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セクサロイドの育て方!  作者: ボボ三好
4/11

どきっ♡変態だらけの重役会議

変態と天才は紙一重(だと思う)


「それでは次の議題、イブプロジェクトについてね。本日からイブの感情学習が本格的に開始された訳だけれど、何か意見がある部門は?」


 最上(さいじょう)インダストリアル本社、169階特等会議室。遠目に都心部のビル群を、少し視線を南に移せば天候次第では富士山すら望める。50畳はあろうかという広さに掃除の行き届いた机や椅子、絨毯や小物など全てにおいて立派という言葉こそふさわしい会議室。重要な議題が扱われ、決定次第で膨大な金や社会情勢が変動する決定を下すには、これほどの環境でないと確かに役不足かもしれない。

 しかしそこにいるのはセクサロイド開発各部門の長達、合計5人のみである。議事録は音声認識ソフトがリアルタイム取捨選択しとってくれてはいるが、広さに対して人が少なく、声が響き渡るのはどうしたものか。


「ちなみに全体の進捗スピードは計画通りに進んでいるわね。感情の習得ペースがどれほどかは当初の計画通り未知数ではあるけれど、長めに期間をとってあるわ」


 本会議の議長であり、広報と企画部門のトップにして、セクサロイド開発全体をまとめているのは、年中ビキニ白衣で仕事をしている「奇跡の人妻」こと最上育代(さいじょういくよ)である。本来多くの人間で知恵を出し合うべきセクサロイドのトップ会議をこれだけの少人数で行っているのも彼女の提案だ。業界の機密情報の多さから、部門長だけだから話せることも多い。


「まだ営業部門の仕事自体がスタートできるステップにないですからこちらからは意見はありません。……が、イブプロジェクトの付き添い人がイクヨの息子(サン)とは初めて聞きました。人選の基準は何だったのですか?」


 ブロンドの髪をポニーテルにまとめ、ピシッとバーバリーブランドのスーツを着込んでいる女性。アメリカと日本人とのハーフであり、ザ・キャリアウーマンという言葉こそふさわしく、営業のトップである星野カーヴィー。

 しかし彼女は全国コスプレ大会や世界コスプレサミットなど、いわゆる「オフの日」はコスプレに全力を注ぐ疑似多重人格者(ぎじたじゅうじんかくしゃ)でもある。いつも手厳しい上司がオフの日はコスプレ会場で「もっと撮ってにゃん♡萌え萌えにゃん♡」などと会社では微塵も考えられないあられもない姿でおねだりしていることもあり、そのギャップにやられる者は男女問わず後を絶たない。

 そんな彼女の発言に育代は少し間を置き考える。


「それに関してはシステム部門と設計部門の長からの説明を」

「はい!はいはーい!」


 外見は小学生のままで止まっており、年齢不詳。会議唯一のショタにしてシステム部門のトップ、御手洗(みたらい) (どう)(てい)。通称カイザーが元気に発言を求める。彼はシステム(技術やプログラミングなど)部門のトップだ。ちなみに当人、外見とは違い中身は30を過ぎていると推測されているが童貞である。

『カイザー』の名前の由来は、童帝の帝を英語で発音すると「カイザー」であることと、セクサロイド開発という言わば「アダルトな業界」では珍しい童貞視点の発想力で生き残っていることからである。

 童貞のまま30歳を過ぎると魔法が使えるという都市伝説と、まるで魔法のようなシステム構築をするところから「ウィザード級(童貞級)プログラマー」という二つ名もある。


「育代のお子さんは健全な男子であり思春期で、さらにDNAにはエロに関する改変が施されていいます。つまり、我々大人が作った『コースに沿う形』よりも、より新鮮で有意義な経験をさせられると判断しています。また、わが社のスパコンによる演算結果も計算されたものよりも自然体のままが良い、との結論が下されています」

「ヘイ、カイザー。ユーが大人(アダルト)言うと笑えますね」

「う、うるさい!」


 カーヴィーに突っ込みを入れられるカイザー。

 そのカイザーの横で腕を組み、ふんどし一丁の男がうなずく。しかし彼はただの露出狂ではない。その引き締まった肉体は亀甲(きっこう)の模様を描いた縄で縛られていた。

 彼は亀甲寺(かめのこうじ) 助兵衛(すけべえ)。江戸時代から脈々と受け継がれる亀甲(きっこう)(しば)りの家元にしてハードウェア開発部門のトップである。

 美しい亀甲縛りを体現するために己の肉体を磨き上げ、一人で自分に亀甲縛りを施せるほどの天性のマゾヒスト。古くは罪人の護送などに用いられていたが、現在ではSMプレイの一技術に成り下がった亀甲縛りの達人である。新たな快楽を求め最上でセクサロイドの設計とテスト、解析などを行う部門で自ら実験体となり快楽を求めていった結果、部門のトップに立ってしまった傑物でもある。


