第5話♡ お散歩セクサロイドとはらわた人形
「ある日ぃ♪森の中ぁ♪変態にぃ♪出会ぁたぁ♪はなさくぅもーりーのーみーちー♪変態にぃでーあーあーたぁ♪」
「イブ、一体どんな変態なんだ?」
この自由気ままなイブに毎回まじめに対応しているとただただ疲れるだけだということは、今日一日を通してよくわかった。裏を返してこちらも話をできる限り合わせてみることにした。
「えっとね、えーとね……うーん」
イブが口元に右手を上げ、目線を空に向けて考え込んでいる。おお!即答ではなく悩んでいる!これはひょっとしてまともな答えが返ってくるのだろうか。しかし、どんな答えが返ってきても変態である事実は変わらないのだが。
「変態ギブミージョブ!」
ですよねー。期待した自分がバカでした。
「……変態ギブミージョブとはつまり?」
「全裸でね!女性もの下着を顔にかぶっていて素顔は見えないの!男性しかなれなくて、決め台詞は『仕事をくれないといたずらしちゃうぞ!』です!日夜、森の平和を守ってます!」
「ねー!」とコロンに頬ずりし、屈託のない満面の笑みで幸せそうに微笑む彼女。森の平和を脅かしているのはそいつなんじゃないか、というかその森の平和を守る前に自分の生活を守れよという突っ込みはそっと胸にしまう。
イブの「公園行きたい!変態見たい!」との間違いも含んだ強い要望により、近場にあった井之頭公園に来ていた。大きな池はその昔『アヒルボート』という乗り物を備えていたほどに広く、園内には小さな動物園すらもある豊かな緑に恵まれた土地。いくら時代が進んで暮らしが豊かになろうとも人々を魅了し続けているこの公園は、都立公園に指定されている。
初秋、20時を回って日も落ちたのにも関わらず、コウロギや鈴虫といった秋の虫たちの大合唱に負けじと自己主張をする路上アーティストやストリート芸人たち。その観客である仕事帰りのサラリーマンや、仲睦まじくベンチで肩を寄せ合う男女、ウォーキングをするお年寄りなどで今日も公園は盛況のようだ。
「コロン♪コロン♪ころーん♬」
イブは、はらわたコロンが相当気に入ったみたいだ。露店で購入してからというもの、コロンは常に抱きかかえられており、たまにコロンの手とか足とかはらわたとかをつかんで「イブサマカワイイ♡」「コノウラミハラサデオクベキカ!」などと、こえをあてながらコロンにジェスチャーをさせて楽しんでいる。たまに物騒なセリフが混ざっているのは聞かなかったことにしている。
「うみゅみゅ……コロンふわふわぁ♡」
「そんなに喜んでくれて本当にうれしいよ、イブ」
すると幸せそうな笑みから少しはっと、何かを思いついたようにほくそ笑む彼女。おもむろに両手で顔の高さまでコロンを持ってきて
「アリガトウゴザイマス!ゴシュジンサマー!」
とコロンを自分の顔の位置に持ってきてお辞儀させながら声をあてるイブ。数秒後にすっ、とコロンの後ろからかわいらしい笑顔をのぞかせる。やばい、かわいい、どうしよう!
「それにゃよかった」
噛んじゃったよね。機械と言えど、やっぱり美少女だし今日一日ぐらいで童貞にこの可愛さに慣れろとか無理でしたやっぱり。
「はい!大事にします!」
――しかし二人はまだ知らなかったのである。この後に味わうこととなる、本当の変態による恐怖を。