お部屋のおはなし
蕾は今日もテキパキと働いていた。
北館に行ったと思えば南館に現れ、西館の掃除を終わらせると、友人を手伝うために東館へ。
宿中を縦横無尽に歩き回り、休む暇もないほど働いていた。
特別何かがある訳ではない。宴会の予約もなければ、予約客も少なく、むしろいつもよりも落ち着いているくらいだ。
蕾が休まずに働いている理由はただ一つ。
あれから、藍はことあるごとに蕾を呼び出しては考え直して欲しい、簡単に決めてはいけない、と蕾を諭し続けた。
しかし、それも頻度が増えれば増えるほど、どこか煩わしく感じてしまい、いつも藍の後ろをついて回っていた蕾だったが、今はそれを避けるようになっていた。
「ねぇ、椿。蕾を見なかったかしら?」
「いえ。見てません」
「そう。もし見かけたら、私が探していたと伝えてくれるかしら」
「分かりました」
藍はニコリと笑って、椿の元を離れていく。
その背中がどこか寂しそうに見えて、何となく目が離せずにいると椿の後ろから突然声がした。
振り向いた先にいたのは薺だった。
「で、ほんとのところはどこにいるの、蕾は」
「知らないよ。僕に聞かないで」
「安心しなよ、椿。俺は蕾の味方だからさ」
そう言いながら薺は椿の肩に手を掛けようとしたが、その手が触れる前に椿はするりとそれを躱す。
そして、一歩身を引いた。
「僕はどっちの味方でも敵でもないよ。薺と一緒にしないで」
薺の顔はいつも通りの笑顔が貼りつけらていたけれど、どこか不自然なその表情は、長年共にいた椿からしてみれば僅かながら苛立ちが含まれていることが分かった。
「薺、なんか変だよ。藍さんと喧嘩でもしたの?」
「してないよ」
薺はへらりと笑ってみせると、藍が歩いていった廊下の先に目を向ける。
「ただ、ほっといてあげてればいいのにって思うだけ」
その虚ろな瞳が何を意味しているのか、椿にはまだ分からない。
しかし、自分の勘がこれは関わらない方が懸命だと言っている。椿は自分の直感を信じ、「それじゃ、僕は行くから」と言い残して足早にその場を後にした。
椿が向かうは蕾のところ。境目ノ宿の端の端、客も従業員もほとんど来ない倉庫裏の木陰だ。
最近の蕾はお昼休憩になると決まってそこにいた。
「まったく。いつもここにいるんだから、見つかりたくないのか見つかりたいんだか分からないね」
「椿…」
石の上に座る蕾の隣に立ち、椿は目を合わせずに話を始めた。
「藍さんが探してたよ」
蕾は答えない。
「あと、薺が蕾の味方だとかなとか言ってた」
「味方?」
椿は「気にしなくていいよ」と言うが、蕾は気まずそうに俯く。その様子を見て椿は小さく溜め息をついた。
「藍さんって昔からああなんだよ。蕾、初めてここに来た時、入り口で藍さんに会ったでしょ?」
蕾が肯いたのを確認して、椿は話を続けた。
「藍さんって仕事の合間によくあそこで見張ってるの。新人が予約帳に名前を書かないように。僕の時もそうだった」
蕾はふと、初めて境目ノ宿に来た時のことを思い出し椿の方に目を向ける。すると、椿もこちらを見下ろしていて目が合った。
椿はそっと蕾の横に座る。
歪な形をした石の上は二人が背中合わせのように座るしかなく、顔は見えないが背中から体温が直に感じられた。
「僕が宿帳に名前を書こうとした時、藍さんは僕を止めて死にたいの?って聞いた。だから僕はどっちでもいいですって答えた」
椿の声は淡々としていて、まるで他人の話をしているかのように言葉を続ける。
