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廃棄孔の風

そして、運命の30日目がやってきた。 王城の地下深くにある『廃棄孔 ダスト・シュート』。


ここは、国中のゴミが集められていて、底からは、湿った腐敗臭と、不気味な赤い光が漏れ出している。

ヒュオオオオ……という風切り音が、まるで地獄からの手招きのように響く。


「結果は明白である」 国王レグルスが、書類をゴミ箱に捨てるような手つきで告げた。


「勇者カイトはLv15に到達した。だが道化師レン、貴様はLv1のままだ。成長の見込みなし。

……それどころか、貴様がいることで勇者の成長率が低下しているというデータが出た」

「――え?」 カイトが目を見開く。


「貴様は無能なだけでなく、世界を救うための害悪なのだ」


シン、と場が静まり返る。 クラスメイトたちは、誰一人として王に反論しなかった。

彼らも薄々気づいていたのだ。

「レンがいない方が、このパーティはうまくいくんじゃないか?」と。

その沈黙が、俺への死刑宣告だった。


「連れて行け」 「やめろ! 放せ! 俺も行く!」


カイトが衛兵を振り切って追いかけてくる。

「レンと一緒じゃなきゃ意味がないんだ! 俺の親友なんだよ!」


「来るなカイトッ!!」


俺は初めて、親友に対して本気で怒鳴った。 これ以上、あいつに惨めな姿を見せたくなかった。

それに、カイトまでこんなゴミ捨て場に落ちる必要はない。


「お前は勇者だろ! 世界を救うんだろ! ……俺みたいなピエロにかまってる暇なんてねえんだよ!!」

「レン……ッ!」


カイトが足を止めた、その一瞬の隙。 衛兵の槍の柄が、俺の背中を無慈悲に突き飛ばした。


体が宙に浮く。 スローモーションの中で、カイトが手を伸ばし、涙を流しているのが見えた。

ポケットからこぼれ落ちた道化師の仮面が、カランと音を立てて床に残る。


(……泣くなよ。最後くらい、笑って見送れよバカ)


俺は奈落の闇へと吸い込まれていった。


……はずだった。


『――見つけた。』


落下する俺の脳内に、ノイズ混じりの「誰かの声」が響いた。

それはカイトでも、ましてや王のものでもない。もっと古く、深く、悲しい響きを持つ声。


『……適合者…我が後継よ』 『システムに弾かれた、その「無価値」こそが鍵となる』


奈落の底で待ち受けていたのは、死ではなかった。

赤く脈動する巨大な核。 そこから伸びた無数の触手が、俺の魂を捕らえたのだ。


『来い。……世界の真実を教えてやる』 『1000年前の、始まりの地獄へ』


ズオオオオオオオッ!!


俺の体は、現在の時間軸から引き剥がされ、因果の奔流へと逆流していく。

カイトのいる「光あふれる現在」から、 誰も救われなかった「闇に満ちた過去」へと。


意識が消える寸前、視界の端でステータス画面がバグり、文字が書き換わるのを見た。


【ジョブ:道化師 ⇒ 虚数魔術師 (Error)】

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