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ヒーロー「魔王」  作者: バナハロ
新たな訪問者。
9/28

アマゾネス。

 一週間、というのも割とあっという間に過ぎ去って行った。引きこもってばかり、というわけでもないが、お昼のドラマ以外にもめぐみが図書室で借りてきてくれた漫画や生き物図鑑など子供向けの本を読んでいられたため、退屈はしなかった。ニュースも連続して見なければ中々、興味が尽きなかったし、色んなことを知るのに役立った。

 しかし、何となくフェルトは元気が無かった。自分が、あまり役に立てていない事に気になっていた。居候、とはそういうものかもしれないが、やはり働き始めるまでめぐみの重荷なっている気がして仕方ない。


「はぁ……」

「どうかした? ニートにため息は一番、無縁のものでしょう?」

「ニート言うな!」


 明日が過ぎればアパートでの自宅生活は終わりなのに、ため息をついた居候にめぐみは声を掛ける。

 しかし、フェルトは答えない。結局、自分は魔王パーティの時と同じであまり役に立てていないんじゃないか、と思ってしまっていて、あまり元気が出ない。

 しかし、それを相談したところで割とデリカシーが無いめぐみは「そうね、貴方は居候ね」と言い切るだろう。


「‥‥別に、なんでも」


 なので、素っ気なくそう返した。そのフェルトに、めぐみは怪訝そうな顔で聞いた。


「? 働きたくないの?」

「なわけあるか! 人をニートみたいに言うのもやめろ!」


 こういう質問を平気でしてくる辺り、やはり相談しなくて正解だ、と思ってしまう。

 あっそう、と興味なさそうな返事をしながら、めぐみは今日の料理を食卓に運ぶ。唐揚げ山盛りである。


「はい。……まだ一日、早いけど、我慢したご褒美よ」

「え……こ、これは?」

「唐揚げ。……あなたの世界に無かった?」

「美味そう……」


 既に料理に夢中で聞いちゃいない。さっきまで悩ましそうな顔をしていたのがウソみたいである。

 あとは白米とサラダが運ばれ、食事を開始。昼間、引きこもっている間に練習したのか、箸も使えるようになっていたフェルトを見て、少しめぐみは笑みを漏らした。なんだかんだ、こちらの世界に馴染もうとしているのはよくわかったからだ。


「美味ええええええ⁉︎ なんだこれ、食べ物か⁉︎」

「食べ物じゃないのに美味しいものって何よ……ありがと」


 返事をしつつ、元気に唐揚げを頬張るフェルトを見て、思わず微笑んでしまった。


「噛んだ瞬間、肉汁が溢れるというか、鳥肉の弾力が歯を跳ね返しつつ吸収しやがるというか……スゲェ、美味ぇ!」

「はいはい。ありがとう」

「アタシ、メグミに拾われて良かったぜ!」

「はいはい。自分で拾われたって言っちゃうのね」


 流し気味の返事ではあるが、一応、受け止めている。あまり感情を表に出すのが得意ではないめぐみは、上手な返事が浮かばないのだ。

 しかし、めぐみも今の生活が悪い感じはしない。こうして料理を作り、感想を言ってもらえる相手が出来るのは久し振りだ。あのお節介焼きを別れて以来だから、五ヶ月ぶりくらいだろうか。

 やはり、一人より誰かと無警戒に暮らせるのは楽しいものだ。何処か邪な考えが目に見えていた玲二とは、一緒にいても隙を見せないようにするのに精一杯であったから、気は休まらなかった。

 食事をしながら、テレビをつける。相変わらずニュースばかりやっている。今日のトップは、ヘルメットマンのことのようだ。

 それを見て「おっ」とフェルトが声を漏らす。


「こいつ、この一週間で何回か見たけど、何なの?」

「ヒーロー……と言われていはいるわね」

「ヒーローって……日曜の朝にやってるアレ?」

「そうね。あれを気取っているんじゃないかしら?」


 戦闘の様子は全然違うが。何せ、武器など何も使わず殴る蹴る突撃する吸収するの繰り返し。必殺技、なんてものもなく、全てがゴリ押し……かと思いきや、何処か技巧派に見える戦法も見せていた。

