前触れ
「朝、目を覚ますと俺は外にいた。なんで?」
昨日のマヤの件でふてくされていたカヒヤは無意識に、おひさまの照る雑草が密集した場所で寝ておりました。大の字の形をしたまま大きなあくびをして、猫のように伸びをしました。
この時期にはもう、雪は降らないでしょう。若葉が芽生え、雪は溶け始めていました。あの辛かった冬を越したのでございます。
ようやく自分の体が今、とても寒いことに気づいたカヒヤですが、それよりもまずやりたいことがありました。
「お〜い!仕事は順調か?」
人々がいる畑に向かって大声で問いかけます。笑顔でこちらに走ってくるカヒヤを見た人々はそれに呼応しました。
「順調で〜す!カヒヤ様もやりますか?」
「いいの?やるやる!」
しばらくカヒヤは畑仕事を手伝いました。その結果、ますます人々の信頼度が上がっていくのは目に見えて分かりました。
休憩を取るためカヒヤが少し横になった時、何とも言えない声が響いてまいりました。
「ーーーーー!」
その声に驚き飛び上がったところまでは良いのですが、どこから聞こえてきたのかが分かりません。しばらく辺りをぐるりと見渡します。すると、遠くでアリが集っているかのような人影が見えました。目撃した瞬間、一目散に走り出しました。何か嫌な予感がしたのです。
そこには、子供の死体が転がっておりました。何とも奇妙なことでございまして、白骨化していたのです。雪の下敷きになっていたのというのは考えられるのですが、一昨日までなかったようなのです。
「どういたしますか。カヒヤ様。」
また、カヒヤに答えを求めました。どこの誰かは知りたくもありません。ですが周りは皆、目を輝かせております。カヒヤはため息を吐きました。
「神のご加護が受けられるように森のふもとに埋めて墓を作ってやろう。」
「それはよい案です!ぜひやりましょう!」
その年の夏、もう雪が溶けきった頃にあの死体の持ち主が判明いたしました。
夜中、少し汗ばむほどの気温の中、仕事を終え急いでムラに帰る男がいました。もう既に辺りは暗くなってしまい火の灯りで足元を照らしつつ慎重に歩いてゆきます。ふと、森の方向に目を向けると青白い光がふわふわと浮かんでおりました。その光の中心にはマヤのような人物が、地面を掘っているようでした。
その男はあの死体の埋めた場所にマヤがいたとムラの人々に伝えたのです。確証すら何もないというのに、人々はその話を信じました。
その人々の矛先はカヒヤに向かいました。あそこに埋めようとしたのは貴方です。なので、責任を取ってください。そのように皆が弓矢のようにカヒヤの心を突き刺し、えぐっていきました。
秋になり、人々は神に願う祭りが行われました。とても賑やかな日となりました。この年はムラを統一したのが良かったのか例を見ない豊作でございました。
カヒヤはムラの祭りには参加せず、端っこで干し肉を噛み締めておりました。その日は夜通しはしゃぎまくって寝落ちした者ばかりでした。次に目を覚ました時に恐ろしい光景を目にするとは思いもしないことでしょう