「僕は本当にどっちでも良かったんだ。人手が足りないなら働くし、そうじゃないなら客になるって言ったの。そうしたら女将さんが、あんたは不合格だって。だから僕は今、こうして働かされてるって訳」
「不合格?合格じゃなくて?」
「どういう意味かは僕も分からないよ。でも、確かに女将さんはそう言った」
しばしの沈黙が流れる。
冷たい風が音を立てて吹いた。
「椿は、年季が明けたらどうするの」
言った後ですぐに後悔した。
これはここでは聞いてはいけないタブーだ。
ハッとしてすぐさま発言を撤回しようと振り向いたが、いつもなら呆れて怒る椿が今日は真剣な表情で空を見つめ、口を開いた。
「僕はここに残るよ。だって、あっちに戻る理由ないもん」
蕾の目が大きく見開かれる。
悲しい気持ちが溢れ、胸がぎゅっと締め付けられた。
「勘違いしないでね。僕は別にあっちで何かあったからとかじゃないから」
「うん」
「蕾も何となく分かるでしょ?ここの生活に慣れたら、わざわざ向こうに帰らなくてもって思う気持ち」
「うん。分かるよ。ここはすごく居心地がいいもんね」
二人はまた背中合わせとなり、しばらくどちらも黙っていた。
風は冷たく、石の腰掛けはあまりにも固い。
しかし、蕾と椿は背中から感じられるお互いの温度がとても心地よかった。
「藍さんの元気がないからそろそろ避けるのはやめてあげて欲しい。蕾の正直な気持ちを言えばいいと思うよ。藍さんも、きっと分かってくれると思う。ここで働いてる人は皆、この場所が好きなんだから」
「うん。分かった」
椿の言葉の通り、蕾は今日の仕事を終えると従業員の控室で藍を待っていた。
友人たちが蕾と軽い挨拶を交わし部屋から出ていく姿を見送った後も蕾はずっと待っていた。
そうして外が暗くなり、もう誰も控室にいなくなった時間になってようやく、その人は現れたのだ。
「どうしたの?蕾。こんな遅くまで。何かあったの?」
「藍さんを待ってたんです」
藍はすぐに何かを察してニコリと笑うと「待たせてしまってごめんなさい」と言いながら蕾の向かいの席に腰掛けた。
「それで、どうしたの?」
さっきまでの威勢の良さはどこへ行ったのか。
いざその時になると、蕾は気まずそうに宙に視線を逸らせる。
何から話せばいいのか、何を話したらいいのか分からなくて言葉に詰まっていたが、藍の顔が目に入った時、自然と言葉が出てきた。
「今まで、藍さんを避けてしまってすみませんでした」
藍にとってもそれは想定外の言葉だった。あまりに驚いたので、ニ、三度瞬きをする。
蕾は不安げに藍の様子を伺っては、目が合いそうになると慌てて目線を逸らした。
その姿がまるで親に怒られた子供のようで、藍にとっては可愛くて思えた。しかし、それを口にするのはやめて代わりにニコリと笑ったのだ。
「私も。追いかけ回すようなことをしてごめんなさい」
蕾は首を横に振る。
そうして顔を上げ、ようやく藍と目を合わせた。
藍のいつもと変わらない笑顔に胸をなでおろす。
「藍さん。あの私は、その…」
緊張からまた言葉が詰まってしまった。
大丈夫。ただ自分の正直な気持ちを話すだけだ。藍さんならきっと分かってくれると言い聞かせる。
藍も蕾の緊張をほぐすように柔らかく微笑み、ちゃんと聞いていると言わんばかりに相槌を打った。
「まだはっきりと決めた訳じゃないんですけど、私は…。…私はここが好きだから。藍さんや、椿や薺さん達ともっと一緒にいたいから。だから、ここに残りたいって…」
藍ならきっと分かってくれる。いつもみたいに笑って「そう、分かったわ」と言ってくれるはず、そう思っていた。
「ダメよ」
蕾の言葉を遮るように、ぴしゃりと藍は言い放った。