 今、ニュースでやっているのは、バイクを無理矢理、人の鎧の形にしたような格好をしたヘルメットマンが走ってジャックされたバスに追い付き、中に侵入して犯人達をボコボコにし、解決した所だった。


「すごいわよね。どうやって作ったのかしら、このアーマー」

「? この世界のものじゃないのか?」

「違うわよ。時速100キロ以上で走るアーマーなんて作らないわ」


 それを聞いて、フェルトは顎に手を当てる。心当たりはあった。だが、それの持ち主は滅ぼしたし、この世界に転移されたのは鎧や武器だけだ。何も問題は無いはず。むしろ、こちらの世界でヒーローとして使われているのなら、自分が何か口を挟む必要は無いだろう。


「あなたは知ってたりするの? あのアーマー」

「え?」


 意外にも、興味を持っているようで問い詰めてきた。前かの世界の魔王の鎧、と答えるのは簡単だ。しかし、それで不安にさせても良くないし、ヒーローとして活動しているあの人の邪魔もしたくない。


「さぁ、知らん」


 なので、首を横に振った。そして、さっさと話を逸らした。


「ていうか、こっちの世界でこういうヒーローとかって許されてんのか?」

「今の所、指名手配も賞金もかけられていないけれど、警察は良くは思っていないでしょうね。そもそも、日本は法治国家だし、私刑は許されていないわ」


 それは恐らく、ヘルメットマンも理解しているのだろう。だから、犯人は気絶させた上で、後は警察が逮捕するだけの状態で放置している。過去にヘルメットマンが殺した犯罪者も存在しない。あのダークネス・ブレイドですら殺さなかったくらいだ。


「……ヒーロー、か」

「バカな真似はしないでよ?」


 考えを見透かされたように言われ、思わずドキッとした。


「あなたもあれと同じように普通の人以上の力は持っているけど、目立つ真似をすれば私の意志関係なくうちにいさせてあげられるかも分からないんだから」

「そうなのか? ……でも、あいつは?」

「あれはヘルメット被ってるでしょ? 正体を隠すためだからあれ」

「……な、なるほど」


 要するに、正体がバレなきゃ良い、ということだろうが、慌ててその考えは打ち消した。めぐみの迷惑に掛かるような真似はしたくない。今の自分は役立たずなのだから。


「それより、食事にしましょう」

「ああ。白米お代わり!」

「……はいはい。サラダも食べなさいよ」


 今はヒーローなんかよりも唐揚げ、と言わんばかりに、フェルトは元気よく唐揚げをレタスで包んで口に放った。

 その様子を、まるで大きな妹が出来たような感覚に陥りながら眺めためぐみも、フェルトのお代わり分の白米を盛り付けた。


 ×××


 翌日、早朝から出掛けためぐみを見送ったフェルトは、アパートの敷地内で鍛錬をする。こちらの世界では戦闘にはならないだろうが、それでも訓練は怠らない。

 剣も斧も盾も得意では無かったが、拳で語り合う肉弾戦は、近距離戦の中でもまだ得意な方だった。昨日の夜に見たヘルメットマンに影響されたわけではないが、今日は特に訓練の時間が長引く。

 何やらこの世界も物騒ではあるようだし、ムチも弓もない今の自分は、格闘戦でしか戦えない。そういう意味でも格闘術を高めようと拳を振っていた。

 そんな時だ。ポツリ、と。鼻の頭に水滴が落ちてきた。


「……?」


 それが、徐々にポツリポツリとリズムが早くなり、やがてザアァァァッと、連続したような音になる。

 慌てて窓に跳んだフェルトは、そのまま部屋の中にジャンプし、空中で窓を閉めて靴を脱いで玄関に放り、着地した。すぐに家の中に入ったのであまり濡れていないが、一応髪や身体を拭いておく。


「ふぅ……今日、雨降るなんて言ってたっけ?」


 天気予報は、フェルトが「この世界に来て一番驚いたものランキング」暫定一位の項目だ。何せ、明日の天気を予知してしまうのだから。まぁ、今日みたいに外すこともあるのだが。


