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感染者の創造  作者: 岡田健四郎 原案:岡田健八郎
始まり
1/13

百獣の王の死

 ある事件より12年前


 風がすすり泣くように音を立てながら、海を渡っていた。

 ライオンは走っていた。追手よりも速く。ライオンは追手よりはるかに強く、敏捷で、凶暴である。単独で狩りをしても、自分より体格の大きい獲物を倒したこともあった。


 追手は走っていた。ライオンよりも遅い。追手は獲物よりはるかに弱く、小さく、簡単に死ぬ。だが、ライオンよりも狂暴だった。

 ライオンはこれまで、多くの獲物を殺したことがある。自分の縄張りを荒らした動物を八つ裂きにしたこともある。

だが、今回は違う。

ライオンの堂々とした狩り、外見は百獣の王にふさわしかっただろう。

だが、今回は違う。

野生の雌ライオンは、野性的本能で生命の危機を感じていた。

自分を追う者は、自分よりもはるかに弱い。

だが、今回は違う。

その鋭い爪は獲物の体を引き裂くことが出来る。その鋭い牙は獲物の体を噛み砕くことが出来る。その鋭い嗅覚は獲物を逃すことはない。

だが、今回は違う。

今回は追手が狩人であり、自分が獲物だ。

本来なら、敵を自分の生まれつきの武器で殺すことが出来る。

だが、今回は違う。

自分の野生で鍛えられた本能と危機管理力が、敵と戦ってはならないと語っている。

ただ、今回はひたすら逃げろ、体が脳にそう訴えかけた。

脳は逃げることを選択した。

ライオンは走り続けた。追手が追跡を中断するのを待った。

だが、追手は追跡し続けた。

ライオンはこれほど恐怖と屈辱を感じたことがない。

強者が弱者に逃げるなどと―――

ライオンは立ち止まった。

目の前は、深い崖が広がっていた。

引き返そうと振り向いた瞬間、追手はすぐ近くに居た。

追手はうなり声を発した。

ライオンは、死を覚悟した。

追手は人間だった。

そしてライオンは見た。

人間の目は赤かった―――

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