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感染者の創造  作者: 岡田健四郎 原案:岡田健八郎
発祥の地
12/13

変貌した村人

「いったいこの村で何が起きたというのですか?村の人は殺意むき出しだし、姉は消息不明だし、あなたは冷静だし、何より警察を呼ばないと」

 黒木はあきれながら首を振った。数十分間、ずっと百合は喋り続けている。本当に薫子の妹か?薫子よりずっと明るいし、美人だが、黒木は無駄口少ない薫子のほうが好みだ。

「黙ってくれないか?そうすれば、俺は助かるんだが」

「それより警察を」

「警察も殺意むき出しだ。頼れない」

「じゃ、どうするんですか?」

「とにかく、連絡を取らないと」

「て言うか、村人ってどうしてああなんですか?」

「俺に聞くな。連中に聞け。もっとも連中に政治的信条を尋ねたところで、連中の答えはいたって簡単」

「殺す」

「そうだ、わかってるじゃないか。頼む。数分だけ黙ってくれ」

「……出来ない」

「出来ないはずなかろうが?口を閉じれば、はい黙れる。やってごらん」

「怖いのよ……喋ってないと、恐怖で蹲りそうで」

「だったら俺が背負ってやる」

「本当?」

「だから黙れ」

「………ああ!ダメ!黙れない!」

 黒木はため息ついた。これだから、素人は。

 素人?

 何の素人だ?くそ!自分までおかしくなりそうだ!

 だが、前方にあることを確認し、黒木はしゃがむ。

「どうしたの?」

「しゃがめ。静かにな」

 2人は見る。一メートルもしないさきに、目から血の涙を流した男性が、つるはしで岩を削っていた。線路が続いていて、その先に洞窟があった。トロッコも近くに止まっていた。

「いいか?ここに居ろ。俺がいいというまで、動かず、しゃべらず、じっとしていろ」

「襲われたら?」

「それは逃げていい」

「ゴキブリが出たら?」

「殺せ」

 黒木はしゃがみながら歩き、男の背後に忍び寄った。男は作業に夢中で、黒木に気づかない。

 よし、いいぞ!

 黒木は近くに落ちているシャベルを拾うと、大きく構え、振りかざす。シャベルは男の後頭部に命中し、男は倒れこみ、痙攣を起こした。

 黒木はつるはしを奪い取り、それを男の首に突き刺した。

「よし、もういいぞ」

 百合は呆然としながら、近寄った。

「殺した……ですか?」

「仕方がない。どうせ「わあ~」と叫びながらやってくるんだから」

 すると、2人の後ろから声がした。

 黒木は見る。大勢の村人が武器を持ちながら、こっちに向かってきた。

「トロッコにのれ!」

「え?!」

「いいから!乗れ!」

 百合はトロッコに乗る。

「いいか?トロッコが止まったら、安全な場所に隠れるんだ。俺を見かけたら、声をかけろ」

「え?で、でも」

 言い終える前に黒木はトロッコを押した。トロッコは、猛スピードで線路を走り、洞窟に消える。百合を乗せたまま。これでうるさいのは消えた。少々さみしいが。

 黒木は叫んだ。

「おら、こっちだ間抜け!」

 村人たちは黒木目がけて走ってきた。戦うのは妥当ではない。

 黒木は、近くの手すりを登り、急斜面を下りた。降りるというよりは、滑っているが正しい。

 村人たちも滑ってきた。

 黒木は滑り降りると、目の前の小川を渡り、木々を通って森に入る。

 そして、本望ではないが木に登り、木の上の大量の葉の中に身を潜める。

 村人たちも森に入ってきて、黒木を捜索した。眼は真っ赤に充血し、皆狂気に染まっていた。恐ろしい。まるで、悪霊だ。

 村人たちは森の奥に進み、やがては消えた。このままクマに襲われて死ね!

 黒木はそう思いながら、木を飛び降りて、斜面に向かった。登るのは難しそうなので、遠回りだが、別のルートを探すしかない。

 まったく、こんなに運動したのは、空地の隣に住む雷爺さんの窓を割った時以来だ。


 山岸百合は、停止したトロッコから降りると、洞窟を見渡した。暗かったが、所々あう電灯のおかげで視界は確保できた。暗闇に覚えることは、まずない。

 それにしても、黒木という男はどうしてあんなに冷静なのか?それがずっと不思議でたまらない。今時の男子とはどこかが違う。だが、どこが?

 今は考えるのをやめよう。言われたとおり、安全な場所を探そう。あるいは線路をたどって出口を目指すか?

 決めた。出口を目指そう。

 


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