女神のホルン
コッキーの頭の中が朦朧として考える力が失われて行く、あの狂った楽器職人の悪夢が生み出した様なホルンの側に行ってみたい、そんな思いに心の中が塗りつぶされる、慾望に身を委ね楽になりたい。
台座のホルンを熱に潤んだ瞳で見つめる、ホルンのマウスピースに口づけしたい、胸の中の空気を思いっきり吹き込みたい、そんな慾望に駆られてホルンに向って歩きはじめる。
コッキーは総てを忘れた、テレーゼに帰る事も仲間の事も何もかも。
「あのホルンを吹きたいのです」
台座に近づくにつれ、ホルンが少しずつ変形してゆく、絡み合った毛糸玉のような歪んだホルンの形が次第に解放されてゆく、ピストンの位置も人間の指に合いそうな場所に移動していく。
美しく気品に満ちたホルンの姿に生まれ変わろうとしている。
「これなら吹けそうですよ、へへッ」
コッキーは無邪気に微笑んだ、ホルンなど吹いた事などなかった、でも吹けると言う自信がみなぎる。
それはとても幸せで充実した気持だ、台座の前にたどり着くとホルンに手を伸ばす、小柄なコッキーから少々高い位置にあったはずのホルンだがなぜか簡単に手に取る事ができた。
「あれ、背が伸びましたか?」
ベルサーレの事を思い出し後ろを振り返る、彼女はまったく身動きせずその表情も変わらない、だが目だけが驚きと恐怖を湛えていた。
「べルさんどうしたのです?」
彼女はそれに答えなかった。
ベルサーレは体が動かず、台座に向かうコッキーを止める事ができなかった、ただ見守る事しかできない。
コッキーの体に徐々に変化が現れる、コッキーの体が縦方向に引き伸ばされ、恐怖したが声を発する事ができなかった。
その変化はコッキーが台座に近づくほど激しくなった、体の左右で引き伸ばされ方に差があるのか体が曲がり始めた。
頭も例えようのない形に引き伸ばされて曲がった、手足も奇妙な曲線を描くように変形し引き伸ばされ指も長く伸び曲がる。
「これは幻覚だ!!」
彼女は必死に自分に言い聞かせた。
その奇怪な狂った芸術家の造ったオブジェの様な化物と化したコッキーが奇怪なホルンを手にとりベルの方に向き直る。
「ギャアアアア!!!オバケーーー!!!」
ベルサーレは心の中で激しく絶叫した、百選練磨で修羅場を何度もくぐり抜けてきた彼女も魂がとびかけていた。
おまけに幼児退行寸前だ。
そして冷静な彼女の一部は、ホルンはこの姿形の奏者に合わせて作られた楽器なのだと理解した。
コッキーはホルンなど吹いた事などない、でも今は素晴らしい演奏ができる喜びに打ち震えた。
吸い込まれるようにマウスピースに唇を当てる、何か得体の知れない力が体の中に入ってくるのを感じた。
力が漲り静かにホルンの演奏を始める、落ち着いた温かい音が鳴り響く、それは朝焼けのような雄大で美しい曲だった。
コッキーの周囲に光の玉が集まり始める、それはやがて小さな人の姿をとり始めた、コッキーがおとぎ話で聞いた妖精そのものの姿をしている。
コッキーの瞳が微笑む、それは蝶や羽虫の様な羽根を持った美しい妖精達だった。
「へへ、やっと会えましたね」
美しい妖精達は聞き取れぬ言葉でお喋りしながら、コッキーの髪に触ったり耳を引っ張り遊び始める。
やがて右側で音がする、それはあの黒い像が動き始めた音だ、その黒い像は上半身を起こし立ち上がろうとしている。
コッキーが再びベルサーレを見る、彼女は先程からまったく体も表情も動いていない、ただ目だけが狂気の色を帯びている。
「ベルさん?」
その心の呼びかけは届かない。
ベルサーレは体を動かす事ができず、コッキーの演奏をまともに聞くことになった、それははたして音楽なのだろうか?
