20/21話
その中の一組の男女を見たジークは更に混乱した。
「え・・?隊長?・・・大巫女様?」
三組の男女の内の一組は、ジークが見覚えのある二人だった。
「ジーク、お前の現状の説明はいるか?」
意地悪そうに笑って隊長と呼ばれた男が声を掛けた。
「トキ、からかうのはよしなさい。ジーク、落ち着いて私の話を聞けますか?」
トキ隊長を軽く諫めて、大巫女様と呼ばれた女性がジークに話しかけた。声を掛けられたジークは跪き、深くお辞儀をした。
「まぁまぁ、そんなに堅苦しくしなくていいのですよ。ややこしい話ですから、楽にしなさい。」
そう言われたジークは立ち上がってトキと大巫女を見比べた。
「長い話になります。まずは私たちの自己紹介からしましょうか。お前が知っている隊長と大巫女である私ですが・・・」
一瞬言葉を濁した大巫女は、大きく息を吐いてから続きを話し始めた。
「私はティンファンの女神で、トキは私の伴侶と呼ばれる存在なのです。」
突然の話に言葉を失っているジークに赤髪の女性が自己紹介をした。
「うちはアグニの女神でぇ、こっちは伴侶のダナン。よろしく~。」
最後は銀髪の女性が自己紹介をした。
「私はフィヨンの女神ですわ。ご存じの通り私の伴侶はローグのフィンですの。・・・そしてその子は私の娘ですわ。」
最後の女性が自己紹介をした後、ロウナが申し訳なさそうにジークを見た。
「僕・・・いや、私、ジークになんて言えばいいのか・・・」
しどろもどろになるロウナにフィヨンの女神が近寄って頭を撫でた。
「ごめんなさいね。私から説明させていただきますわ。貴方も聞いていますでしょう?私の娘達の伴侶も女神の伴侶と同じ加護が受けられるのですわ。そして、貴方は私の娘の伴侶に選ばれましたの。」
戸惑ってロウナを見つめるジークに、フィヨンの女神は更に続けた。
「拒否権はあるようで無いと思っていただけますかしら?伴侶の条件として、娘達の希望に応答する事というものがあるのですが、貴方はお返事をしてしまいしたわよね?・・・つまり、そう言う事ですの。」
悩むように顔を歪めたジークにトキが意地悪そうな顔を向けた。
「理解できてるか?姫さんが一緒にいて欲しいと言った事に対して、お前は一緒にいると答えただろう?・・・契約成立だ。ようこそ俺達の世界へ。」
両手を広げたトキにようやく事態を把握したジークは慌てた。
「え、この前モーラが言っていた成人ってやつか?」
小さく呟くと、ロウナの顔を見つめた。
「その姿が、成人したロウナの姿・・・なのか?」
胸の前で手を組み俯いているロウナは、小さく頷いた。
「そうか、いつの間にか俺もロウナと一緒に居たいと思う様になっていたんだな。・・・不思議なものだなぁ。もしもこの気持ちがロウナの力だとしても、俺は全く不愉快に感じていないから気にする事は無い。とっくに俺の気持ちはロウナのものだよ。」
ジークはロウナの頭を撫でた後、額に軽くキスをした。それを見た女神たちは嬉しそうにため息を吐いた。
「まぁ・・・それで、ご理解頂けた所でお詫びをしないといけないことが御座いますわ。今回の騒動は私達女神の兄神である邪神の仕業でしたの。遥か昔、私達と伴侶達の力を合わせて撃退したのですが、神の世界に帰すことができず、ウラキア山脈に封印したのが過ちでしたわ。こんなことになってしまうなんて・・・」
フィヨンの女神が悔やむように胸を抑えた。