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異世界っぽいVR世界に閉じ込められたけどなんとかなりそうです。  作者: ねぎとろ


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111話『先代の勇者』

 アリアが走り出し、アルトリウスは目を閉じてアリアが迫ってくるのを待ち、いつでもアリアの一撃に対してカウンターを与えれるように待っていた。

 そして、アリアの心臓を狙った一撃が放たれるその瞬間、アルトリウスの目は見開き、アルトリウスも持っていた大剣を最速でアリアへと振り切る。

 傍観者でしかない俺から見えたのは、アルトリウスの剣が振り抜かれた直後にアリアが体を捻って回避した所までであり、その後の結末は分からなかった。それに加え、アルトリウスの全力を持って振り抜いた大剣の剣圧により、俺は目を閉じることなってしまった。しかし、数秒の間が空いた後に見えたのは、剣を突き刺したのはアリアであった。アルトリウスとアリアの戦いはアリアの勝利として幕を閉じたのだ。


「やはりその力。先代よりも圧倒的……か……」


「あなたの最後の一撃。敵ながらに見事だったわ」


「……そうか。勇者に褒められるのも存外悪いものではないようだな……」


 アルトリウスの胸にはアリアの剣が突き刺さり、アルトリウスは口から血を流しながらその命を亡くした。しかし、その死に顔はなんとも敵ながらにして満足しているような顔だった。


「アリア! 大丈夫か!?」


「えぇ、最後の一撃だけは危なかったけれど特に問題はないわ」


「そうか。それにしても、アリアの使ってたあのオーラみたいなやつはなんなんだ? アーサーも同じようなやつを使ってた気がするんだけど……」


 俺の質問に対して既にオーラを消したアリアは答えようとしたが、その場に立っているのが難しいらしく、フラフラとした足取りで座り込んでしまった。


「お、おい。ホントに大丈夫なのか?」


「えぇ。少し休めば大丈夫よ。仕方ないもの。私が使った特殊なスキル。勇者だけが持つことの出来る『覚醒』というスキルにはデメリットもあるのだから」


「休めば大丈夫なら良いんだけどよ。あんまり無理すんなよ? って言っても戦わなかった俺も悪いんだけどな」


「それは違うわ。貴方に私が戦わせなかったのよ。私が『覚醒』を使った時は一緒に戦ってくれる人を巻き込んでしまう危険があるもの。それに、今こうして動けない私の代わりに見張ってくれるだけで充分なのよ」


「その、『覚醒』っていうのは具体的にどんなスキルなんだ?」


「そうね。そこから説明しようかしら」


 それから敵も来ない中で、俺はアリアから勇者だけが持つことができる特殊スキルである『覚醒』というスキルについて教わった。どうやら、『覚醒』というスキルは俺のリミッター解除に似ている部分もあるらしく、効果的には第六感の覚醒と身体能力の超強化らしい。アリアの説明によれば、もしも『覚醒』を使わずにアルトリウスの最後の一撃を受けていれば避けきれずに死んでた可能性もあったとか。


「どっちみちあの四天王にはアリアのスキルがなきゃ勝てなかったかもしれないんだよなぁ……」


「そうかもしれないわね。仮にもあの四天王二人は先代の勇者を殺しているもの。相応の強さは持っていて当然だわ」


「聞いて良いのか分からねえんだけどさ、先代の勇者ってのがアリアの親父さんなんだよな?」


「えぇ。私のお父さんこそ先代の勇者よ。誰にでも手を差し伸べ、困っている人がいればすぐに駆けつけて救う。私の中ではずっとカッコ良くて憧れの勇者なのよ。だけど、そんな憧れの勇者は一人の人間に騙されて死んでしまったわ。それから、私が勇者になる頃には先代の勇者は歴代で最も駄目な勇者として扱われるようになったのよ。人類を救うはずのゆうが人類に騙されて死ぬんだもの。馬鹿にされて当然だわ」


 アリアにとって、アリアの親父さんである先代の勇者は本当に大好きな人だったのだろう。今も話してくれているアリアの声は少しだけ震えている。


「けどよ、アリアは馬鹿だなんて思ってないんだろ?」


「当たり前じゃない! 私はお父さんが作ろうとしていた世界を、平和な世界を作る為にここまで魔王を殺しに来ているんだから!」


「そっか。アリアはアリアの親父さんの想いをしっかりと引き継いでるんだな。アリアが良ければなんだけどよ、もっと先代の勇者の話を聞かせてくれないか? アリアの知っているカッコいい話をさ」


「そうね。私も休まないといけないし、少しだけ話をしてあげるわ」


 アリアの口から話される先代の勇者のエピソードはどれも先代の勇者がどれほど立派な人だったか分かる話ばかりだった。おおよそアリアの知っている限りの話を聞き終わった時、アリアの体からは既に『覚醒』の影響はなくなっており、今まで通り動けるようになっていた。


「さて、お話が終わるのを待ってくれていたのかは分からないけれど、そこの扉の裏に隠れているのは分かっているのよ。出てきなさい」


「ま、話の途中に攻撃されても良いように反撃の準備はしてたけどな」


 アリアと話している最中にもずっと感じていた視線。それに気付いた時はまだアリアの体は万全ではなかった。だからこそ、わざと話を続けて隙を作り、反撃して倒そうと考えていたのだが、結局のところアリアが万全になるまで出てくる事はなく、結果として俺の考えていた作戦は無意味となってしまった。

 しかし、警戒していた俺たちとは裏腹に、扉の裏から出てきたのは意外な人物だったのだ。

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