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感染者の創造  作者: 岡田健四郎 原案:岡田健八郎
発祥の地
7/13

“実は”

 宿舎の前に沢山のパトカーと報道陣が居た。

 武装した特殊部隊が宿舎内に突入した。

 黒木はやって来た救急車の開いた後部座席に座り込んでいた。

「まったく、通報すればフィリピン特殊部隊まで来るなんてな」

「まったくね」

 薫子がコーヒーが入った紙コップを渡した。

「俺はココア派だが、ありがた」

 コーヒーを口にそそる。

 苦いが暖かい。

 薫子は黒木の隣に座った。

「今日は、その、ありがとう」

「何が?」

「私を助けてくれたこと」

「素直に礼を言う人間だったっけ?」

「まあ、死に掛けて助けてもらえば礼を言うのはあたりまえでしょ?」

 黒木は頷き、再びコーヒーを飲む。

 宿舎の扉からあの変態店主が特殊部隊に連行されて来た。

 いい様だと黒木は思う。

 証拠のビデオも特殊部隊が持っていた。

 ますますいい様だ。

 だがあの巨漢は連れてこられていない。

 私服警官が近寄ってきた。

「あなたの言っていた巨漢ですが……」

「居ましたか?」

「いいえ、でも巨大な鉄の扉を発見しました。あまりにでかく分厚いので焼ききって入るのは不可能だと断念されました」

「そうですか」

 薫子は感心したように頷く。

「フィリピン語も分かるのか?ほ~」

「俺はこう見えても素晴らしい秀才だ」

 天才とはあえて言わない。まだ偉大な発見も研究もしていない。する気も無い。

 天才と狂人は紙一重と言うしな。

 黒木は立ち上がる。

 なぜかって?

 カロルとジョンがやって来たからだ。

「だいじょうぶか、2人とも!」

 カロルが真っ先に聞いた。

「ええ、まあ、無事ですね」

 ジョンはその返答に満足した。

「なぜあなた達は居なかったんだ?」

「実は遺跡で仲間の死体が発見された。どれも食われて死んでいる」とジョンが答える。

「何に?」

「歯形からして“人”だ」

 聞き間違えたことを願った。

「何に食われたって?」

「“人”だ」

 食人族でも居るのか、フィリピンは。

 黒木はそう思いながら言った。

「詳しく死因を知りたいから、死体は回収してください」

「すでに済ましている」

「死体は?」

「この付近にある研究所にある」


 黒木は研究所に来た。

 よほど予算が掛かっているのか、立派な研究所だ。

 中も清潔的だ。

 野村が待っていた。

「待ってましたよ、黒木博士('')

「ここはなんて言う研究所だ?」

「確かかつてはヴェルネ社と呼ばれる会社が保有してましたが」

「で、死体は?」

「ま、来てください」

 黒木は案内された。

 警察の死体解剖室だっけ?それに似ていた。

 そこに裸の死体が横たわっている。

 黒木は死体を見た。

 あちこちに咬まれた傷跡や食い千切られていた。

 恐ろしげな光景だ。

 まるでゾンビに食われたような光景だ。

 黒木は部屋から出た。

 だが扉を間違えたのか、そこは研究室の様な場所だ。

 瓶にあの青いチューリップがあった。

 そう言えば、何で青いんだろうか?

 黒木はそう思った。

「花を1つくれないか?」

「いいですが」

 野村は瓶に入った花を渡した。

 黒木は受け取り、こう言った。「ちょっと顕微鏡を貸してくれ」

 ウィルスを観察する顕微鏡を渡された。

 これしかないのか?と言いたかったが、あえて言わない。

 黒木は1人になれる場所を要求した。

 

 小さなベッドや机しかない部屋に案内された。

 礼を言うと、机に顕微鏡を置き、メスで花を細かく分解した。

「まずは雌蕊からだな」

 そう言って雌蕊を顕微鏡に置き、覗いた。

 わくわくした気分だ。

 自然界に存在しない青い花を調べるんだ。

 だがそんな気分も吹っ飛んだ。

 花に微生物が存在していた。

 いや微生物ではない。

 それよりも遥かに小さい。

 細菌か?

 いやもっと小さい。

 黒木は鏡を見た。

 みるみる肌が腐り落ちる。

 俺は死ぬのか。

 





 「はっ!」

 目を覚ませばそこはベッドの上だ。

 夢の世界と変わらない狭い個室。

 だが顕微鏡こそはあるが、花は解剖されてない。

 黒木は苦笑する。

 とんでもない悪夢だった。

 立ち上がる。

 

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