その曲は理解しがたい音程とコードで構成されていた、ベルも音楽に詳しいわけではないが、名門の令嬢として最低限の教養は叩き込まれていた。
やがてコッキーの周囲に光の歪みが幾つも生まれる、向こう側の背景が歪んで見えるような歪みだ、ベルは水を入れた金魚鉢を連想した。
その音楽からは脳をかき混ぜられるような不快感と、不協和音の中に怖ろしい法則性が潜んでいる事を理解した、彼女の並外れた直感力がその法則の意味を理解できた時、我が身と心の破滅だと告げている。
それは理屈ではない。
「考えちゃだめ!」
別の事に意識を向ける、その時左側の石の台座の上に変化が現れる。
台座に半分埋め込まれたように安置されていた黒い女神像が起き上がろうとしている。
やがて黒い女神は立ち上がると真っ直ぐ歩き始めた、歩き始めた女神像を目で追うことしかできない。
女神像は壁に到達し壁の窪みにしっかりとはまり込んだ、そしてそのまま壁に沈み込んでいく。
女神像が通過した後の窪みは白い光に満たされていた、いや窪みではなく穴になっているのかもしれない。
そこでやっと狂気のホルンの演奏が止まる、それと同時に彼女の制御を外れていた力が戻る、再び体を動かす事ができるようになったが、ベルはその光に満たされた穴から目を逸らす事ができない。
のろのろとベルは数歩前に出る、そして黒い女神が去った壁に向き直る、そして魅入られたように穴に向って歩き始めていた。
ベルサーレは見かけによらず強靭な精神の持ち主だったが彼女の心は疲れ果て抵抗力を失っていた。
彼女が近づくに連れてその穴は変形し人の形をとり始めた、その形は人の女性の輪郭に近づいてゆく、しだいに彼女の為に初めから用意されていたとしか思えない。
その穴をくぐり抜け向こう側に行きたいと言う強い衝動に塗りつぶされていく、遠くで彼女の理性が抵抗していた、だがそれも抵抗虚しく消えてゆく。
グラディウスを捨てた、小間使いの服を脱ぎ捨て総てを脱ぎ捨てる、そして裸になってしまった。
そのまま自分と同じ形をした光に満たされた穴に向って進む。
穴にピッタリとはまった彼女は大きな満足を得た、そのまま穴をくぐり抜ける時に全身を快感が走る、光の中で大きな何かに包まれ肉体が溶けていくように感じた、不愉快な物ではなく満たされた平穏の中に沈む、やがての意識も溶けて消えていった。
コッキーは無意識に演奏を止めホルンを台座に戻す、その瞬間に左の肩の上に焼け付くような痛みを感じた、思わずそこを見るとホルンの形をした痣ができていた。
不思議と曖昧な意識のなかでそれを自然に受け入れていた。
そして妖精達も姿を消していた。
「妖精さんさよならです」
するとコッキーの眼の前にいたコッキーの頭の中が朦朧として考える力が失われて行く、あの狂った楽器職人の悪夢が生み出した様なホルンの側に行ってみたい
そんな思いに心の中を塗りつぶす、慾望に身を委ね楽になりたい。
奥の台座のホルンを熱に潤んだ瞳で見つめる、ホルンのマウスピースに口づけしたい、胸の中の空気を思いっきり吹き込みたい、そんな慾望に駆らホルンに向って歩きはじめた。
コッキーは総てを忘れた、テレーゼに帰る事も仲間の事も何もかも。
あのホルンを吹きたいのです
台座に近づくにつれ、ホルンが少しずつ変形していった、絡み合った毛糸玉のような歪んだホルンの形が次第に解放される、ピストンの位置も人間の指に合いそうな場所に移動していく。
それは美しく気品に満ちたホルンの姿に生まれ変わろうとしている。
「これなら吹けそうですよ、へへッ」
コッキーは無邪気に微笑む、ホルンなど吹いた事などなかった、でも吹けると言う自信がみなぎる。
それはとても幸せで充実した気持だった、台座の前にたどり着くとホルンに手を伸ばした、小柄なコッキーには少々高い位置にあったはずのホルンだがなぜか簡単に手に取る事ができる。
「あれ、背が伸びましたか?」
ベルサーレの事を思い出し後ろを振り返る、彼女はまったく身動きせずその表情も変わらない、だが目だけが驚きと恐怖を湛えている。
