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最終話『俺の選ぶ道』

今回で完結です。色々回収出来てなかったり、微妙かもしれませんが、今まで読んでくださり本当にありがとうございました!

 アリアと魔王がいなくなったこの部屋で、俺たちはどこかに隠した通路はないかと探していた。もしも、俺がこのゲームの設計者ならば、この世界で最も強い悪である、魔王の側に自身を隠すだろう。それに加え、最初に来たメールでは魔王を倒せばこの世界から出られると書いてあった。

 ならば、設計者がこの世界に居なくとも、どこかにこの世界から出られる隠し通路がある可能性はあるのだ。


 ただ、問題があるとすれば、未だ魔王が生きている事。出られる条件として魔王を倒さなければならないというのが本当なら、俺たちはアリアが勝ってくれるのを祈るしかない。


「……ますたー。ここ」


 そんな事を考えながらシロとメアと共に探していると、ふとした瞬間にメアが俺の袖を引っ張り、魔王の玉座の裏を指差しはじめた。


「ん? なんだこれ、装飾じゃないよな?」


 魔王の玉座の裏には、一見不自然とは思えないような装飾が施されていたが、よくよく見れば装飾の中には隠されたボタンが存在した。

 メアのお陰で見つける事は出来、危険かもしれないが俺はそのボタンを押してみることにした。


「シロとメアは俺の裏に隠れててくれ。なにかあったときには俺が盾になるからな」


「う、うん……」


 しかし、俺たちの警戒とは裏腹に、ボタンを押すと同時に魔王の玉座は消え、代わりに地下通路が現れたのだ。モンスターなどが現れるトラップではなかったことが幸いと言える。


「よし。ここしか道はなさそうだし進んでみるか」


「大丈夫かな?」


「ますたーが行くならメアも行く!」


 不安がるシロに対し、メアは俺からべったりと離れないようにして俺の後ろを歩き始めた。明かりもなく、真っ暗な道をただひたすらに突き進むにつれ、シロも怖くなったのか俺に対してべったりとくっつきはじめた。


 暗闇の中進み、俺たちの誰もが終わりのない道だと思いかけた矢先に、俺たちの目の前に赤く光るローブを纏った男が現れた。


『ふむ。ここまで辿り着いてしまうとはな。それもその弱さとは。面白い』


 ローブを纏った男は、俺の顔を覗き込みながら喋り出すが、突然現れて喋り出す男に俺たちは驚いて止まっていることしかできなかった。

 それに加え、そもそもローブの男には顔がなかった。遠くから見ても、近くに寄られた際に見ても、男の被っているフードの中はこの世界の空間と同じく真っ暗だった事自体も気味が悪いのだ。


「まぁそう驚かないでくれたまえ。ほら、君だけは体を動かせるだろう? 私は退屈していたんだ。少し話をしようじゃないか」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。まずお前は誰なんだ?」


 シロとメアに対して危害を加えさせないように、二人を俺の後ろへと移動させようと思ったのが、俺はそこで不可思議な現象が起きていることに気付いた。


「……固まってる、のか?」


 まるでピタリと時間をとめられたかのように、驚いた表情のまま俺に抱きついているシロとメア。口に手を当てても呼吸はしておらず、瞬きすらもしていない。


『そう驚くことではない。私がこの世界の時間を止めたのだ。なにせ、私こそがこの世界を作ったその人なのだからね。これくらいは出来るんだよ』


「ま、待て。シロとメアは生きてるんだよな?」


 怒りという感情は一切湧いてくることはなく、ただひたすらに俺の心の中には不安だけが存在した。


『勿論だとも。私は誰にも邪魔をされず、プレイヤーである君と話をしたいだけだからね。ただ、そこの二人が居ると話をするのに邪魔だろう? だから止めさせてもらったんだよ』


「そ、そうかよ。生きてるなら別に良い。それで、俺となんの話をしたいんだ?」


 男の言葉を全て信じるわけではないが、生きていると伝えられた俺はなんとか安堵し、冷静さを取り戻すことが出来た。


『そうだね。単刀直入に聞こう。君は元の世界に戻りたいかい?』


「--そ、それは。戻りたい……待て。元の世界に戻るとして、シロとメア、それに他のプレイヤー達はどうなるんだ?」


 この時の俺は、何故かこの男が本当にこの世界を作った人だと信じていたのだ。全てを信じていた訳ではないと思っていたにも関わらず、元の世界に帰りたいか聞かれた瞬間に俺はこいつこそがプレイヤーをこの世界に閉じ込めた首謀者だと理解してしまった。


 自分でもよく分からないが、何故か頭の中では理解しているのだ。だからこそ、俺は戻りたいと言い切れなかった。もしも言い切ってしまえば、その瞬間に()()()が戻される気がしたからだ。


『ふむふむ。そうだね、そこをちゃんと話してあげよう。まず、僕はそもそも君以外を元の世界に戻すつもりはない。なにせ、僕と出会うには魔王を倒さなきゃならないからね。それに、君たちが通った隠し通路は一人のプレイヤー以外通れないんだ。だから、最初から元の世界に戻れるのは魔王が現れる度に一人だけなんだよ。ここまでは理解出来たかな?』


