処刑人
薫子は、森の木々を通って、やがては村が見えたが、とりあえず木の後ろに隠れ、村を偵察した。
村の広場で大勢の村人が集まっていた。
集会場の真ん中には、廃バスがあった。バスの上には、2人の男に取り押さえられた見知らぬ日本人観光客と、紺色の頭巾を被った巨漢がギロチンの刃をくくりつけた巨大な斧状の武器(断頭斧)を構えていた。
まるで、公開処刑のようだ。
「助けてくれ!俺が何したんだ?」
男は命乞いをする。薫子は助けたかったが、集会所に集まった村人は全員武器を持っていたため、動きようがなかった。
全身が分厚い脂肪と、何かの分泌する化学物質で強化された筋肉を誇るその処刑人は、処刑命令が出るのを待つ。
すると、黒いローブと、猪の頭を被った謎の男が、日本人観光客の前に立ち、怪しげな祈りを捧げる。村人は、奇声を発していた。
すると、ローブの男は腕をあげ、そして下げる。
処刑人はそれに頷くと、その断頭斧を抱えあげ、そして振り下げる。
日本人観光客の頭が消えさる。同時に鮮血が宙に噴き出る。
村人は興奮した。
処刑人は観光客の頭を抱えあげ、雄たけびを上げた。
すると、ローブの男が薫子の存在に気づく。
薫子は逃げようと思った。
だがその瞬間、後頭部に強い衝撃が走る。同時に意識が遠のく。
途切れ途切れの意識。
いったい何があったのだろう?
男たちの喚き声。
奈々子は何かに引きずられていた。
誰が引っ張っているんだ?
奈々子は目をわずかに開ける。
ぼやけてはいたが、自分の足を持って引きずっているのはあの処刑人だ。
何をするんだ……?
その時、また気を失った。