「べルさんどうしたのです?」
彼女はそれに答えなかった。
ベルサーレは体が動せず、台座に向かうコッキーを止める事ができなかった、ただ見守る事しかできない。
コッキーの体に徐々に変化が現れ始めた、コッキーの体が縦方向に引き伸ばされ始めた、彼女は戦慄したが声を発する事すらできない。
その変化はコッキーが台座に近づくほど激しくなる、体の左右で引き伸ばされ方に差があるのか体が曲がり始めた。
頭も例えようのない形に引き伸ばされ曲がる、手足も奇妙な曲線を描くように変形し引き伸ばされ指も長く伸び曲がる。
「これは幻覚だ!!」
彼女は必死に自分に言い聞かせる。
その奇怪な狂った芸術家の造ったオブジェの様な化物と化したコッキーが奇怪なホルンを手にとりベルの方に向き直った。
「ギャアアアア!!!オバケーーー!!!」
ベルサーレは心の中で激しく絶叫する、百選練磨で修羅場を何度もくぐり抜けてきた彼女も魂がとびかけていた。
おまけに幼児退行寸前だ。
そして冷静な彼女の一部は、ホルンはこの姿形の奏者に合わせて作られた楽器なのだと。
コッキーはホルンなど吹いた事などない、でも今は素晴らしい演奏ができる喜びに打ち震える。
吸い込まれるようにマウスピースに唇を当てた、何か得体の知れない力が体の中に入ってくる。
力が漲り静かにホルンの演奏を始める、落ち着いた温かい音が鳴り響く、それは朝焼けのような雄大で美しい曲だ。
コッキーの周囲に光の玉が集まり始める、それはやがて小さな人の姿をとり始めた、コッキーがおとぎ話で聞いた妖精そのものの姿をしていた。
コッキーの瞳が微笑む、それは蝶や羽虫の様な羽根を持った美しい妖精達だった。
「へへ、やっと会えましたね」
美しい妖精達は聞き取れぬ言葉でお喋りしながら、コッキーの髪に触ったり耳を引っ張り遊び始める。
やがて右側で音がする、それはあの黒い像が動き始めた音だ、その黒い像は上半身を起こし立ち上がろうとしている。
コッキーが再びベルサーレを見る、彼女は先程からまったく体も表情も動いていない、ただ目だけが狂気の色を帯びている。
「ベルさん?」
その心の呼びかけは届かない。
ベルサーレは体を動かす事ができず、コッキーの演奏をまともに聞くことになった、それははたして音楽なのだろうか?
その曲は理解しがたい音程とコードで構成されていた、ベルも音楽に詳しいわけではないが、名門の令嬢として最低限の教養は叩き込まれていた。
やがてコッキーの周囲に光の歪みが幾つも生まれる、向こう側の背景が歪んで見えるような歪みだ、ベルは水を入れた金魚鉢を連想した。
その音楽からは脳をかき混ぜられるような不快感と、不協和音の中に怖ろしい法則性が潜んでいる事を理解した、
彼女の並外れた直感力がその法則の意味を理解できた時、我が身と心の破滅だと告げている。
それは理屈ではなかった。
「考えちゃだめ!」
別の事に意識を向ける、その時左側の石の台座の上に変化が現れる。
台座に半分埋め込まれたように安置されていた黒い女神像が起き上がろうとしている。
やがて黒い女神は立ち上がると真っ直ぐ歩き始めた、歩き始めた女神像を目で追うことしかできない。
女神像は壁に到達し壁の窪みにしっかりとはまり込んだ、そしてそのまま壁に沈み込んでいく。
女神像が通過した後の窪みは白い光に満たされていた、いや窪みではなく穴になっているのかもしれない。
そこでやっと狂気のホルンの演奏が止まる、それと同時にベルの制御を外れていた力が戻り初めた、再び体を動かす事ができるようになったが、ベルはその光に満たされた穴から目を逸らす事ができなかった。
のろのろとベルは数歩前に出る、そして黒い女神が去った壁に向き直った、そして魅入られたように穴に向って歩き始める、
ベルサーレは見かけによらず強靭な精神の持ち主だったが彼女の心は疲れ果て抵抗力を失っていた。
彼女が近づくに連れてその穴は変形し人の形をとり始めた、その形は人の女性の輪郭に近づいてゆく、しだいにベルの為に初めから用意されていたとしか思えない形に変化した。
