表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/84

011 眠りなき夜

ゴブリン討伐の翌日。


桃花が説明してくれていた通りに、俺は体調を崩していた。

39度近い発熱と全身を襲う筋肉痛だ。

解熱鎮痛剤をボリボリ猛者ぼり食いながら、ベッドの上をのたうちまわって苦しむのは夜9時ごろまで続いた。


祖母が温めなおしてくれた粥を噛みしめるように味わって食う。

解熱剤の飲みすぎで胃は多少荒れていた。

パグのケルが、俺を守るように寄り添っていた。さすが地獄の番犬である。


手鏡を見ると、まだ青白いが生気を取り戻しつつあると思った。

右頬に痣。左目の痣はパンダのようだ。痣はすでに薄い。不思議だが大きな腫れもない。

よく見ると塞がった小さい傷跡が無数にあった。完全に消えるのか、これ?

端正とは欲張っても言えないが、作りは悪くないと思っている自分の顔。

地味であるのは変わらないが、以前より若干、覇気を感じないでもない。たぶん。

なんにしろ、死線を乗り越えたのは間違いないのだ。


「う〜ん」


自分の顔を見ながら、静かに心に浮かぶのは『反省』であった。


振り返れば俺がギルドに求めていたのは、ハードボイルドだ。

けして、大人の賢者ではない。

むしろ真逆だろ。


ゴブリンとのタイマンまでは上手く行きそうな感じだったはずだ。

乖離していたとは言え、「剣と魔法の世界に行きたい」とか言いながら、自分を他人事のようにクールに解説していた気がしないでもない。たぶん。

ビビりまくっていたのは認めるが、それ以外はいい線いってたんじゃないの?


問題はその後だ。JKZとの劇的な出会い。


美少女たちを思い出す。

心が熱く震える。

分かってる、これは恋だ。


いっけん近寄りがたさを感じさせるも、一歩踏み込めば無防備で無邪気な美少女たち。


とくに桃花。

思いやりの溢れる優しい微笑み。

妖精のように幼げな顔とEカップ(推定)の美巨乳。

ダンスで鍛えられたくびれと、わずかに割れた腹筋には可憐な小粒の臍。


あえて埜乃。

ツンデレをリアルに体現する表情の移り変わり。

意思の強い瞳とプニプニの頰。

しなやかなバネを内蔵した、太すぎず細すぎないムチ感溢れる生足。


そして亜美。

幼さと同居する、知性漂う美貌。

大人を惑わす魅惑的な言動。

栄養は頭脳に回しましたと言わんばかりの貧乳。だがそれがいい!



もうカッチカチやねん。

あかん、あかんでぇ。ハードボイルドにとって美少女は絶対擁護の対象でなければならないのだ。

美少女を守るために、命を散らして行った数多の男たちが、俺のヒーローなのだ。

そこには賢者にはない熱い情熱がある。それこそ真の純愛だ!


だいいち、手を出したら犯罪である。

ここは15歳で成人になれる異世界ではないのだ。

日本は重婚を認めてくれないのでハーレムも禁止である。


俺は知っている、こういう時どうすれば、その場しのぎで自分をごまかせるかを。

だが、今それをすれば彼女たちを盛大に汚してしまいそうな自分がいる!


『ソープに行け!』


誰かが囁いた。


え?マジで誰なの?

どこから聞こえたの?

誰かいるの?


空耳だろうか?幻聴?熱の影響かな?死んだ爺ちゃんだったら嫌だなぁ。


うなされていたとは言え、いっぱい寝た。

今夜は眠れそうにない。

もう10時近いがまだ間に合うだろうか?


財布を見る。

現金は心もとなかった。

祖母の年金を借りて風俗に行くのだけは避けたい。


俺はハードボイルド感溢れる渋いおじさんを思い出した。

とりあえず、ギルドアプリのSNSで相談しよう。


>涼

こんばんわ。昨日はお世話になりました。

いろいろと、ありがとうございました。

早速、相談があるのですが?


>美杉

おう!もういいのか?

スキル取得の相談だろ。悩むんだよな、アレ。


>涼

うーん。ちょっと違うかも。


>美杉

どうした男同士だろ、なんでも言ってみろ。

JKZのことか?

黙っててやる。なんだ?


>涼

ほんとですか?誰にも言っちゃダメですよ。


>美杉

くどいな。なんだ。切るぞ。


>涼

えーと、ギルドのゴールドで支払いのできる風俗店とかあったりします?


>美杉

。。。


>涼

嘘です。ごめんなさい。


>美杉

あるよ。





あるのかよ!!

ついに本編突入の予感。


くだならくてごめんなさい。

冒険者と言えば夜のお店。そんなお話です。


明日も更新します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