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17話 『脱出?』

 女の子をお姫様抱っこしながら俺は鉄格子を壊す方法を考えた。

 きっと魔法だと確実に壊せないだろう。というより、俺の魔法だと鉄格子の隙間を抜けていってしまう。


 となれば、スケルトンナイトに頼み思いっきりゴーレムアクスで破壊してもらうしかないだろう。


「スケルトンナイト! 頼んだぞ!!」


 俺は女の子と共に部屋の隅っこへと移動する。近くだと衝撃で出た破片などで怪我をしてしまう可能性があるからだ。

 と言っても、女の子は未だになにが起きているのかしっかりと理解出来ていないようで、困惑したような表情のままスケルトンナイトを見ていた。


「───!!!」


 スケルトンナイトが俺達には分からない声を上げながら思いっきり鉄格子を破壊しようとしてくれている。

 だが、どんなにスケルトンナイトが攻撃しても激しい音を立てるだけで一切壊れる気配がなかった。


「やべぇな……そろそろダンジョンに戻されちまう……」


 ダンジョンは一定時間ダンジョンコアを破壊しなければ、モンスターが復活してくるし、なんとダンジョンの最初の地点まで戻されてしまうのだ。


 これだけ聞くと今戻ればいいじゃないかと思うかもしれないが、もちろんダンジョンコアを連れてなんて戻れない。


 戻れるのは俺だけ。いや、正式には俺とスケルトンナイトだけだ。

 この子を助けるにはまた同じ道を通らないといけない。そうなればもしかしたら俺は今度こそ死ぬかもしれないだろう。


 それだけは避けないといけない。あとここに居れる時間は少ない。タイムリミットは迫ってきているのだ。


「スケルトンナイト! 風の力を使ってみてくれ!」


 俺の言葉が届いたのか、スケルトンナイトは思いっきりゴーレムアクスを持つ手に力を入れ始めた。

 骨だけしか見えないが、オーラというか雰囲気が力を入れているように見えるのだ。


 そして、スケルトンナイトが全力で鉄格子へとゴーレムアクスを横へと振り切った。

 激しい音とともに、強風が辺りへと飛び散った。部屋の隅に居る俺にも届くくらいの風だ。


「おっ、これで出れそうだな」


 スケルトンナイトのお陰でようやく鉄格子は完全に壊れていた。

 あとは一刻も早く小さい窓から出るだけだ。


「よいしょっと」


 一番最初にスケルトンナイトに出てもらい、辺りを警戒してもらった。近くに敵が居ないのを確認してもらった後、先に俺が出ることにした。


「あ、気をつけろよ? そこらへんちょっと尖ってるからな」


「う、うん。気を付ける」


 鉄格子の尖っている部分を全力で避けてもらいながら女の子に外へと出てもらった。

 幸いにも、俺の手伝いもあったお陰か怪我もなく外に出ることが出来た。


「わぁ……凄い凄い!!!」


 女の子が初めて外に出れて喜んでいる。

 辺り一面雪景色だが、幸いの晴天でとても景色は綺麗だった。


「柔らかい!! ふかふかー!!!」


 はしゃぎながら女の子は走り回っている。

 少しずつダンジョンから離れ、ついに10メートルほど女の子が離れた時だった。


 突然とてつもなく大きな音が鳴り始め、なにかが崩れていく音が聞こえてきた。


「この音、ダンジョンが壊れ始めてるのか……」


 ダンジョンが壊れる。それは何となく予想していた。

 けど、俺の中には他にも女の子には内緒にしていた事があった。

 不確定だった。一種の賭けに挑んだ。

 ダンジョンコアを外に出す。それは、もしかしたら彼女ごと死ぬかもしれない。

 そんなことを考えていた。

 女の子を置いていくことも考えていた。けど、もう一度あんな部屋に閉じ込めるなんて俺にはできない。

 それに、もしもあの子が殺されたら。そう思うと、放っておくなんて無理だ。


 けれど、幸いのも彼女はずっと雪で遊んでいる。

 初めて雪を見た子供のように、スケルトンナイトを巻き込んで遊んでいる。


「ははっ……良かった……」


「ねぇねぇ! ほら! 白くてふわふわなの! 一緒に遊ぼ!!」


 ダンジョンコアを外に出すなんて人間型のこの子じゃなきゃ出来なかっただろう。

 さっきまで殺してと言っていたこの子も今は俺をも無理やり遊ばせようとしてくる。それも、太陽のように眩しい笑顔で。


「モンスターが居たら困るからあんまり遠くに行くなよ?」


「えー! 遊んでくれないの!?」


「俺は他にも考えることがあるんだよ」


「むぅ……スケルトンと遊ぶからいいし!!」


 まるで本当の人間みたいだ。喜怒哀楽があるし、ダンジョンコアらしい所が見えない。いや、もうダンジョンがないからこの子はただの弱い女の子だ。


「……俺に守れるかなぁ……」


 最弱の女の子をひとまず休めるところまで連れていかないといけない。

 けど、本当に俺に出来るのだろうか。

 上を見上げれば眩しいほどの太陽が俺を照らす。


 綺麗な空を見れば暗い感情も少しずつ晴れていく気がした。


「よっし!!俺が助けたんだし、責任取って頑張ってみるか!!」


「やっと遊んでくれるのー?」


「ばーか。俺はまだ確認することがあんだよ」


 また口を膨らませてスケルトンナイトに雪を投げつけていた。

 スケルトンナイトが少し可哀想に見えるが、どうやらスケルトンナイトは気にしていないようだ。


 まぁそんな事より今はアイアンゴーレムを倒した後のステータス確認のが優先だ。

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