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アマリア魔法学院

街に遊びに出た二人はゲーラの街の見物を始めたが、あっという間に見るものが無くなってしまう。

「コッキーこの街にお城は無いの?」

城塞都市は街を囲む城壁と城が一体化している場合が多いがゲーラには城がない、ベルサーレはテレーゼに詳しいコッキーなら何か知っていると思ったのだ。

「ベルさん街の北の山の上にお城があります」

「見てみたいけどいいかな?」

「北門から外に出ると見えますよ」

二人は北門に向かうと北門から武装した一団が入城してくる、その武装した一団が掲げている軍旗を見るとリネイン伯の紋章だ。


「コッキー、戦いは終わったのかな?」

「よくわかりませんです」

「リネインってゲーラと同じ陣営だったんだね」

「あっ!?そうですね」

リネイン軍は総勢200名程で、十数名ほど負傷している様に見えた。


「もしかして北の城で泊まったのかな?」

「ああ!そうですよねベルさん、それならこの時間に街に入れます」

そのまま北門から城外に出ると、たしかに北の街道沿いの岩山の上に城が築かれていた、北門から一キロ程離れている。

「ベルさん、あっちの丘の上に見えるのが学校の跡なんです」

北西の方向のかなり離れた丘の上に大きな建物が見える、ここから2キロ程度離れていた。


「あそこならすぐ行って戻って来れそうだ、見物したいけどコッキーついてくる?」

「もう何も無いはずですよ?」

「あの学院だっけ?アゼルが精霊魔女アマリアが関わったとか言っていたでしょ、少し興味があるんだ、ゲーラは小さいし見る所が無いからね」

「まあ二時間ぐらいで戻ってこれそうですね」

少しコッキーはベルに呆れているように見えた。


二人はさっそく学院探検に向かうことに決めた。

「よし、おやつを買って行こう」

「ベルさんおやつですか?遠足みたいですね・・」

「何が起きるかわからない、果物とか乾パンでも買っておくのが正解だよ」

「そういう物なのです?」

「そう、備えるのがあたりまえ」


買い出しを終えた二人はゲーラ周辺の農地を縫うように伸びる小道を辿りながら学院の廃墟に向った。

小道は学院のある丘の麓まで続いていたがそこからが大変だ、訪れる者が居ないのか学院の正門に続く道は殆どが消え、整備されておらず道は荒れ放題で森に半ば埋もれている。

「ベルさんまってください」

遅れ気味のコッキーが声をかけてくる。

「ごめんコッキー」

ベルサーレは長い森の生活で鍛え抜かれている、そして神隠し以来超常の力を身に着けた、コッキーがどうしても遅れてしまうのだ。

彼女は立ち止まりコッキーが追いつくのを待つ、ふと僅かな人の気配を感じた。


(誰か近くにいるのか?)

その思いは声にならない。


その時ベルの視界から突然コッキーが消えた。


「あれ!?コッキー!!」

コッキーが消えた近くまで走る。


「コッキーどこだ?」

呼びかけると足元の方から声がする。

「ベルさん穴に落ちましたー」

「コッキー怪我は無い?」



コッキーが落ちた穴の中は真っ暗だった、下に落ち葉や小枝が積もっていたからか怪我は無い、そしていつのまにか薄くて丸い金属の様な物体を握っている事に気がつく。

「無事みたいです、でも真っ暗で良く解りません」

上に向ってさけんだ、木の葉の隙間から僅かに日の光が差し込む。

「穴に落ちた時に思わず掴んでしまったようです、なんでしょう丸い金属なのです、お金ならうれしいです」

コッキーはその丸い金属のメダルを無意識に上着のポケットに入れた。



穴の上ではベルサーレが周辺の地表を調べていた、コッキーが消えた辺りは太い木の根が幾重にも張り巡らされている、その根の隙間に大きな穴があるのを見つけた、その下が雨か地下水で空洞になったのだろう。

上に被っていた小枝や樹の葉を慎重に払いのける、それらが落とし穴を隠す天然の蓋になっている。


「穴を見つけた、待ってて」

「上が明るくなりました」

ベルサーレが巧みに穴の中に下りて、コッキーを下から押し上げ穴の外に出してやった。


「ベルさん身のこなしが軽いし力持ちですね、凄いです!」

「ふふ、ありがとう」

コッキーに続いて彼女も穴から出た、二人はお互いに泥や枯れ葉を落としあった。


「怪我がなくて良かったです、下に枯れ葉や枯れ枝が積もっていたから助かったのです」

「これからは慎重に行こう」

上を見ると丘の頂上も近く学院の壁がそそりたって見える。


「もうすぐ学院だ」

二人は再び丘を昇り始めた。



コッキーは穴に落ちた時に思わず掴んでしまった堅い金属のような物を思い出した、それを上着のポケットから取り出す、それはコインのような丸い金属だが、全面に不思議な文様と記号がレリーフになっていた。

