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12話 『本気を出すのは半分になってから』

 ホブゴブリンとスケルトンナイトに前衛を任せ、俺は一人魔法に没頭する。


「二本の天翔る矢よ、我が敵となる者へと放たれよ『光の矢!』」


 詠唱に数字を加え、魔法を唱える。

 本来、スキルを持っていなきゃなんの反応もないが、実際に詠唱出来るこの世界だったら出来るかもしれない。


 だが、俺の予定した通りに魔法は発動しなかった。スキルを持っていないからか、二本にはなったものの、飛んでいる最中に枝分かれし、ダメージも半減。


 結局、上手く隙を突いてアイアンゴーレムの顔へ当たってもほとんどダメージを与えることすら出来なかった。


「はぁ……他に魔法があればなぁ……」


 俺の魔法がダメージをほとんど与えてないのに対し、ホブゴブリンとスケルトンナイトは連携を取りつつダメージをしっかりと与えていた。


 基本的にはスケルトンナイトが引き付け、ホブゴブリンがアイアンゴーレムを殴る。


「そうか。スケルトンナイトの攻撃だと弾かれちまうのか」


 スケルトンナイトの持つ武器は錆びた鉄剣だ。そんな武器でアイアンゴーレムを斬ろうとしても弾かれてどうにもならないだろう。


 順調にダメージを与えることが出来たからか、いつの間にかアイアンゴーレムの体力は半分にまで到達しそうだった。

 と言っても、俺自身はほぼ何もしていない。


「さて、こっからが本番かな?」


 アイアンゴーレムは体力が半分に近くなると特殊武器を取り出す。

 種類によって様々だが、基本は剣か斧だ。


 そして、今俺たちの前に居るアイアンゴーレムも俺達から距離を取り、自分の周りに防御魔法を展開して武器を取り出した。

 アイアンゴーレムが背中に装備していた二つの斧。


 戦うことが大好きなのか、ホブゴブリンとスケルトンナイトは防御魔法が張ってあるというのに近付こうとしていた。


「2匹共、絶対に今は近づくなよ。あの防御魔法は多分リフレクトシールドで間違いないからな」


 確かに、相手の力が増大するのは止めなきゃいけない。

 だけど、それを見越してアイアンゴーレムは体力が半分になるまでリフレクトシールドを使わなかったのだ。

 幾ら背中に装備していると言っても、攻撃されている最中に武器を取り出すのは愚策だ。

 やはり、このモンスターにも少なからず知能がある。


 これは実際にゲームの中に居て初めて分かることだ。そして、モンスターに知能があるというのがどれほど危険なのかも実感してしまう。


「───はっ? あんな武器見た事ねえぞ!」


 防御魔法が解けて、アイアンゴーレムがこちらへと走り出してくる。

 両手に持つ武器は普通、アイアンゴーレムが持つ斧とは違った。

 それもその筈、少し離れた距離からでも見えるのだ。


 不自然な風が斧に纏ってあるのが。


「まずいぞ!避けろ!!」


 アイアンゴーレムが走りながら斧を横へと振る。

 その瞬間纏われていた風が消え、俺たちへと刃となって飛んできた。


 幸い、俺たちの前で地面に当たり爆発したが、衝撃で発生した風は強風だった。

 ホブゴブリンと俺は耐えることは出来た。だが、骨の集合体であるスケルトンナイトでは耐えられなかった。


 HPは減っていない。だけど、上半身の骨が風で外れ、飛んでしまった。


「ホブゴブリン! 頭だけは絶対に確保しろ!!」


 スケルトンナイトの上半身が風で飛ばされてしまっているが、頭さえ守れば何処に骨があっても復活するのだ。

 ただ、頭が落下して壊れたり、砕けたりしたら終わり。

 HPが瞬時に消えてしまう。

 だから頭だけはホブゴブリンに確保してもらうのだ。


 ただ、アイアンゴーレムが待ってくれるわけがなかった。

 こちらへと向かっては来ないが、もう一度纏われている風を使ってこちらへと真空刃を撃ってくる。


「絶対にその頭は離すなよ!」


 ホブゴブリンにはスケルトンナイトの頭をとりあえず抱え込んでもらい、俺は何度も放たれる真空刃を止める術を考える。


 でも、俺に出来ることは一つしかない。まず注意を俺に向ける事だ。


「天翔る矢よ、我が敵となる者へと放たれよ。『光の矢!』」


 まずアイアンゴーレムの頭を狙い、光の矢を放つ。そうすることによって、俺を敵として認識して襲ってくる可能性が高くなるはずだ。


 あとは俺が注意を引きつつ、二匹に任せればいい。

 そう考えていた時だった。俺の光の矢が考えていた頭へと当たらなかったのだ。

 風によって軌道が逸れ、足に命中してしまった。


「……あれ?」


 足に命中したことにより、もう一度魔法を放とうと瞬間だった。

 不自然に真空刃が止んだと思ったら、アイアンゴーレムがふらついていたのだ。


「今だ! 今なら倒せるぞ!!」


 足に蓄積していたダメージのお陰でたった一本の矢でアイアンゴーレムに隙をつくることが出来た。


 アイアンゴーレムのHPはもう半分もない。

 この無防備な隙にどうか倒せることを願って俺たちはアイアンゴーレムへと向かって攻撃するために走り出した。

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