表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/84

006 死闘

そうして、俺と、最弱の魔物と名高いゴブリンの戦いは始まるのだった。


これはゲームではない。もしかしたらラノベかもしれないが、フィクションではないという設定だ。

どうせなら剣と魔法の世界が良かったなぁ。


ゴブリンは立ち上がった。片手に犬の骨つきの脚、片手に木っ端状の木材を握っている。

身長は俺の胸くらいしかない。全身は痩せてみえるが、腕と腿の筋肉だけが異様に太かった。


「グギャー!」


あ、飛びかかってきた。木材を振りかぶって殴りかかってくる。

それじゃあダメだね。攻撃がわかり易すぎる。

ほら、俺の本体も鉄パイプで防御してんじゃん。オシッコ漏らしても、それくらいは対処できるんだよ。



乖離した意識は他人事のように状況を伝えてきた。


俺は左右の端を握った鉄パイプで、木材の攻撃を受けとめる。

細身の身体からは想像できないほどの重い攻撃だった。片手でこれかよ。鉄パイプで受け、持ち手の骨に痛みが走る。

アドレナリンの切れた身体に、この痛みはキツイ。それだけで身体が麻痺したように動けなくなった。

ゴブリンは一歩下がり、もう一度大きく振りかぶってきた。危うくもなんとか同じようにガードする。

木材の破片が飛び散り、俺の顔に降りかかった。幸いにも破片は目には入らなかった。

ゴブリンは試すように、もう一度下がった。


俺は遊ばれてるんだろうな。

再び前に出ようとしたゴブリンの腹に、俺は前蹴りを突き出した。

蹴りを選んだのは、ただ脅えからだった。敵と距離を取りたい一心である。

蹴りはゴブリンを下がらせることは出来なかった。むしろ蹴った俺が、全身ごと跳ね飛ばすように押し返される。

どうやら、力では勝てそうにない。

そもそも、蹴りは祖父に習っていない。


体勢を崩した俺に、さらにゴブリンは殴りかかる。

脚に力が入らない俺は大きくよろめき、偶然にもゴブリンの追撃を避けることができた。

空振りで前かがみに体勢を大きく崩すゴブリン。


「相手の体勢を崩すことを第一に考える。まともに向き合ったら、その時点で負けだ。ケンカは格闘技の試合じゃねーんだ」


乖離した意識が祖父の言葉を投げかけてくる。


なら、今しかない。


俺は両脚を踏みしめてから、祖父の教えどおりに右拳を構える。

俺は一歩踏み出すように突き込んだ。

ゴブリンの側頭部、表面から10cmほど先にある内部を貫くように。


ゴンッ!


拳に還る衝撃は意外なほど小さかった。

一瞬、ゴブリンは頭で拳を押し返すように抗った気がする。

ゴブリンは、身体ごとスライドするように数十センチほど横に吹き飛んでから、たたらを踏むように移動してガレージの内壁に横向きのまま衝突した。


「ギギッ」


俺は鉄パイプを右手に持ち替え、叩き込む。

ゴブリンは木材ではなく、木材を持った右腕で鉄パイプを受ける。

硬い。

ホウレンソウを食べたらパワーアップする古いアメコミキャラのようなゴブリンの腕は、生木の丸太を叩いてるかのような感触だった。

さらに鉄パイプの追撃を加える。アドレナリンが蘇るように充填されるのを感じた。

奴は頭部をガードするように顔の前に右腕を動かして防御している。


べちゃ。


俺の顔に突然、何かがへばり付いた。

それは犬の脚だった。ケツの肉ごとちぎり取られた毛の生えた生肉。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

ゴブリンが左手に持っていた喰いかけの肉。それを投げつけてきたのだった。


再び、頭の中が真っ白になった瞬間。

ゴブリンが飛びかかってくる。

大きく振りかぶられた木材。

俺は右手の鉄パイプでガードする。


鉄パイプに接触した木材は爆散するように砕け散る。

片手で持っていた鉄パイプは、激突の勢いに負け俺の顔面に襲いかかった。

とっさに鼻筋や目元を守るため、顔を逸らす。

鉄パイプは俺の頬骨を砕くように顔面に潜り込む。

爆散した木材の破片が身体のアチコチに刺さるのを感じ取れた。


俺はその一撃だけで、吹っ飛ばされた。


いつの間にか、仰向けに倒れた俺の上に、ゴブリンが覆いかぶさっていた。

頭部だけは守ろうと両腕をクロスさせてガードする。

鉄パイプはどこかに消えていた。

俺の腕を叩き折るように、ゴブリンのパンチが襲いかかっている。

開いた脇をゴブリンの拳が抉る。

肋骨が簡単に砕けるのを感じた。

充填されたアドレナリンのお陰か、すぐに痛みに襲われることはなかった。

むちゃくちゃに腕を振り回すゴブリンをガードの隙間から見る。


血走った汚い白目に小さく黄色い瞳。

それが笑っていた。


ゴブリンが拳を大きく振りかぶる。


終わった、俺?



ガラガラッ!ガシャン!


シャッターが上に押し上げられ開かれる。

そこには2人の女が立っていた。顔は見えない。


ブシュ


シャッター側に身体を向けたゴブリンの背中、肩甲骨あたりに小さなナニかが突き立っていた。

突き立った物体から、ワイヤーがガレージの裏口の方に伸びている。

そこにも1人の女。

銃のようなモノを持っていた。

テイザーガンだな。たぶん。


突然、電撃がゴブリンと俺を襲う。


「お待たせ」


どこからか若い女の声が聞こえた。

そにうち、ゾンビとかも出したいなぁ。


明日も更新します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