14話 『感謝を』
アイアンゴーレムとの死闘を潜り抜け、俺は仲間を一人失った。
ホブゴブリン。失うには惜しいモンスターだ。
「はぁ……俺がもうちょっとしっかりしてればなぁ……」
指揮官の指示が悪かったのも大きいだろう。
いや、というよりも俺はほとんど指示していない。
戦い方をもうちょっと変えればきっと、もっと安全に倒せた筈だ。
「なんかなぁ……」
ため息をつきながら、俺はその場に寝転ぶ。どうしても動く気になれないのだ。
確かに、アイアンゴーレムを倒せて嬉しいし、ボスを倒したことによって出現した扉の奥も進みたい。
でも、やっぱりホブゴブリンのことを考えると少しだけ心が苦しい。
「スケルトンナイトも心があったんだな……」
俺は寝転んでいながらスケルトンナイトを見る。
ずっとスケルトンという種族には心なんてないと思っていた。
けど、やはりあの局面で守られたことによって心が芽生えたのかもしれない。
スケルトンナイトはずっと祈っているのだ。俺が動き出すまで待ってるのか、それとも自分が満足するまでなのかは分からないが、俺がショックを受け始めた頃くらいから、ホブゴブリンが死んだ場所で祈りを捧げている。
「俺も祈っておくか」
あの局面はどちらかが死ぬという場面だったのだ。多分、スケルトンナイトが死ねばまだアイアンゴーレムと戦闘をしてただろう。
ホブゴブリンはホブゴブリンなりに考えて出した答えだった。
だから、俺とスケルトンナイトは先に進まないといけない。
その為に俺はスケルトンナイトと共に感謝の祈りを捧げた。
「よっし!!そろそろ行くか!」
自分の頬を叩き、気合いを入れ歩き始める。
スケルトンナイトも俺の後に続いてくれている。
「おっと、そういやなんでこの斧は消えてねえんだ?」
出現した扉の奥に進もうと思ったが、ふと斧の存在が気になってしまった。
アイアンゴーレム自体は消えたのに、この斧が消えないとなると、ドロップした可能性が高い。
「いやいや、こんな大きい斧使えねえだろ」
もしかしたら簡単にドロップする武器なのかもしれないと思いながら、とりあえず触れてみることにした。
「うおっ! なんだ!?」
触れた瞬間、突然斧が煙を放ちながらぐんぐん縮んでいく。まるで俺が持てるくらいの大きさになるかの如く、どんどん小さくなっていた。
「いや、マジかよ」
思わず笑いが出そうになるくらいだ。
あんなに大きかった斧が既に小さくなるのを止め、俺の手に収まるサイズになっている。
ここでようやく俺の前にこの斧の名前が出てきた。
「えっと、ゴーレムアクス?」
どうせ敵もいない事だし、そのまま武器をタッチして説明文を読むことにした。
『ゴーレムアクス』:アイアンゴーレムの持つ斧の一つ。少量ながら魔力が流れており、小さな風を常に纏っている。大きく振れば風は刃となり飛んでいく。
しっかりと風も纏ってあることも含め、少しだけ素振りをしてみようとしたが、どうやら俺にはこの武器を振るほどの筋力がないようだ。
「いや、マジくそ重いわこれ」
ステータス上の問題なのか、持ってることすら辛くなってきた俺はとりあえずその場に落として考える。
「ゴーレムアクスかぁ……あ、そうだ。これ持ってみてくれねえか?」
スケルトンナイトに頼み、ゴーレムアクスを持ってみてもらうことにした。もしもこれで持てなければとりあえず置いてくか、アイテムバッグに入れるしかないが……どうやらその心配はなさそうだ。
「お、持てるか! 良かった。今度からその武器使ってくれねえか?」
喋れないスケルトンナイトは斧を片手に持ちながら軽く頷いた。
今度からも言葉なくとも意思疎通は出来そうだ。
「それじゃ、先に進もうか」
ゴーレムアクスの真空刃がどんな感じになってるのか気になるが、それはまた敵が出てきたら使ってもらえば良いだろう。
今はひとまず扉の向こう側へと進むのが優先だ。