「あ、あぁ。なんとかな。だけど、なんで俺は魔王を倒してないのにここに来れたんだ?」


 こいつの言葉が正しければ、俺はこの場所に立つことすら出来ていないはずなのだ。


『その部分だ。そこが面白いんだよ。僕にとっても予想外。本来なら勇者とプレイヤーは共に行動しないようにプログラムしてあったんだ。だけど、君たちは勇者と行動し、勇者に魔王討伐を託した。まぁ、ゲーム的に言えばバグなのだろうけど、面白いからそこはどうでも良いのさ。……もうそろそろか。時というのは短いものだね』


「どういう事だ?」


 ローブの男は話している途中で急に懐中時計を取り出し、時間を確認し始めた。時計を見る前は楽しげに話しているかのように思えたが、時計を見た後の男は酷く悲しげに喋ったように感じてしまった。


『そのまんまさ。君と僕がこうして話していられるのも、あと少しだけという事。あとは、そうだね。君が決断する時間も殆ど残されていないということさ。さて、もう一度問おう。君は現実へと戻りたいかい?』


 ここでもし俺が男の言葉に頷き、戻りたいと声に出せば、俺はもう一度妹と両親と再会することが出来る。それは嬉しい事だ。わかっている。妹からしても、両親からしても目覚めない家族が戻ってくるのだから。


 ……けれど、そうなればこの世界に残された人達と、なによりもシロとメアはどうなる? いや、時間を止められて表情一つ変えられない二人を見てもどうにもならないだろう。


「俺は、俺はーーー」


 妹と両親に会う為に、もう一度元の世界へと帰る為に、帰還を求めて声が出そうになったその瞬間、俺の頭にこの世界での思い出が蘇ってきた。


「……あぁ。そうだよな。俺だけ行ける訳ねえよな」


『そうか。とても残念だよ。それじゃ、君に二つの選択肢を特別にあげよう。面白いバグを見つけてくれたご褒美だ』 


 それから男が口に出した選択肢は、どちらも俺にとった選ぶことが難しい選択肢だった。

 一つは、他のプレイヤー全員と、俺自身を現実世界へと戻す事。

 そして、もう一つこそが俺一人にこの世界と現実の世界を行き来出来るアイテムを渡すというものだった。


『さて、悩む時間ももう終わりだよ。決まったかい?』


「あぁ。決まったぜ。俺は---」


『……君は本当に面白いね。まさか自分よりも他人を選ぶなんてね。そうだね、私から君にこれから先の道を与えよう。今から一年後。この世界にもう一度魔王は生まれ、新たなデスゲーム参加者も同時に出現する。そんな中で、君はそれを倒して私の元に来なさい。そうすれば私は二度とプレイヤーをデスゲームには参加させず、尚且つそこの二人のデータも君に渡すよ』


「分かった。それじゃ、また一年後に首を長くして待ってろよ」


『それでは、一年後にまた会おう』


 俺は、家族にとって最悪な選択をしたのかもしれない。今更後悔しても、謝罪しても手遅れだろう。だけど、俺は他のプレイヤーを選択した。自分自身はシロとメアの為に残り、他のプレイヤーだけを全員現実世界へと戻してもらったのだ。


「……さてと、一年の間に鍛えないとな……」


 時が止まっていた影響からか、目を瞑り目覚めないシロとメアを抱き抱え、俺はその場から立ち去った。


 -----ー------


 俺がプレイヤー達を現実に戻してから、少し時間は経ち、魔王は勇者に敗れたという情報がこの世界に知れ渡った。

 そして、その情報が流れるよりも前に、俺は目覚めてボーッとしているシロとメアと共に瀕死の勇者と出会い、動けない勇者を担いで魔王城から王都へと戻った。


 後日、全員が回復した後に、王都では勇者を称えるパレードが開かれ、魔王が打ち倒された日は記念日として決定された。


 だが、俺の心には不安があった。この全世界の人たちの中で一年後にまた魔王が生まれることを知っているのは俺ただ一人。そう考えると、俺は素直に魔王がいなくなった事を喜ぶことはできなかった。


 けれども、この世界からはプレイヤーが消え、この世界の住人からもプレイヤーが居たという事実は消え去った。これは勇者にプレイヤーについて聞いてみたところ、首を傾げ、「わからない」と言われた事で判明した。当然その時の俺は困惑したが、現実に戻ったのだろうという事で理解する事はできた。


 これから先、シロとメア、俺が現実世界に戻るまでに死んでしまうのかどうかはわからない。けれど、例え二度目だとしても俺は『シロとメアと共に現実へと戻る』と一時の平和を取り戻し、澄んだ綺麗な青空となった空を見上げながら心へと誓うのだった。


 ーーーー-ーーーーーーー


 真っ暗で光もない部屋。そこには一つだけ明るく光っているパソコンが置いてある。操作する人も居ない筈なのに、そのパソコンのカーソルは一人でに動き、中央に表示されているURLへと向かっていた。

 そして、URLをクリックしたその瞬間に画面は暗転しーーー


『さぁ、次は君が僕を楽しませてくれ』


 という声だけが真っ暗な部屋へと響き渡った。

ここまで読んでくれて本当にありがとうございます!!

次回作もファンタジーか、魔法少女系か迷っております。

一応ストック出来次第また新規投稿していきますのでよろしくお願いします!


現在連載中の『中二病系女の子と俺の日常』もぜひよろしくお願いします。

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