(それがし)もカイザー殿と同意見である。イブに搭載されている感情システムは、いわばゴールが設定されていない無限に広がるもの。自由こそが最大の効率を生むと予想しているでござる。また、某の経験から放置プレイは無から有を産み出すものと存じている」

「I see……開発がそう言うならそうなのでしょうね。確かに自由なほうが個人的に好感が持てるし、これまでにイブの感情学習の手順についてもめ続けていた経緯を考えると結論が出たことは素晴らしいことだわ。思春期な男子、特にイクヨの息子なら色々ノープログレムね。それにしても息子にエロいDNA改変までしていたのは初耳だったわ!」

「あら、そうなのよ。うちの息子には改変上限ギリギリまでエロに関するDNAを埋め込んだり強化したりしたんだから。とはいっても、この改変がどんな効果を生むのかは世界で初めてのパターンだし不明瞭な部分は大きいわ」

「イクヨ……そんなよくわからないDNAを息子に加えられたわね」

「世の中は楽しんだもの勝ち、尖ったもの勝なのよ」


 どこか自慢げに年甲斐もなく豊満なバストを寄せ身悶(みもだ)える痴女。少し照れてか顔をうつ向かせるカイザー。ふんどし一丁に拮抗縛りの助兵衛。あきれたように笑うカーヴィー。


 しかしこの会議会場にはもう一人いるのである。


「実技部門からは何か意見は?」

「……………………すっごい…………ありません」


 機械(セクサロイド)という商品の性質上、セックスの実技指導や多くの性癖(フェチズム)への対応などのため、セクサロイドの部門の一つに「実技部門」というものがある。

 そのトップを務めているのが、チョコボール向違(むかい)(本名不明)だ。

 セックスのためにWWEへヴィー級にて日本人初のトップを取り、東大にて動物学、生物学に関する博士号を取得。世界で一番長くセックスをした男、世界で一番AV(アダルトビデオ)に出演した男など数々のギネス記録すら保持する、いわばセックスの申し子である。

 しかし、セックスに全てを費やした結果、行為(セックス)をしていない時はまるで死んだように無気力になってしまうのが唯一にして最大の問題だ。その分行為中は凄いことになってしまうのだが。


「あいかわらずチョコボールは何をシンキングしているかわからないわね」

「ちょこぼーるおじさん、少し言いづらいけどイカ臭いよ!」

「そうだチョコボール殿、新しい縛り方を考案したのだが、今度ご一緒にどうでござろうか?」

「…………イカ臭いのは仕方ない。………………助兵衛さん、心からお願いします」


 社内でチョコボールは割と人気者だ。行為(セックス)が神がかっているのもあるし、うそのつけない性格や、聞き上手、平常時は無口ゆえに程よい距離感があり、話がしやすかったりするらしい。

 ちなみにコスプレのカーヴィー、システム開発部門長にして童貞(ウィザード)のカイザー、ハードウェア開発部門長の亀甲寺助兵衛、実技部門長のチョコボール向違の4人は社内でセクサロイド四天王と呼ばれている。それを統轄する育代は何故かチャンピオンと呼ばれている。


「それではイブプロジェクトについてはここまででいいかしら?よければ次の議題に移るわ」

「はいはいはい!」


 元気よくカイザーが手を上げ、声を上げる。


「カイザー、どうぞ」

「イブの今の状態と、最上一傑君の相性などを直に見てみたいので、開発部門に一日来てもらう時間がほしいです!」

「ずるいです、カイザー!営業も一日ほしいです!イブにあんなコスプレやこんなコスプレをさせてみたいです」

「某も欲しい。2人の相性を直に見ておきたいでござる」

「……………………すっごい……見たいです」

「わかったわ。それでは後日各部門にイブと一傑を一日ずつ研修?授業といったほうがいいかしら、に向かわせます。その時の要望などあれば事前の申告準備をお願いします」


 各々思考を巡らせる。コスプレの衣装選びから、童貞がイブと視線を合わせるにはどうしたらよいか、イブに似合う縛り方、一傑はどんなプレイを好むのかなど。

 セクサロイドに関する会議は、今日も平和に進んでいく。

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