「え…」
「『ここに残りたい』は『死にたい』と同じことよ。分かっているの?」
思っていた答えとは正反対の答えに蕾は言葉を失ってしまった。
蕾の戸惑う表情を見て藍は言葉を続けた。
「蕾は、死にたい訳ではないのでしょう?」
「わ、私は…」
藍の顔がいつになく真剣で、目には何かを訴えかけるような強い想いが込められていた。
それに圧倒され、蕾は何も言えないままただ藍を見つめることしかできない。
「聞いて、蕾。あなたはまだ生きている。これから楽しいことがたくさん待っているの。あなたの未来は可能性に満ち溢れているわ。ここに残るということは、それらのことを自ら手放してしまうことになるのよ。本当にいいの?」
向こうでの生活とここでの生活のことが頭の中を駆け巡る。
二つの世界での記憶は幸せなものも、苦しいものもある。
それらを天秤にかけ、蕾が出した結論は「分かりません」だった。
「ダメよ」
「…え?」
「分からない、はもう許されないわ」
蕾が言葉の意味を紐解き、思考を巡らせた。しかし何も出てこない。
そんな蕾を見て、藍は畳み掛けるように言葉を続けた。
「この生活が終わりを告げるのは明日かもしれない。もしかしたらこの部屋を出た直後かもしれない。あなた達は今、そういう生死の境にいるの。ここは決していい場所なんかじゃないわ。あなたは現実に目を向けなくてはいけないのよ」
蕾は俯く。藍の目を、そして現実を直視することができなかったからだ。
藍の言葉に返す言葉が見つからない。
かと言って、今この場で自分の答えを決めることもできない。
しかし藍は、蕾に向けた言葉の刃を納める気はさらさらないようだ。
藍が続けて口を開こうとしたその時だった。
控室のドアが開かれ、二人がそちらに同時に目を向ける。
「なぁんだ、まだ残ってたの?蕾」
それは薺だった。
二人の様子など意にも介さないように、無遠慮に部屋に入ってきたかと思うと、蕾のすぐ横で立ち止まる。
「ほら蕾。もう帰ろう。明日も早いんだろ?」
咄嗟に反応できず、薺を見上げたまま固まっている蕾に薺は「ほら早く」と再度促す。
蕾は言われるがまま立ち上がって、藍の方に目を向けた。
藍がその視線に気づくと、いつものように微笑みで返す。
しかし、蕾は何も言葉を掛けることはできずに薺について行くのみだった。
「それじゃあ藍さん。お先に失礼しますね」
部屋を出る直前、薺は振り向いて笑顔で藍と目を合わせる。
藍の「ええ」という返事を最後に、扉はぴしゃりと閉められた。
「蕾。部屋まで送っていってあげるよ。ほら、おいで」
薺は蕾の一歩先を歩き、蕾はそれについて歩く。
部屋に近づくにつれて、蕾は藍との会話を思い出していた。
小骨が刺さったような、ちょっとした違和感があってそれがどうにも納得いかない。
静かな廊下に、薺の明るい声が響く。
「そういえば蕾。最近はどんな仕事してたの?俺達、会うの結構久々じゃない?」
その言葉にハッとした。
「あの時、あなた達って言ってた…」
「ん?」
薺が立ち止まり、蕾の方は振り返る。
しかし、蕾はそれに気付かないくらいブツブツと独り言を言い続けた。
「どうして“私達”じゃなかったんだろう。…ただの言い間違え?違う。そんな感じじゃなかった。それに…」
「ストップストップ。蕾、話が全然見えてこないよ。どうしたの?」
「薺さんは芹様と付き合ってる。そうですよね?」
突然薺に目を向けた蕾が核心を持った声で言葉を放つ。
驚き、目を丸くした薺だったが怒った様子はなく肯定も否定もせずに「椿から聞いたの?」と問うた。
「いいえ」
