プロローグ
月曜日、俺はいつものように帰り支度をしていた。
「お~い正人、そろそろ帰ろうぜ」
話しかけてきた男は友人の小鳥遊である。ダンス部とかにいそうなチャラい雰囲気だが、その実態はゲーム好きの帰宅部という変わった男だ。小学校から高校までの12年間一緒なので、腐れ縁の極みである。
「今日もやるだろ、ビーストハントオンライン」
「当たり前じゃん。あ、でも先に地学のレポート書き上げるから、ログインするの六時くらいだわ。」
「ああ、それで構わねえよ。」
ビーストハントオンラインとは、最近発売されたVRMMOだ。俺と小鳥遊は毎日このゲームをプレイしていた。一応付け加えておくと、俺が通っている高校は都内でも有数の進学校である。当然、毎日ゲームをできるのは帰宅部だからに決まっている。帰宅部万歳!!
これから何を狩りに行くか、なんて他愛もない話をしながら最寄駅の改札を抜ける。
「それでさ~またあの迷宮で・・・」
「危ない!!」
事態は一瞬だった。目の前、巨大なダンプカーが迫ってくる。小鳥遊が転がるようによけるのが、視界の端に見えた。
しかし・・・俺は全く動けなかった。今までの人生でろくに運動なんかしたことがないせいか、頭ではわかっていても体がついてこない。
(これは死んだな・・・)
全身を襲う衝撃、叫ぶ小鳥遊の声を聞きながら、俺の意識は闇に沈んでいった・・・