?」
シロに言われ、もう一体のゴブリンを見たその瞬間だった。
真っ黒のフルプレートアーマーを着た騎士が一瞬でゴブリンを真っ二つにしたのだ。
「シロ! 警戒しとけ! あいつ、俺たちに近付いてきてるぞ!」
「うん!分かった!」
最悪なことに、魔法の障壁は時間的にそろそろなくなってしまう。リキャストタイムはまだまだ必要だ。
「くそっ。スケルトンナイトはどこ行ったんだよ!」
今この場には居ないスケルトンナイトを少しでも呼ぼうと叫んだが、それが間違いだった。
俺の言葉に反応するかのように、真っ黒の騎士は俺たち目掛けて走り始めた。