「これはなんでしょうか・・・」


「コッキー入り口まで来たよ!」

コッキーはメダルを上着のポケットに落とし込んで急いで坂を登る。


二人は学院の正門までたどり着いた。

正門の向こう側が学園の広大な敷地になっている、敷地内には幾つもの建物が立ち並び、正門の正面には学院で一番大きな三階建の建物の玄関が見える。


「見てあの石柱に『アマリア魔術学院』と書いてあるよ」

「すごいですベルさん」

「聞きにくい事なんだけど、コッキーは孤児院で文字とか習わなかったの?」

「少し習いましたよ、でも生活に必要な言葉しか習いません、『学院』といったわからない言葉の方が多いのです」

「そういう事なのか・・・」

多少文字の読み書きができても語彙が理解できなければ専門性の高い高度な文章は理解できないのだ。

学院の敷地は雑草で覆われ、木が育ち雑木林の様な有様となっている、かつては美しい芝生に覆われていたのだろうか?


「みてごらん、最近誰かがここに来たみたいだ」

ベルが指し示すのは切り払われた木の小枝だ、誰かが最近ここを通り抜け邪魔になる木の枝を切り払った後の様に見える。


「確かにそう見えますよね?」

敷地内の学院の建造物は二階建てが多い、だが木製の部分が殆ど崩れ落ち屋根と床が無くなっている。


「これは思ったより酷い」

ベルサーレが予想以上の学院の荒廃ぶりに鼻に皺を寄せる。

「はい、私もここまで荒れているとは思いませんでした」


学院で一番大きな建物の正面玄関付近に地下への階段らしき物が見える、階段周辺には朽ちた木材が堆ウズタカく堆積タイセキしている。


その建物の敷地に入り思わず上を見上げる、二階の床も三階の床も屋根も消滅していてテレーゼの蒼い空が見えるだけだ。

ただ石造りの壁だけが荒廃に耐えていた、内乱が始まり40年の歳月の重みを感じさせる。


「中を探検してから帰ろう」

「ちょっと怖いです」

ベルサーレは小型のランタンを取り出し火を付けた。



二人がは石階段を降りると、学院の地下部分は頑丈な石組みの為かその形を良く残している。

「地下は何階まであるんだろう?」

「すみませんです、そこまでは知りません」


階段を下りると真っ直ぐに通路が伸びていた、その両側には倉庫や資料室の様な部屋が並んでいる、木の扉は湿気で腐り崩れ落ちていた、部屋の中には空の書棚や荷物棚だけが雑然と残っていたが、目ぼしいものは総て持ち去られた後のようだ。



「本当に何もありませんね」

「うん、でもこの目で確かめればもうここに来る必要も無くなるんだ、あ、突き当りにまた階段がある」

「地下二階があったんですね」


通路の突き当りに地下二階への長い階段が口を覗かせている、意を決して二人は降りた。

だが階段の一番下の辺りが僅かに明るくなっている。



「まって、少し変だぞ?」

「明かりがあるのですか?」

「僕が先に降りて偵察して来る、コッキーはここで待っていて、合図をしたら降りてきて」


ベルサーレはが階段を先に降りる、その先はまた通路になっておりその先に大きな部屋が見える、その部屋の中に強い光源があり部屋から光が通路に漏れ出していた。

通路を最大限警戒しながら進む、そして大きな部屋に到達した、部屋は20メートル四方で高さが5メートル以上ある大きな正方形の部屋だ、その部屋の壁際中央に光輝く巨大な円形の鏡の様な薄い物体が光を放射していた。


ベルはそれを何処かで見たような気がしたが思い出せない、何かとても重要な事だったはずだが思い出す事ができなかった、その光り輝く物体を暫く観察していたが特に異変は起きない、取り敢えず危険は無いと判断しコッキーを呼んだ。


「コッキーこっちに来ていいよ」

「わかりましたです」


階段を降りたコッキーの足音がしだいに近づいてくる。


「ベルさんこれは一体なんですか!?」

その瞬間、周囲の世界が歪み撓む、そして総ての光が失われた。

ベルサーレはコッキーの叫びを遠くから聞いた様な気がした、だが彼女も直ぐに意識を失う。




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