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エピローグ

ハルには嫌いな奴がいた。ショウという人間だ。

ショウは中学生の時にいじめグループの主犯だった。自分のいないところでありもしない噂を広められ、自分の一挙一動を仲間内で、ハルのいる前でおちょくるのがそのグループでの常だった。それは中二の夏から中3の秋ぐらいまで続いた。グループ内で何人か抜けたり入ったりしていたが常に中心になっていたのはそのショウだった。

ハルはひどく不快だった。あそこまでよく人を馬鹿に出来るものだと思った。日増しに憎悪がこみ上げ、彼らに復讐したいと思っていた。ある日、とうとう堪忍袋の緒が切れた彼はショウグループの目の前で、自らの左手にハサミを突き刺した。それ以来、互いに関わることなく中学卒業を迎えた。彼らは違う高校に入った。ショウのグループに入っていた数名はハルと同じ高校に入ったがほとんど関わることは無かった。ハルはグループに入っていた彼らに対しては憎むどころか可哀想な奴らとぐらいにしか思っていなかった。憎むべきはショウ1人だけだと考えていたのだ。彼がいなければそもそもこんな事は起こることもなかったのだ。今でも左手についた傷を見る度に怒りがこみ上げてくる。傷ついたのは終始自分だけだったのだから。

ショウには嫌いな奴がいた。ハルというやつだ。彼とは中二の時から一緒のクラスになった。はじめの頃はそこそこ仲が良かった。しかし夏休みに入る直前の七月、彼にはハルが目の上の瘤のような存在にしか思えなくなっていたのだ。ハルはどこか違う。頭が少し‘アレ’なやつだと感じたのだ。それ以来、クラス中にハルのありもしないわるい噂を広め、彼の一挙一動を彼の目の前で真似しておちょくるのが日課になった。そして中3の秋にとうとう頭にきたハルがショウ達の目の前でハサミを彼自身の手に刺したのだ。ショウはそれを見ても未だに頭のおかしい奴が頭のおかしいことをしているだけ、と捉えていた。だが、グループの仲間内ではそれが酷くショックだったらしく、受験も控えていたこともあってハルに対するいじめは自然消滅していった。ショウは卒業し、高校には行ったものの、そこまで勉強熱心というわけでもなかったが、もともと興味があった美容師の専門学校に進学した。たまにハルの顔がチラつくことがある。高校にはいってからいじめをしなくなった。ハルがハサミで刺した時の記憶がある意味抑止力になっていたのだ。面倒なことにはなるべく首を突っ込まないようにしようとした結果、そんな風にハルのような奴とは関わらないようにしていた。彼はハルがいじめられた時、自分に対してどんな感情がむけられたか未だに分からないでいる。わかる必要も無いと思っていたのだ。




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