その穴をくぐり抜け向こう側に行きたいと言う強い衝動に塗りつぶされていく、遠くで彼女の理性が抵抗していた、だがそれも抵抗虚しく消えてゆく。
グラディウスを捨てた、小間使いの服を脱ぎ捨て総てを脱ぎ捨てる、そして裸になってしまった。
そのまま自分と同じ形をした光に満たされた穴に向って進む。
穴にピッタリとはまった彼女は大きな満足を得た、そのまま穴をくぐり抜けるト全身を快感が走った、
光の中で何か大きな何かに包まれ肉体が溶けていくように感じた、不愉快な物ではなく満たされた平穏の中に沈む、やがての意識も溶けて消えていった。
コッキーは無意識に演奏を止めホルンを台座に戻す、その瞬間に左の肩の上に焼け付くような痛みを感じた、思わずそこを見るとホルンの形をした痣ができていた。
不思議と朦朧とした意識のなかでそれを自然に受け入れていた。
いつのまにか妖精達も姿を消している。
「妖精さんさよならです」
するとコッキーの眼の前にいたベルサーレが動き始めた、すでに彼女の瞳からは恐怖の色が去っていたが、そのまま黒い女神像を追うように壁に向って進む。
やがてベルサーレの体に変化が現れる、彼女の体が引き伸ばされ変形していく、頭が逆円錐形に変わっていった。
それは黒い女神像にそっくりだ、コッキーはそれに衝撃を受けた。
「ひっ!!ベルさん!?これは幻ですか?」
彼女は黒い女神像と全く同じ姿形に変わっていた、そして次々に服を脱ぎ捨て、最後に下着までも脱ぎ捨て全裸になってしった。
そのままフラフラと黒い像が通り抜けた穴に向って進む、彼女の体はその穴にピッタリと嵌まる、そのまま穴をくぐり抜け光の中に消えて行ってしまった。
「ベルさん!?」
あわててコッキーも壁に向かって走り寄ろうとしたが体が思い通りに動かない。
「女神様がお戻りになる前に行かないと」
唐突にそんな思いが浮かんだ、コッキーも数歩前に進む、いつのまにかベルサーレが通り抜けた光の穴に向き直っていた。
周囲の床に彼女が脱ぎ捨てた服と剣が乱雑に散らばっている。
そして彼女と同じように魅入られたように穴に向って進む、穴は次第に変化し人の形をとりはじめた、それはやがてコッキーの輪郭その物となった。
コッキーの心はその穴をくぐり抜けたいと言う慾望に塗りつぶされ、何も考える事ができなくなっる、平べったい愛用のバックパックを捨てる、総ての服を脱ぎ捨て全裸になる、そして自分と同じ形をした光に満たされた穴に向って進んだ。
喜びと期待に震えながら。
ベルが動き始める、すでに彼女の瞳からは恐怖の色が去っていた、そのまま黒い女神像を追うように壁に向って歩いて行く。
そのベルサーレの体に変化が現れ始めた、彼女の体が引き伸ばされ変形していく、そして頭が逆円錐形に変わっていく。
それは黒い女神像にそっくりだった。
コッキーはそれに衝撃を感じた。
「ひっ!!ベルさん!?これは幻ですか?」
黒い像と全く同じ姿形に変わってしまった、そして次々に服を脱ぎ捨て、最後に下着までも脱ぎ捨てて全裸になってしまう。
そのままフラフラと黒い像が通り抜けた穴に向って進む、彼女の体はその穴にピッタリと嵌まる、そのまま穴をくぐり抜け光の中に消えて行ってしまった。
「ベルさん!?」
あわててコッキーも壁に向かって走り寄ろうとしたが体が思い通りに動かない。
「女神様がお戻りになる前に行かないと」
唐突にそんな思いが浮かぶ、コッキーも数歩前に進んだ、いつのまにかベルサーレが通り抜けた光の穴に向き直っていた。
周囲の床に彼女が脱ぎ捨てた服と剣が乱雑に散らばっている。
そして彼女と同じように魅入られたように穴に向って進む、穴は次第に変化し人の形をとりはじめた、それはやがてコッキーの輪郭その物となった。
コッキーの心はその穴をくぐり抜けたいと言う慾望に塗りつぶされ、何も考える事ができなくなっる、平べったい愛用のバックパックを捨てる、総ての服を脱ぎ捨て全裸になる、そして自分と同じ形をした光に満たされた穴に向って進んだ。
喜びと期待に震えながら。




