さかき
金色の瞳を持った少年は食料を欲しました。親はいないようでしたが、誰も彼を助けることはいたしませんでした。
その前の日は打ち付けるような強い雪が降っておりました。立つことさえ困難な状況でして、その雪が止んだときには家屋が半壊しているほどでございました。人々は見せしめのため、ある家族を山へ追いやったことへの報いだと思ったようです。
そのことが頭によぎったとき、人々は少年に食べ物を分け与えました。少年はその食料を思いっきり食らうもので何かの肉食動物のようです。
「首長様。この子をどうします?」
「引き取るしかないだろう。この前の件もあるしな。」
その子供は外見を裏切らない誠実な心の持ち主であったため、人々に必要以上に好かれました。何と言ってもこの頃の人々は自分たちの犯した罪を酷く後悔していて、この子供はその心の癒しのようなものだったそうです。
子供がやってくる数年前のこと。
「首長様。この儀式は要らないのではないですか?神などのご機嫌取りのために無実の子供たちを殺すなんて。あまりにも酷すぎる。」
マーランという青年は神に捧げる生贄の儀式を辞めようと持ち掛けました。ですが、この時代というものは神以外に心の拠り所というものを持っておらず、神が絶対的な支配者だったのです。
首長ら他の人は生贄の儀式をなくすなど論外でありまして、最初からこの件に関してはきっぱりと断るつもりでした。
ですが、何度断っても中々引こうとしないマーランを見兼ねて彼の妻であるカーラを神の住む森に放り込みました。マーランは彼女を助けるため、一度入ったら二度と出てこられないという神の森に自ら飛び込んだのです。それ以降、彼らが戻ってくることはありませんでした。
その日以来、このムラでは不作が続くようになりましてマーランの祟りだ、などという突拍子もない噂まで広まったのでございます。そんな中であの子供が現れ、ムラの救世主になり得ると人々は疑うこともなく信じ切っておりました。
「そのマーランって人はこの森の墓の前でお願い事をしたの。」
マヤは今までの話を遮りマーランについて話し始めました。
『お願いです。息子だけは日の光の下で笑って誰からも愛される立派な大人になってほしいのです。身勝手とは存じております。ただ、今の私たちの願いはそれだけなのです。お願い申し上げます。』
マーランという青年は妻と共に神の墓の前でそう願ったそうです。その後、自分たちの息子を神の命に従い森の外に出したのでございます。
その子供はムラですくすくと育ち、人々から慕われるようになりました。
「ね?馬鹿馬鹿しいでしょ。お兄ちゃんが慕われてるのは神様がそのように操作してるからだよ。誰も本心ではそう思ってない。首長様も上っ面だけなんだね。お兄ちゃんって本当にかわいそう。」
マヤは涙を流しておりますが、どこか楽しそうです。最初はカヒヤでもその不自然さは気づいておりました。罠に掛けようとしているのかもしれません。ですが、だんだんとマヤの言い分も理解できてきました。それと同時に腹も立ってきたのです。
確かに神に操作されているだけと思うと、本心ではどうも思っていないような。一発、ぶん殴ってやらないと気がすまないような。いや、自分のこの気持ちを味合わせたいような。そのようなどうしようもない気持ちがふつふつとわいてくるのです。
「どうすれば、あいつらを地獄に落とせるんだ?」
そのようにカヒヤはマヤに問いました。彼女はとても嬉しそうでした。
神の墓には、榊の葉が供えられておりました。




