黒い雪
宴の翌朝はとても静まり返っています。
「責任を取れ、か。」
目を覚ましたカヒヤはひと言だけそう言います。今で優しかった人たちに背を向けられているような感覚です。
朝は少し肌寒く、外に出ると風が吹き抜けていきました。そこに人の姿はなく、家々と畑ばかりが映っております。
すると、深々と雪が降り始めました。だんだんと雪が深くなっていきます。この時期には似合わぬ豪雪がこのムラを襲いました。朝食を作る暇もなかったため、朝は飲まず食わずのまま終わってしまいました。
雪が少し弱まってきた頃、恐る恐る扉を開くと恐ろしい光景を目の当たりにしました。
「助けてくれ〜!」
物凄い叫び声と共に悪臭が漂っておりました。肉が腐るようなツンとしたきつい匂いが鼻を抜けます。
目の前にはあの少女が、マヤがおりました。死んだはずではと思いましたが、そんな余裕もなく新たな不可思議が彼を襲います。
マヤの周りには白骨化した死体が山積みになっておりまして、真っ黒な雪がふわふわと舞っていました。その黒い雪に触れた時、人の肉は腐り、骨だけ残ります。
最初に出会った頃とは違い、彼女は楽しそうに笑っていました。山積みとなった死体の上に立ち、片足でくるくると軽やかに回っています。その様子はとても美しく見えてしまいました。
人々は逃げ回りカヒヤの元に真っ黒な雪と共に迫ります。それがあまりにも恐ろしかったようで、反射的に足がカヒヤの許しもなく逃げました。
この状況証拠だけでも逃げる理由にはなりそうです。ですが、なぜか苦しいのです。人々を置いていくのがこれほどまでに苦しいものとは、当の本人は全く知りませんでした。
逃げ続け、ついにカヒヤはムラの外に出ました。一気に空気が良くなりました。後ろを振り返らずにひたすら走ります。うめき声や叫び声などが響いてまいります。ですが、そのようなことに構っている暇などありません。
「うわっ!」
思いっきり木の根に足を引っ掛けずっこけました。我慢できずに後ろを振り向いた罰でしょうか。体は泥だらけです。泥を落として前を向き歩き出しました。すると、目の前にはマヤがおりました。
ムラにいたはずではなかったか、と思いましたがとにかく逃げようとします。
「お兄ちゃん。あのムラには関わらないほうが良いよ。」
ひと言そう言うと、マヤはムラの方を見つめます。
「あのムラから始まったんだよ。お兄ちゃんの人生。」
何かの物語の冒頭のような言い回しに、カヒヤは少し違和感を感じます。
昔、このムラで神に反した者を追放いたしました。そしてその後、神の願いを受け取った子供が村にやって来るのでした。黒髪に金色の瞳を輝かせ、誰もが羨むような容姿の子供でした。




