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2/21

2/21話

 月明かりが照らす中を青年は警備兵をすり抜け、影から影へとしなやかに移動していた。その姿は昼間とは違う黒装束に覆面といういで立ちだった。

「予想通りか、夜でも警備は減らないな。」

そう嘯いてはいるものの、青年の身のこなしは素晴らしく、警備兵が彼に気づくことは無かった。塔まで辿り着いた青年は周囲を警戒しながら、メイドが出入りしていた扉に向かった。塔には最上階辺りにしか窓は無く、出入り口はこの扉一つであることは昼の間に確認済みだった。扉を見て青年が小さく舌打ちをした。その扉の錠は特殊な作りになっていた。青年は一旦扉から離れ、見回りの隙間で開錠する為の準備をした。二度目の見回りをやり過ごした後、青年が扉に向かった。青年はこの手の特殊錠を知っていたため、ものの数秒で青年は塔内へ吸い込まれていった。塔内部は明かりが設置されておらず、漆黒の闇に包まれていた。

「ん?この錠内側からも掛けられるのか・・・・時間稼ぎに施錠しておくか。」

通常の人間では慣れるまでに相当の時間がかかるであろう暗闇の中で、青年はすぐさま動き出し扉を施錠した。扉に背を向けて内部を窺うと、そこにはただ階段だけが上へと伸びていた。

「財宝の蔵ってわけではなさそうだな。・・・やっぱアレか?アレなのか。」

警戒しながら、青年は階段を音もなく駆け上がった。しかし途中に部屋が無いうえに警備兵すら見当たらず、程なくして最上階へと到達した。特殊錠の扉、階段のみの塔、そして最上階の部屋、状況から鑑みて青年は自分の目的はここであると確信した。最上階の部屋の扉にも特殊錠が施されていたが、まるで鍵など掛かっていないかのように青年は部屋へと入っていった。部屋の中は窓から差し込む月明かりに照らされていた。窓際近くに設置されたベッドに人影を確認すると、青年は小さくため息を吐いた。足音を立てずに近づくと、そこには顔半分を革のマスクで覆われた少女が横たわっていた。

「これが、ヘスティアの宝か・・・」

青年が手を伸ばそうとした瞬間、少女の目が開いた。青年の目と少女の目が合うと同時に、青年は首筋に冷たい感触を覚えた。

「姫に手を出すな。ローグの刺客か?」

青年の背後から首にナイフを当てながら、部屋に潜んでいた者が問う。目を覚ました少女が心配そうに二人を見つめる。

「俺はただの盗賊さ。ヘスティアに珍しい宝があるって聞いたから、一番怪しいところに来たってわけだ。」

両手を上げながら、青年が問いに答えた。

「そうか、残念だったな、盗賊。私が動くと警備兵が周囲を取り囲む手筈になっている。ここの警備は堅牢だ。逃げられないぞ。」

青年はこの者がヘスティアの兵ではなく、この少女の護衛者であることに気づいた。声から察するに相手は女性である。意を決した青年が瞬時に動いた。

「なっ!」

その動きを護衛者は止める事が出来ず、逆に捉えられてしまった。少女が慌てて青年の腕に縋り付こうとするが、青年は女性を拘束したまま器用に避けた。

「悪いね、お姉さん。俺、天才だから。・・・あんたら、ヘスティアの者じゃないだろ?まとめて盗んでやるよ。」

「に、逃げられないと言っているだろう。」

なおも抵抗しようとする女性の口に青年が布を当てると、女性は急におとなしくなった。女性の異変に少女が声にならない声を上げた。

「そのマスク、声が出せないようにするための物だったのか。大丈夫だ、お姉さんにはちょっと寝てもらっただけだ。ここから逃げるのに暴れられちゃ困るからね。君もおとなしく盗まれてくれないかな?」

少女の顔を覗き込み、青年が話しかける。だが、青年の耳には塔に侵入する警備兵の足音が届いていた。青年は部屋の窓に近づき、周辺を窺った。

「さて、二人担いでどうやってここから出ましょうかと・・・」

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