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112話『傷だらけの体』

 扉の裏からひょこっと顔を出すようにして現れたのは、今まで心配で仕方がなかった上に、会いたくて仕方なかったシロとメアであった。けど、不思議なことにメアが俺の方に喜んで走ってくるのに対し、何故かシロだけは扉の裏からこちらへと近寄ってきてくれなかったのだ。


「シロー? どうしたんだ?」


「いやー、えへへ。なんか怖いのかなー?」


「怖い?」


 引きつったような笑顔で居るシロの元へと駆け寄ろうとするが、なぜかシロは来ないで欲しいと言わんばかりに俺のことを拒否してしまう。


「なんか俺は怒らせることしちまったか? さっきも俺がアリアと話してる時に姿を見せてくれなかったし、なんかあったのか?」


「うーん。ほら、なんか雰囲気的に入りづらかったの! シロは大人だから空気を読めるから!」


 不自然だった。俺が近寄るごとにシロは扉の裏に逃げるようにして隠れてしまう。メアならきっと今のシロがこうなっている原因も分かるのだろうが、出来ることなら俺はシロから直接聞きたい。

 だからこそ、俺はシロの元へと拒否されようとも向かうことにした。

 ーーーーーーけれど、そこで見たシロは全身傷だらけになっており、必死に無くなったであろう片腕を抑えていた。


「シ、シロ? お前……」


「だから、だから、見られたくなかったの! シロはマキトに嫌われたくなかったから。こんな姿見られたくなかったから隠れてたのに……」


「馬鹿か! なんで嫌いになるんだよ。その傷も無くなった腕もシロが頑張ってくれた証じゃねえか。必死にメアを守ってくれたんだろ? 傷だらけになっても、メアを守る為に頑張ったんだろ? 分かるよ。シロの事なら俺は分かるんだよ。シロ、俺は仲間を必死こいて守った奴を絶対に嫌いになんてならねえ。なんたって、俺はシロもメアも大好きだからな!」


「シロは、シロはメアのお姉ちゃんだから。守るのが当たり前だから……」


「なら、俺はシロとメアを全力で守りきるよ。約束する」


「……うん。ねぇマキト。大好きだよ」


 きっと歩くのも大変で、笑顔を見せるのも辛かったんだろう。ここまで来るのにどれだけ過酷な道を進んだのか、メアを守る為に何度傷付いたのか。俺が抱きしめるだけで沢山の傷が癒される訳もないが、ただただ、俺は泣きながら抱きついてきたシロの頭を撫で、泣き止むまで抱きしめ続けた。


「ほらほら、もう充分でしょ。メアちゃんの傷も治したし、シロちゃんの傷も治すから離れなさい」


 シロに比べれば軽傷ともいえるメアも実は回復魔法の使えるアリアが治し、今度は俺から離れないシロの治療となった。傷だらけにも関わらず俺から離れようとしないシロをなんとかアリアが引き離し、治せる箇所の治療を始めた。

 当然のことながら、無くなった腕を戻すことは不可能であり、深い傷も完璧とまで治すことは出来ず、シロの体には治療した後も傷痕が残っていた。けれど、シロはその傷痕もメアを守った証として嫌じゃないらしく、治療が終わると同時にメアに抱きつかれて困っている俺の元へと笑顔でダイブしてきたのだった。


「メアも良く頑張ってくれたな。ありがとな」


「ううん。シロお姉ちゃんが守ってくれたからメアは大丈夫だよ!」


「もう! メアもシロのこと助けてくれたでしょ!」 


「ほらほら。感動の再会も良いけれどそろそろ進むわよ。私達は今魔王城に居るんだから」


『クハハハッ。良い。良いぞ。どうせ死ぬのだ。仲間との喜びも存分に味わっておくが良い』


「メア! シロの後ろに隠れて!」


 広間に響き渡る声に俺たちは警戒し、シロとメアも俺から離れるが、特に何かが起こる気配なかった。だが、声と共に放たれた威圧感はアリアすら汗を流すほどであった。


「今の声って、やっぱり魔王だよな?」


「恐らくね。あれ程の威圧を声だけで出来るのは私の考える限りだと魔王だけよ。それに、ここが魔王城っていうのを付け加えれば魔王の声そのものと確定していいわね」


「俺たちを監視してたってわけか。まさか魔王本人が待っててくれるなんてな」


「魔王だからこそ出来る傲慢よ。最後の慈悲を私たちに与えたのでしょうね」


 きっとこの広間を抜けて先に進めば魔王が居る玉座へと辿り着く事になるだろう。だが、シロとメアは傷だらけになってここまで辿り着いたばかりであり、治療したのも今さっきだ。この広間も安全とは限らないが、連れて行くよりは死の危険は少ない---。


「マキト。シロは行くからね」

「メアもますたーと一緒にいく!」


 俺の考えは二人に読まれていた。ここで待ってくれと俺がいうよりも早くシロとメアが真剣な目をしながら俺に対して言ってきたのだ。


「はぁ。ホントは行かせたくねえけどな。けど、俺も二人がいた方が心強いよ」


「うん! シロに任せといてね!」


「さぁ行くわよ」


 俺たちが今出会っている四天王は全部で三人。普通に考えればあと一人居るはずだ。魔王の前に最後の四天王と戦うことになるのかは分からない。だけど、恐らく魔王を抜きにすればこの最後の四天王こそが今までで最強の敵になるだろう。

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