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黒い雪  作者: 天野 光
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日常の隙間に

 怒と喜を司る神は人間の小競り合いが大好きなのです。まるで子供のように健気で無邪気で、人間が大好きな神様。もうすでにこの世を去ってしまった神様でありながら未だ力を持ちつづけられるのは、この世界が好きだからでしょう。

 その神様の喜びそうなことがこれから起こりそうです。雪はまだ降り続きそうな気配を残しつつ、静かに舞っておりました。神の森を隠すように、霧のように細かい粉雪は触れるとすぐに溶けてしまいます。


 さて、そろそろ帰ってくる頃でしょうか。カヒヤは首長の帰りを今か今かと母親を待つ子供のように待っておりました。

「うまくいったのか?もしうまくいかなかったら…あぁ…。胃が持たないってもう。」

 日が経つほどに気持ちをすり減らしていたらしく、食事もまともに喉を通らず夜の散歩にすら出かける気になれなかったようです。

 今日も変わりなくおどおどしていると、突然誰かに声をかけられました。

「あの、カヒヤ様。最近川から水が来ないんですけど。どうしたらいいですか?」

 それを聞いてきても答えなどすぐには出せませんよ。と言いたげなカヒヤでしたが、心根は優しく純粋なのでちゃんと答えてあげました。

「ええと、水が湧き出てくる場所まで見に行ったの?もしかしたら川がなにかでせき止められてるかもしれないよ。」

「あぁ。それは盲点でした!ありがとうございます!」

「あ!それともし川がせき止められてなかったら、もう一度聞きに来ますのでよろしくお願いします!」

「最後の一言はいらないと思うけど…。」

 自然と心の声が漏れてしまいます。カヒヤ自身、人のために何かをするとまた頼られてしまうことなど分かっておりました。ですが、性分には到底逆らえず、結局いつも答えたあとに後悔するのです。その悪循環を終わらせたいと思っているようですが、どうしたらよいのか分からずにいる状態です。

「このムラの人たちってなんで俺を特別扱いするんだろ。それに一番は馴れ馴れしくて気持ち悪い。」

「でも、原因見つかるといいな。」

 どこまでいっても他人思いのカヒヤです。だからこそ、周りから好かれるのかもしれないですね。


 さて、話を変えまして、隣ムラに商談に向かった首長についての話を少しばかり致しましょうか。その商談はとても上手くいったらしく、現在は満足げに帰宅中でございます。一体何があったのかと言いますと、首長とその一味は商談と謳ってムラの支配権を奪い取ったようなのです。この話をもう少し詳しく話したいところですが、そろそろ首長が帰ってきてしまうのでまた今度お話すると致しましょう。

 ようやくムラに帰ってきた首長たちは、カヒヤの指導のもと大宴会が催されました。

 その宴会は盛大に行われましたが、その様子をじっと見つめる人影がありました。

「お腹すいた。」

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