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詐欺師達

「これが殿下が初めてお稼ぎになった大銀貨3枚と言うわけですね」

三人は『ガゼルの宿』に戻るとさっそくルディガーとベルサーレはアゼルにお説教を食らう。

三人は謀反人としてエルニアを追われている身だ、目立つ行動は避けなければならない。

「金が欲しくなかったと言えば嘘になるが、奴らは俺の剣が並では無いと明らかに疑っていた、

奴らからあのまま逃げたら奴らを増長させ足元を見られる、すまんな二人共、俺はあの場で逃げると言う選択肢は無い、ピッポと女魔術師に釘を指して置きたかったのだ、おかしな動きをしたら容赦無く叩き切る覚悟があるとな」

殿下は弁解を続けるがかなり苦しい言い訳になる、ベルサーレは疑い深そうに口を開いた。

「ルディって田舎芝居の役者みたいにノリノリだったよね、皆んなルディの雰囲気に飲まれていた」

彼女は呑気に笑ってから続ける。

「でもルディの剣が普通の剣じゃないと野次馬にバレたかもしれない」

アゼルはそれに疑問を挟む。

「どうでしょうか?世の中にいる魔術師の殆どは偽物で詐欺師です、貴女も魔術や精霊の話を胡散臭い目で見ていたではありませんか、むしろ手品の仕掛けに失敗したと捉えてくれれば良いのですが」

「剣を扱うものなら解るはずだ、あの大盾がまっぷたつになる時点で可怪しいと思うぞ?」

彼女とアゼルはそれが解っているなら自重しろよと言いたげな目をする。


「なぜ魔術への誤解を解こうとか偽物を取り締まろうとしないんだろう?」

彼女が率直な疑問をアゼルにぶつけた。

「取り締まってもきりが無いのです、そして迷信や詐欺と思わせて置いた方が得な人々がいるのですよ」

「そう思わせておいて魔術を有効活用するわけだなアゼル」

「殿下の振る舞いは最悪の選択ではなかったのかもしれませんが、あまりにも目立ちすぎます、ここはエルニアにも近いので殿下を知っている人間がいないともかぎりません」

「ああ、それは済まなかった」

「とにかくピッポと女魔術師とやらは警戒しましょうか、あとベルですが貴女がお金の事でルディを煽っていたのもあの騒ぎの原因ではありませんかね?」

そこでアゼルは改めてベルサーレに苦言を述べる。

「ルディは僕たちの大将なんだ、大将は遠くをまっすぐ見るのが役割だろ?足元の事は臣下に任せておけば良いんだよ、だから僕を「ベルの言っていることにも一理ありますね、お金の工面は我々でなんとでもいたしますので、あまりお気になされませんように」

アゼルは側によってきたエリザを撫でながら。

「あと、財布で主導権を握りたいとか、負い目を負いたくないとか、男の誇りとか、昔気質の男女の関係のそれだと思いますよ?」

「なにっ!?」

「ドキッ!!」

二人は同時に声を上げる。

「それに傍から見ると貴女はまるで喜んで男に貢いでいる様にしか見えません、ダメな男に際限なく貢ぐ町の女のように」

アゼルは彼女が殿下に買ってやった作りの良いバックパックや予備武器の長剣を指差す。


「いやまて、ダメな男って俺の事なのか!?」

「それだと、ルディは僕のヒモみたいじゃないか?」

ルディガーの拳骨が軽くベルサーレの脳天に落下した、ついでに手荒に彼女の髪をかき乱す。

そして彼は何かを真剣に考えこみ始めた。


ベルサーレは話題の流れを変える事にする。

「えーそんな事より重要な事があるだろ?なぜルディの剣が急に切れる様になったんだ?」

ルディが野盗団を壊滅させた時の違和感、予備の剣を購入した理由と魔剣の変化を改めて指摘した。

「そうだったのですか?私は実戦であの剣がふるわれたのを見たのは今日が初めてでしたので」

「剣を叩き折るのと、剣を切り裂くのとでは手応えが違いすぎるのだ、傍から見ても判りにくいだろうがな」


アゼルは考え込んでいたがふいに顔を上げた。

「魔剣の変化の契機になった何かに思い当たりませんか?」

ルディガーとベルサーレは顔を見合わせた。

「グリンプフィエルの猟犬と戦ってからか、ベル?」

「たしかに、宰相の手勢と戦った時は普通の剣に近かったよね?」

「そうだ鋼鉄の剣を切り裂きはしなかった」


「召喚精霊を精霊変性物質の武器で攻撃して武器が変化するかは不明です、事例が少なすぎますね、少なくとも下位の召喚精霊を精霊変性物質の武器で攻撃した結果変化したと言う話も聞きません」

「アゼル、精霊変性物質の武器は簡単に手に入るの?」

「ベルサーレ嬢、精霊変性物質の武器は希少なのですよ、最低の物でも帝国金貨10枚以上になります、高いものなら帝国金貨1000以上になりますね」

「でも上位精霊の召喚をやれば材料が手にはいるんでしょ?」

「たしかにそうです、しかし上位の精霊召喚師は国家や大貴族達が切札として召し抱えている場合がほとんどで、めったに出物がありません、それに精霊変性物質の武器の殆どは古代の遺跡から出てきた物ばかりなんです、伝承ではかつて精霊達が今より簡単に幽界と現実界を行き来していたと伝えられていましてね」

