第1話♡ イブ、出会う!
「初めまして!性感帯は耳たぶの裏、攻めと受けでは攻め主体♡好きな体位は燕返しで、どんな性癖もコスチュームも対応できる自信があります!セクサロイドのイブと申します♡恥ずかしいですがどうか優しく、恥部を愛撫する時のようなお気持ちでご指導よろしくお願いします♡」
……どうしてこうなった。
目の前にはフリルが所々にあしらわれつつも、胸や太ももといった部位は大胆に露出した、黒白のメイド服に身を包んだセクサロイドが微笑んでいた。
こちらを上目遣いに伺うかわいらしく整った顔つき、透き通った白い肌、150cm程の伸長に対して男女共に誰しもがあこがれ求める甘美な果実がそこにはあった。本格的なメイド服だからか一層引き締まって見えるウエスト、ニーソックスと上品なフリルのついたスカートとが織りなす絶対領域の肉感。そして何よりまるで全てを抱擁するかのような今にも溢れでてこんばかりの豊満なおっぱいである。
ああ、おっぱい。素晴らしきかなおっぱい……いやいやまて!なんだこの嬉しい状況は!
今一度この煩悩をかなぐり捨てて整理をしてみよう。
俺は17才童貞にして私立の高校に通う二年生。一つだけ特別なことがあるとすれば両親がセクサロイドの開発者であることで、昔はそれでよくからかわれていた。他は運動も成績も普通と言わずむしろ悪い方だと思う。確かに遺伝かもしれないが、性欲は人並み以上にはあるほうだと思う。
性の目覚めは小学校に入学してすぐの体育で行った鉄棒だったし、中学校に入学するときのお祝い金は有料アダルトサイトの会員登録に使うほどで常にこの手の話題は自分がある意味上手過ぎて同世代と話しが噛み合ってこなかった。
だってそうだろう?「あれって『せいつう』っていうんだぜ!」などと友達が話してる中「うーん、ランキング一位の女優さんといえど俺の好みではないなー。やっぱりうなじって大事だよなね、うなじ」とかヘッドマウントディスプレイをのぞき込みながらおかずの吟味をしていた俺である。
「ご主人様?そんなハトがお尻の穴に豆鉄砲をくらったような顔をしてどうなさいまいしたか?」
はっ、いかん。突然の美少女に意識が飛んでしまっていたようだ。初対面だし、しっかり挨拶しないとね。
「ご、ごにょにちは」
噛んだ!初手の挨拶から噛んだ!だって仕方がないだろう!モニター越しには百戦錬磨でも、リアルの女性とは普段まったく話をしないのだから!ましてこれほどの美少女とあればなおさらだ。
「……にょ?」
考え込むように首を傾げながら上目遣いに恥ずかしくて俯く俺の顔を覗き込んでくる彼女。目は深く澄んだ空色だったのか、髪の色は綺麗なピンク色なんだなぁー、と俯きながらものぞき込んでくる可愛らしい彼女につい見とれてしまう。
「ヤダ……♡ご主人様ったら♡無言でそんなに見つめられちゃうと……火照ってしまいます♡」
顔を片手で隠し照れるしぐさをする彼女、照れつつも口元はまんざらでもないようで可愛らしいえくぼは隠しきれていないし、どこか嬉しそうに見える瞳も全然隠しきれていない。正直かわいい。
……いかん!このままでは彼女に会話の主導権を取られ、男としての尊厳に関わる。そもそも俺はセクサロイドに日常生活を教える教師としてこの研究室に呼ばれたのだ。毅然たる態度で教師らしく振舞わなければならないのだ。どうすれば……
……そうだ、深呼吸して小一時間考えよう。
ご主人さまー?ご主人さーまー?と突然考え込みはじめた俺の周りと飛んで跳ねて、手で頬をのばしたりして俺の顔で遊ぶ彼女。少し痛いんだけどなんだか嬉しい。
……よし!閃いたぞ!彼女は相当にあざとい。そうとわかれば対処は簡単だ。あざといということは、どうすれば「あざとい」のかを分かっているからこそできるのだ。
ここは少し心苦しいが、冷酷にふるまって彼女の本性を暴きつつも、こっち主導の会話に持ち込んで見見せる!
「イブっていうのか、俺は最上一傑、イブが感情を学んでいく間、一緒に生活をしていくことになる。俺は教師だからな、立場を間違えるなよ」
噛まずに目を見て話せた!嬉しい!しかし美少女に強気の言葉を言うのってなんだか背徳感があるな……。
「よろしくお願いします!ご主人様♡」
礼儀正しくフリルと肩まで伸びるさらさらしたピンク髪をなびかせ、腰を90度曲げての見事なお辞儀。 よしよし、このまま俺のペースに持ち込むぞ。あざときセクサロイドのペースに飲まれてたまるものか。
「よ、よろしい。……えっと、今日は顔合わせだけと聞いているから、明日からは自由にスケジュールを組んで行動していいと聞いているんだけど、どこかいきたいところとかやりたいことあるか?」
正直セクサロイドの存在はよく知っていても、まともに機械娼婦と話をするのは初めてだし、イブはその中でもとても賢くプログラミングされていると開発主任である母から聞いている。何をしたらいいのか正直想像がつかない。
「うーん……うーん……」
斜め上のほうを見ながら、眉間に軽くしわを作り、右手を顎に当てて考え込むイブ。所詮は生まれたばかりのセクサロイドだし、知識も語彙も少ないのかもしれないな。
「うーんとね!イブ、ラブホテルに行きたい!」
ほう。
甘かったなー。セクサロイドといえど機械だし、生まれたばかりだから外に出たい!とか人を見たい!とかもっとマイルドな答えが返ってくるとばかり思いこんでいた。というかラブホに俺といってどうするんだ?俺の童貞が奪われてしまうのか?だとしたら少し初体験のお相手がロボットでいいのかどうか真剣に悩まなければならない。
「……他には?」
「うーん……うーん。公園!」
そう、これだよ。こういう反応を待っていたんだ。
「よしよし、イブ。早速明日は公園までイブがどれぐらい動けるかのテストもかねて、歩いて行ってみようか。ちなみにイブは公園で何がしたいんだい?」
「イブね、あおかん?っていうの?外でのせっくすのことが知りたい!」
ほほう。甘かった、俺がまだまだシロップのように甘々だったことを認めよう。
「イブ、何かその……性行為以外のことで興味のある行きたいところとか、やりたいことはないのか?」
「うーん……うーん……。はっ!一傑様!」
「俺か?俺がどうしたんだ?」
イブは満面の笑みで、
「ご主人様!私とせっくすをしてください!」
そういって両手はももの付け根、背中90度の完璧なお辞儀。
きっと娘にはきっと色々なものが通じないのだろう。
セクサロイドの育成とはこんなにも前途多難なものだったのかと、出会って初日だというのに早くも胃が痛くなってきた。