「じゃあどうして?」
「この前芹様のことを“芹”って呼んでたので」
「なるほどね」
「それに、多分椿は薺さんと芹様のこと知らないと思いますよ」
「え?そんな訳ないでしょ。俺達同じ部屋だし、俺いつも抜け出してるんだよ?」
「だって椿、薺さんの恋人は藍さんだと思ってますもん」
薺は腰に手を当て、大きくため息をついた。
「で、蕾は結局何が分かったの?」
「え?」
「さっき藍さんがどうのって言ってたじゃん」
蕾は言葉を吟味するように、おずおずと話を始めた。
「藍さんが、本当は人間じゃないんじゃないかと思ったんです」
「…なるほどね」
「なるほどねって、じゃあやっぱりそうなんですか?」
「いや、俺は知らないけど。蕾はどうしてそう思ったの?」
静まり返った廊下で、月が二人を明るく照らす。
蕾は言葉を選びながら慎重に、しかしながらはっきりと自分の推理を披露した。
「藍さんがここの従業員の話をする時、"私達"じゃなくて"あなた達"って言ってました。それに、藍さんは多分、従業員の部屋に毎晩帰ってきていない。始めは、薺さんと会っているからだと思っていました。椿が二人は恋人同士だって言ってたから。でも、薺さんが毎晩会ってるのは芹様ですよね?それなら、藍さんはいつもどこに帰ってるのかなって思って」
「それで、藍さんが神様なんじゃないかって思ったんだ」
改めてそう口にされるとさっきまではっきりとしていた口調が急に弱々しくなり小さく肯定の意を示した。
「んー、これに関しては俺から言えることは何もないかな。藍さんに直接聞いてみればいいじゃん」
「薺さんは本当に何も知らないんですか?」
薺は蕾の不安そうな顔をチラッと見てから爽やかな笑顔で口に人差し指を当てた。
「内緒」
アイドル顔負けの薺の言動に蕾は冷たい視線を向けて、「ここまでで大丈夫です。ありがとうございましたー」と分かりやすい棒読みで薺の横を通り過ぎ、足早に去っていく。
薺も特に気にする様子もなく「おやすみ、蕾」と添えてその背中を見送った。
振り向いた蕾の「おやすみなさい、薺さん」と言った表情が、少し柔らかくなっていたことに薺は安堵し小さく笑う。
蕾の背中が見えなくなるまで見送った後、薺も彼の帰りを待つ人の元へと帰って行ったのであった。
翌朝、蕾は椿と共に仕事をしていた。
久々の共同作業にも関わらず、二人は「ん」「はい」だけで息を合わせており、周りの同僚が少し引いてしまうほどであった。
「はい。これで最後ね。蕾、次行くよ」
「うん」
手際よく仕事を終わらせ、足早に次の場所は向かおうとする二人。
すると廊下を曲がろうとした時、不意に現れた人物によって行く手を遮られた。
「薺。邪魔」
「こらこら。口が悪いよ、椿」
「お疲れ様です、薺さん」
「お疲れ、蕾。突然だけど、二人はあるお客様のお相手をしてきて欲しいんだ」
二人は同時に目を瞬かせる。頭の上に疑問符が見えてきそうな二人の表情を見て、薺はにんまりと笑う。
そうして、蕾と椿は薺に言われるがまま、お客様の待つお部屋までついていった。
蕾と椿には、そこは見たことのある風景だった。
正確に言えば、見たことのある風景に似ている場所だ。なぜならあの時、この廊下は形を変えてしまったからだ。
「着いたよ」
薺は足を折り、正座する。
二人もそれに倣い、少し後ろに下がって正座をした。
「失礼いたします。お客様」
薺が横開きの扉を開ける。
「いらっしゃい」
聞き覚えのある声に蕾と椿は同時に顔を上げた。
彼女はいつもと変わらない優しい顔で微笑むと、部屋に入るよう促した。