「だからその時代に作られた武器が多いというわけか」

彼は自分の愛剣をテーブルの上に置き感慨深げに眺めまわす。


「ええ、精霊変性物質の武器の殆どは古代のものです、ルディの剣は剣そのものを依り代に物精を召喚したもので非常に珍しいのですが、何の為にそうしたのか不明です、性能が良くても優秀な剣士が使わなければならない剣より、グリンプフィエルの猟犬のように自律的に任務を遂行する狡猾な殺し屋の方が使い勝手が良いですから、研究者達はなぜ精霊たちが物質界に現れにくくなったか研究しています、簡単に精霊をこちらの世界に呼び出せる方法を模索していますよ」

「あんなのが簡単に現れてはたまった物ではないな」

ルディとベルはグリンプフィエルの猟犬との死闘を思い出した。

「ねえその剣はどのくらいの価値があるの?」

「たしか買値が帝国金貨200枚と聞いています、しかし今のふざけた性能なら帝国金貨500枚を上回ると思いますよ」

「ルディ、その魔剣に名前はあるっけ?」

「『名もなき魔剣』だ」

「名前が無いんだね・・」

「違う『名もなき魔剣』『無銘の魔剣』と呼ばれている」

ルディガーはそれを強く否定する。

「殿下、今日の騒ぎでこの剣の事を疑う者が居るかもしれません」

「すでに二人程から目を付けられている」


「そうだ魔剣で思い出した、中古武器屋に気になった物があったから買ってきたんだ、アゼルに見てもらいたいと思って」

「おお、あれか・・色々あったおかげで忘れていたぞ」

魔剣がらみでアゼルは興味を刺激される。

「それをみせてもらえますか?」

彼女がテーブルの上に黒いダガーを置く、アゼルはそれを眺め観察する。


「はて精霊変性物質でも無いようですが・・・お二人そろって気になると、わかりました調べてみるので預かりましょう」

二人が頷くいたのでアゼルはダガーを布に包むと懐にしまう。



「さて明日はロバを売ります、その後でこれからの旅に必要な物を揃えます、変装用の衣服も揃えますのでお二人にも来てもらいますよ」

「変装するのか?」

「ええ、コステロの時に適当に偽名を名乗りましたが、もうすこし自然なものにします」

「商人の若旦那と番頭と小間使いの娘で行きましょう」

「僕が小間使いになるの?」

「いいですか?エルニアの狩猟民の娘だから短パンツに長ブーツで通用するのです、これからの文明地域では目立ちすぎるのですよ」

ベルサーレは不満だが口を閉ざしてしまう。


「明日早いので、食事を取り早めに寝ましょう」


三人は宿の下の食堂に降りていった。






三人の宿から離れた、ラーゼ城市の西門近くの安宿屋『飲んだくれドワーフ』の一階の酒場は傭兵や旅の行商らしき者達でにぎわっている。

何者かが禁制品の麻薬を持ち込んでいるのか、奇妙にまとわりつくような甘い煙が漂っている。

だがそれを咎める者も止める者もいない。

それが暗い獣油ランプの匂いと入り混じり不快な匂いが立ち込めていた。

だがここにいる者達にはそれが当たりまえの空気となっていた。

戦乱のテレーゼには多くの流れ者がやってくる、そしてこの宿屋は最底辺ではない、まだ人生を捨て切っていない者が多いのだから。

テレーゼは『流れ者が行きつく先』と言われている、そして生きて出て行く者は少ない。


その奥のテーブルに昼間のピッポと女魔術師が向かいあって食事していた。

「彼奴のおかげでテオは捕まるし、盾は割られて大銀貨3枚持っていかれたけど?」


「テヘペロさん、これは投資なのです、久しぶりに大きな獲物が現れたのですぞ?」

「数年は遊んで暮らせるぐらいの獲物よね」


「ところであれは本当に精霊変性物質の武器なのですか?」


「それは間違いは無いわ、それもかなりの業物、最低でも帝国金貨200枚以上は行くわよ?」


「ケチな商売は暫くは止めてあの剣を狙おうぞ、ヒヒッ」

「テオはどうしようか?」

「奴の腕はそれなりの物ですぞ、まだまだ捨てるには惜しいですな」

「アイツに何時もの様に目印を付けたからね、でも数日でそれも消えるわよ?」

ピッポ達は一昨日にレーゼに来たばかりだった、彼らは大陸中を適当に稼ぎながら騒ぎになる前に次の町に移動する。

儲け話に在りつけば暫くは遊び暮らし、金が無くなればまた裏仕事をする、そしていつか来る破滅の時まで彼らの旅は終わらない。


テヘペロと呼ばれた女魔術師が椅子から立ち上がり、給仕の老女を呼びつけた。

彼女はこの場には相応しくない美貌と目の光から高い知性すら感じさせるが、退廃し饐えた空気を纏っていた、彼女がなぜここまで身を持ち崩したのかは仲間も知らない。

彼女の豊満な肉体は、不摂生からかその腹と尻が少々だらしなくなっていたが、それがむしろ彼女の魅力を引き立てていた。

酒場の男たちはそんな彼女に好色な視線を無遠慮に投げかける、だがテヘペロはそれを知ってか知らずか涼しい顔をして受け流している。

テヘペロは立ち上がり叫んだ。

「婆さんエールを大ジョッキ二つ持ってきて」

椅子に座ったテヘペロはピッポに目線を向ける。

「なぜだろうね、私はねあの二人が妙にいけ好かないんだよ」


「んん?そうなのですか?あの男とか貴女の好みかと思いましたぞ?キッヒヒッ」

テヘペロピッポは不快な笑い声を上げた。




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