15話 『女の子との出会い』
蝋燭の数が少なく、薄暗い雰囲気の道をスケルトンナイトと歩く。
実際こんな暗い中スケルトンナイトと歩いたら、現実の俺だと怖すぎて気絶していたかもしれない。
ある意味心が鍛えられたのかもしれない。
「いや、それは違うか……」
俺の独り言にスケルトンナイトが少し反応し止まったが、何も無いと分かったのかすぐにまた歩き出した。
そうして長い長い一本道を歩き続け、ようやく扉が見えてきた。
古い木の扉だ。ダンジョンの中だというのに眩しい明かりが少し漏れていた。
中に何があるのか分からない。ボスを倒したからあるのはダンジョンコアだと思うが、普通こんなに光ってるものなのだろうか。
「よ、よし。入ってみるか」
俺が開ける前にスケルトンナイトが開けようとしてくれるが、さすがに止めておいた。こんな簡単なことまで任せていたら俺自身がダメになってしまう。
恐る恐る扉を開け、少し中を覗く。
見えるのは小さい鉄格子のついた窓。どうやらそこから外の明かりが入ってきてるようだ。
もう少し扉を開けようとした時だった。
「だ、だれですか?」
おどおどした女の子の声が聞こえてきた。
多分、このまま扉を開ければさらに驚かれるはず。
いや、そんな事よりも俺が無理だ。女の子とか現実世界でも数えるくらいしか話したことがない。
無理無理無理。うん。よし、とりあえず扉を閉めよう。
「……ふぅ……」
ひとまず声に反応しないでゆっくり扉は閉めた。
大丈夫。まだ俺とバレてない。いや、でもこの先に進んでダンジョンコアを破壊しないといけねえし……
「…あの。なにしてるんですか?」
扉からこっそり覗いてくる幼女。銀髪で、現実じゃ見たことないくらいの容姿を持っていた。
って、そんな事どうでもいい。なに俺は普通に観察してんだ?
やべえよ。話とか出来ねえし、絶対今俺キモいし……
「ってか、これ犯罪じゃね? いや、ゲームの中だし大丈夫か? うーん……」
「あの、そんなに頭抱えて大丈夫ですか?」
どうしようどうしよう。段々扉からこっち来ちゃってるよ。どうするよ俺。よし、とりあえず深呼吸して笑顔で話しかけてみよう。
大丈夫、昔何度も鏡の前で練習したしな。女の子の前で実践はしてないけど、男友達には見せたし大丈夫だろ。
「だ、大丈夫だよ?」
「わー!! スケルトンだ!! 初めて見ました!!」
マジか。普通に無視されたよ。むしろスケルトンナイトに興味津々だし。
もう俺いらないんじゃね?
「あ、ごめんなさい……あの、なんか言いました?」
「い、いや、何も無いし……」
あれ? なんで俺が拗ねてる感じになってんだ?
というか、この子普段は大人しそうなのにさっきはなんであんなにテンション高くなったんだ?
「その、あなたがボスを倒したんですよね? なら私を殺してくださいね」
「えっ?」
この子が何を言ってるか分からない。
なんでさっきまでモンスターを見て楽しんでた子を俺が殺すんだ?
いや、ていうか普通に俺じゃ殺せない。こんな子を殺すなんて……
「躊躇しちゃダメですよ?」
そんな笑顔で言わないでくれ。俺には殺せないんだ。どんな理由があるにしろ、襲ってこない人を殺すなんて出来ない。
「な、なぁ、なんで俺が殺すんだ?」
「いえ、そこのスケルトンでもいいんですよ? いや、でもどうせなら初めて会った人に殺されたい、かな?」
「む、無理だよ。俺には殺せないよ。だ、だって、さっきもちょっとだけど楽しそうだったじゃん。ほ、ほら、生きてればさっきみたいに楽しいことも……」
「───しょうがないんです。確かにさっきは柄にもなく喜んじゃいました。まぁ久しぶりに生きてる人、モンスターに会えたんですから。でも、私は死なないといけない。あなたがボスを倒した。その後にすることはダンジョンコアの破壊。だから、あなたは私を殺すんです」
「ダンジョン……コア?」
「はい! ですから、さっさと殺してください!」
笑顔で言う女の子の前で俺はただ呆然と立ち尽くしてしまった。