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19/21

19/21話

 城門を出て数日、二人はティンファンまで残り半分の辺りにある岩石地帯に差し掛かった。遮る物の無い砂漠で唯一休息を取れる場所でもあったが、ジークの想定通り既にヘスティアの兵士が待ち構えていた。この場所はジークが最も得意とする場所だった。ジークは押し寄せる兵士を最低限の動作で薙ぎ払い直線的に進んでいった。しかし圧倒的多数にジークは徐々に劣勢になっていった。進む速度が遅くなり、次第に取り囲まれるような形になっていった。ジークの足が止まり、膝を付いたその時、ジークを中心に眩い光が閃いた。

『近寄るな!』

光の中から鋭い声が響くと、それに呼応するように取り囲んでいた兵士達が吹き飛んでいった。第二陣の兵士達が近寄ろうとしたが、光の壁に阻まれているかのように弾き飛ばされて近寄れなかった。その光の中では、意識が遠のきそうになっていたジークが眩しさに眉をひそめていた。徐々に収まる光に薄っすら目を開けると、ロウナによく似た女性が自分を見下ろしていた。彼女はジークの傍に座り込んで必死に何かを言っているようだった。

「ジーク、ダメだ。僕はまだ君と一緒にいたい。・・・違う、僕はずっと君と一緒にいたいと思ってしまった。お願いだ、僕に応えて欲しい。」

今にも泣き出しそうなその声にジークは手を伸ばした。彼女はそんなジークを抱き寄せて何度も一緒にいたいと繰り返していた。

「そんな悲しそうな声をだすなよ。・・・大丈夫だから、一緒にいてやるから。」

ジークがそう呟いた瞬間、再び二人は光に包まれた。光の中でジークは体が軽くなり、活力が戻ってくるのを感じていた。更に感覚が研ぎ澄まされ、兵士達の後方にいる指揮官であるヘスティアの領主までも感知する事が出来た。咄嗟にジークは彼女を背負い、指揮官の元へ疾走した。光が兵士達を押し退け、彼らに邪魔される事無く指揮官の面前に到達したジークは、流れるような動作で何の躊躇もなく領主に攻撃を仕掛けた。ジークの攻撃は驚くほどすんなりと領主に届き、彼はゆっくりと膝と着いた。仰向けに倒れこむ領主の体から黒い靄のようなものが出ていくのが見えた。黒い靄が消えると同時に、ヘスティアの兵士達は全員脱力したように膝をついた。

 黒い靄が飛び去った先では、三組の男女がそれを待ち構えていた。人の形になった黒い靄に銀髪の女性が声を掛けた。

「お兄様、お目覚めになったのならさっさとお帰りになれば宜しかったのに、うちの子達に何をしてくださっているのかしら?まぁ彼の信仰心が薄れていたことは確か・・・ではありましたけれど。それにしても魂ごと乗っ取るだなんて、酷過ぎますわ。」

お兄様と呼ばれた黒い人影は首を傾げるような仕草をした。

「あ~、そう怒るなよ。ちょっとしたお遊びじゃないか。」

その言葉に赤髪の女性が口を開いた。

「お遊び?前も同じ事をして妹であるうちらに封じられたのは誰?ねぇ、邪神の兄貴!」

更に黒髪の女性が追い打ちを掛けた。

「兄さま、うちの子、死にかけたのですよ?そんな事をして、許されるとでも、思っているのですか?」

三人の女性から詰め寄られて、邪神の兄神は後退りした。

「あ、あ、その、か、帰るよ・・・ちょっとしたいたずらじゃないか・・・」

言い訳をしようとした彼は、全員からにらまれ後退りしながら上空へと消え去った。邪神が消え去った場所をしばらく眺めていた三人の女性は大きくため息を吐いた。それまで後ろで見守っていた男性達が彼女達に近づき、労う様に寄り添った。三組の男女はお互いに笑みを交わすと、視線を茫然と立ちすくんでいる二人に移した。

 指揮官が倒れ兵士達が放心状態になっている中、ジークと彼女はお互いを見つめたまま固まっていた。

「ロ・・ウナ?」

目の前の女性にジークはそう問いかけた。目の前の女性はその問いかけに、戸惑ったように頷いた。確かに彼女にはロウナの面影があった。ただただ戸惑っている二人の傍に三組の男女が突然現れた。

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