たとえ姿が見えなくても
ファントム「遊びにきた」
幻「………」
ある日のこと、突然のことだった。
友達の足が消えていた。
幻「痛い?」
ファントム「全然、ていうか足の感覚ないし」
幻「本当?」
ファントム「気にする必要もないよ。困ることもないだろうし」
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次に会った時は、もっと消えてた。
ファントム「サッカーでもやろうよ」
幻「腰から下がないんだからできないでしょ。ていうか、どうやって立ってるの」
幻「病院とか、行ったの?」
ファントム「またその話か。病名も原因もさっぱりだってさ」
幻「……そう」
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また次に会った時には、もう首しかなかった。
ファントム「やっほ」
幻「………大丈夫なの?」
ファントム「至って元気です」
ファントム「あはは、この状態で外で歩くとさ、すれ違う奴らみんなビビるんだ、反応がすごく面白い。ま、こんな見た目だし仕方がないよね。……君だけだよ、まだ私と一緒に居てくれるのは」
幻「……私だって、貴方以外要らないよ」
ファントム「嘘つけ。君、好きな人居るくせに」
幻「ヴィエ゛ッ!? いないよそんなの! ばーかばーか!!」
ファントム「うるせー! バレバレなんだよ! あーほあーほ!!」
幻「うるさいうるさい!! 私には貴方だけ居ればいいんだ!! ………行かないでよ……」
ファントム「……バカだなぁ、私はどこにも行かないよ」
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そして
幻「………嘘つき」
彼女は私を置いていった。
その日から、友達はいなくなった。
だから、私が居る必要もなくなった。
彼女を追いかけるために、この世から発つ。
そのはずだった。
幻「うぐ……!?」
強い風が吹いた、私の体は軽いから簡単に転がされてしまった。
幻「……なんだ、ずっと近くに居てくれたんだ」
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幻「……よし、今日は彼に告白するぞ! あぁ、でも断られたらどうしよう……ぅぅ……」
とんっ
幻「……うん、行ってくる。頑張るから」
行ってらっしゃい、まぁ頑張りなよ