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007 ゴブリン墜つ

フィクションですから。実在の人物や団体とは関係ないですから!

「のの!お願い!」

「あみ、まかせて!」


テイザーガンを構えた「あみ」が叫ぶと、シャッター側にいた背の低い女が短く応えゴブリンに向かって駆け出した。

「のの」がキレ良く両腕を振ると、その手に黒い棒状の武器が現れる。それは伸縮式の特殊警棒だった。


ののは和太鼓奏者の演奏のように連続でリズム良く左右の警棒でゴブリンを叩きつける。

ほとんどの攻撃はガードされているようだが、時折手首を返して腕や脚、脇などに一撃を加える。それはダメージを与えるというより、小刻みな打撃によってゴブリンの動きを制御しているように見えた。

ゴブリンは背に刺さったテイザーガンの端子を抜こうとするのだが、ののはそれをさせない。

ののとゴブリンの背丈は同じくらいに見えた。


気付くと俺は、背中から回された腕に抱かれるように引きずられている途中だった。


「大丈夫よ。あの子たち強いんだから」


耳元で聞こえる少し舌足らずな甘い声。

俺はこのままガレージから出されるようだ。脇を通した腕で抱きかかえられ、背に密着している大きめの柔らかい感触。

とりあえず、このまま様子を見たほうが良さそうだ。たぶん。なんとなく。


どちらにせよ口を開いて言葉を発する力は、もう俺にはない。

なぜか痛みだけは他人事のように遠くにあるように感じた。

ひどく寒い。


「エルゼウス エルトール オンインドラヤソワカ 数多の雷神よ 我の求めに応じよ」


呪文?詠唱?


あみの全身は白く淡い光に包まれている。放電するように小さな稲光を身体にまとっている。

空いている左手にはスマートフォンが握られていた。


ののは大きく後ろにジャンプしてゴブリンから離れた。


「スイッチオン!」


あみが叫ぶと、破裂音が連続で発生する。


バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ


テイザーガンからワイヤーを伝って、激しい電撃がゴブリンに流れ込んだ。

あみとゴブリンは激しく明滅する発光に包まれている。双方を繋ぐワイヤーまで白く発光していた。


さっきは光ったりしてなかったよな?


最初の一撃とあまりに違う光景に、俺は息を飲んだ。

明滅の時間は俺の感覚よりは長い時間ではなかったようだった。


電撃が終わったゴブリンからは幾重にも煙がたっている。

その全身は水膨れのように腫れていた。

右側の眼球は溶け出したように、外部にこぼれ出ている。

そのこめかみ辺りは大きく陥没していた。

一方、同じように光に包まれたあみには電撃のダメージが一切見られない。

しばらくして、金縛りにかかったように動けなかったゴブリンはぎごちなくも、あみの方へと振り返った。


「ののー!ののー!」

「はいよっ!」


離れていたののが高くジャンプして距離を詰める。空中で旋回。

大きくしなった彼女の脚がゴブリンの後頭部にめり込んだ。

吹っ飛ぶゴブリン。

ゴブリンは頭からトタン材の壁をブチ抜いて衝突した。


首吊りのようになったゴブリンは、ようやく動きを完全に止めたようだった。




「ね?大丈夫だったでしょ」


ガレージの外に運び出された俺は、体勢を女の膝に乗せかえられていた。


「あなたは治療しなきゃだね。ちょっと待ってて」


そう言って、女、いや少女、美少女は片手でスマホを操作しだした。

年の頃は10代なかばといった感じだろうか。眉を隠すように揃えられた前髪、腰近くまである長い黒髪。くりっとしたつぶらな瞳。わずかにアヒル口の唇。

そして、幼げな顔に似合わない豊満な双丘が、俺の顔近くにそそり立つ。

さらに俺の頰に触れる彼女の腹部は何も着けていないようだ。ヘソ出しルック!


あ、アカン。


赤子のそれのように縮こまっていた筈の俺の一部に、アドレナリンが急速に収束していくのを感じる。


コレ、疲れマラってヤツですか?

もしかして、命の危機に生殖本能が過剰に反応してるんでしょうか?

満身創痍で身動きひとつ出来ない、口もきけない、呼吸さえ辛いのに、股間だけが!?


「大丈夫?痛い? 来るの遅くなってごめんなさい。酷い怪我だよね。すぐ治療するからね」


勃起を必死に抑えようと顔をしかめて我慢している俺に、やさしく語りかける巨乳美少女。


「よしっ それじゃあいくよぉ。ポチッとな! なんちゃって」


スマホの画面をタッチする美少女は、そう言ってから目を閉じた。

彼女の全身を淡い光が包み込んでいくのが見えた。

いつのまにか、その光は俺の身体をも包んでいた。


身体の中のドス黒いモノが地中へと吸い取られて出ていくのを感じる。身体中の痛みも吸い取られ、抜き出されて行くようだ。全身から力が抜け、いろんな理由で腫れ上がった、あんなところやこんなところが元に戻っていく。その後、身体を包む光が膨れ上がり、そのまま俺の身体と心に染み込んでくる。穢れが身体から抜き取られ、清らかなモノと入れ替っていくような感触。あたたかい。あぁ、なんて気持ちいいんだ。美しい少女が優しい目で俺を見ている。まるで天使のようだ。やましい目でみるなんて、俺はどうにかしてた。ゆるしてください、聖女様。なんて優しいんだ。この穏やかな気持ちはなんなんだろう。こんなに安心できるのはいつ以来だろう。もしかして、貴女が本当のお母さん?!


俺は決めた。この人のために生きよう。



「ねぇー、ももかぁ。そいつオシッコ漏らしてるよ」

「マジッ? キショッ! あ、嘘よ。嘘。し、仕方ないことだから」


静かに身体を離していく、ももか。

くそ、ののめ、覚えてろ。

ゴブリンに殺されかける、なろう主人公を書いてみたかったんです。


ご意見、ご感想をいただけたら、励みになります。

お待ちしております。


明日も更新目指します。

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