絶句する椿とは打って変わって、蕾はすぐに立ち上がり彼女の元へと駆け寄る。
そして言った。
「藍さんは、やっぱり神様だったんですか?」
純真無垢な瞳で見つめられ、藍は少しだけきょとんとした後に鈴の音のような綺麗な声で笑った。
「ごめんね、蕾。私は神様じゃないの」
「それじゃあ、」
「私は死んだ人間なの」
「え…」
藍は戸惑う蕾と椿を見て困ったように笑うと、薺を含めた三人を座布団に座らせた。そして、その正面に藍が座る。
「黙っていてごめんなさい。あなた達には早く言わなければと思っていたのだけれど」
蕾と椿は顔を見合わせる。そして、先に椿が藍の方に向き直った。
「その…そもそも、そんなことあり得るんですか?死んだ人間は客に、生きている人間はここで働く。それがここのルールですよね?」
「ええ。その通りよ」
藍の堂々とした態度とは違い、椿は戸惑いが隠せない。何から何まで訳がわからないといった様子だ。
そこで、今度は蕾が口を開いた。
「それじゃあ、藍さんは、ここで働き続ければ生き返るってことですか?」
「いいえ。死んだ人間は生き返らないわ。それだけは絶対に覆らないの」
「それじゃあ…」
出てきそうになった言葉を蕾は喉の奥に押し込む。椿もきっと同じ疑問が浮かんでいた。
“なぜ、ここで働くのか?”
二人は藍を傷つけず自分の疑問をぶつける言葉が見つからず沈黙した。
それを察した藍は二人の気遣いに感謝しつつ、一息ついてから話を始める。
「私は夫の代わりに働いているの」
藍はとても冷静だった。悲しい顔も辛そうな顔もせず、ただいつもと同じ優しい表情で話を続ける。
「随分前、夫がこの宿にやって来たの。予約しようとする彼を、私は必死で止めたわ。そして、少しでも早くあの人に帰ってってお願いしたの」
「早くって言っても年季がありますよね?」
椿の言葉に藍は頷く。
そこで蕾はハッとして藍の代わりに言葉を紡いだ。
「夫の代わりに働いてるって…」
「ええ。私は神様にお願いして、夫の年季を肩代わりしているの」
蕾も椿も多少驚いていたが、それよりも胸の奥に湧く腑に落ちない感情の方が強かった。
藍は二人の表情からそんな気持ちを悟ってか、眉尻を下げて笑う。
「もちろん私には年季なんてない。死んだ人間に選ぶ権利はもうないの。だから私は永遠にここで働き続けるわ」
藍は覚悟の決まった表情でしっかりと二人のことを見ていた。
それに対し、蕾と椿は目を見開いて言葉を失う。
二人とも、ここに残りたいと考えている。しかし『永遠』という言葉はあまりにも重く感じられたのだ。
「死というのはそういうことよ。チャンスも希望もない。そして残された人たちは、私達の死を自分勝手に解釈するの。死んだ後のことなんて関係ないと、あなた達は思うかもしれないけれど、これはきっとこちら側になってみないと分からないわ。意外と、我慢ならないものよ。でもどうしようもできないの。だって、死んでいるんだもの」
藍の口調はいつもと変わらなかった。まるで世間話でもしているかのようで、涼やかなあの声で淡々と話をするのだ。
蕾と椿は黙ったまま俯いた。きっと、薺が声を掛けなければ天高く照らす太陽が夜の世界に帰るまで二人はそうしていただろう。
薺が二人を促して藍の部屋を出る。仕事に戻る道中も蕾と椿は心ここにあらずと言った様子であった。
「どうする?仕事に戻るのが難しそうなら、二人とも今日はこのままあがってもいいよ」
蕾も椿も間髪入れずに仕事に戻ると回答した。
薺はへらりと笑うと「わかった」と短い返事をする。
そうして三人は自分の持ち場に帰っていくのであった。