「……メグミ、傘持って行ったのか?」


 気になる、気になるがアパートの敷地を出てはいけない。いや実際の所、問題さえ起こさなければ出ても良いのだろうが、一応は約束だ。それを破るような真似はしたくない。


「……でも、メグミが風邪ひいちまったらあれだし……」


 風邪を引けば、どちらにせよ明日のバイト体験は中止になるだろう。治るまで待つとなると、風邪は治るかもしれないが卒業研究もバイトにも出られずお金も得られない。


「……とりあえず、夜まで待ってみよう」


 もしかしたら止むかもしれないし、今慌てて出て行くのは得策ではない。

 その間は、本やテレビを見てこの世界について勉強する事にした。


 ×××


 夕方の一八時を回った。未だ土砂降りである。というか、ニュースを見ると天気はいつの間にか、明日の朝まで崩れると出ていた。


「……行くか」


 事情を説明すれば追い出されることも無いだろうし、まぁ最悪、明日のバイト体験は延期になっても良い。

 めぐみからの借り物であるフード付きのパーカーを羽織って玄関を出ると、傘を二本持って出掛けた。走ればすぐに着くが、それで人と衝突したら危険だ。出掛ける以上は、細心の注意を払わらなければならない。


「久々の外だ……」


 そう思うと、少し楽しく感じられる。「シャバの空気はうまい」という感情はこの事か、なんてことまで思ってしまった。

 しかし、雨の日はやはり苦手だ。目と鼻と耳はアホほど鍛えられているが、それのどれが害されやすい。視界はまだしも、匂いと音は本当に鬱陶しいものだ。

 こんな時に戦闘なんて起これば、間違いなくやりづらいだろう。


「……ま、こっちの世界で戦闘なんか起きないか」


 どの人間も戦闘においては大したレベルでは無さそうだし、五感をもって相手をしなければ戦えない、というレベルの敵はいないだろう。

 そもそも、戦う必要もない。絡んで来るのなら逃げるまでだ。

 足の速さだけなら勇者パーティの中でもトップなので、逃げ切れないということはないだろう。

 うろ覚えだったが、ダンジョンに潜った時に道を覚えておくのは重要だったのと同じで、めぐみと初めて出会った時に通った道を覚えておいたフェルトは、大学までストレートで到着できた。

 むしろ、問題はここからである。


「……さて、めぐみとどう会おう」


 ここから先は手探りだ。地図があれば良いのだが、どの建物に入れば手に入るのかも分からないし、地図を探すにしてもめぐみを探すにしても、難易度的に大差はない。


「それなら、めぐみを探した方が良いよね」


 手掛かりよりも答えを先に探すタイプだった。とりあえず、一番近くの建物に入ってみる事にした。


 ×××


「はぁ……面倒臭い……」


 めぐみは一人で13号棟、通称「生物棟」に来ていた。4階建ての建物で、中は広くはないが縦に長い。

 ここに来たのは、研究室の先生にお使いを頼まれたからだ。なんかプリントを持っていくかわりに、セルスリットという実験の用具を借りてきて欲しいとか何とか。

 なんにしても、さっさと終わらせて論文の直しと続きに入りたいものだ。

 ただでさえ雨が降っていて気が滅入るというのに。


「傘、どうしようかしら……」


 雨は嫌いではないが、それは室内に限った話だ。家には居候がいて帰らないわけにもいかないし、鞄だってパソコンやプリントが入っているから濡らすわけにいかない。

 そんな時に、お使いなんて頼まなくても良いでしょ、と心の中で八つ当たり気味に愚痴りながら歩いていた。

 今にして思えば、卒業研究の内容はかなり下らないものにしたな、と少し後悔していた。何せ、あの正義感の塊かと思ったら割と子供っぽい彼氏と協力してやっていたのだ。テーマもどちらかと言うとめぐみは提案に乗った側なので、完全にダメな彼氏の尻拭いを今、やらされている感じである。


「……はぁ」


 まぁ、別に結局、割とかなりレベルが高く、教授からも「お前ら本当に学生?」と言われる物ができた。教授が手伝ってくれる気持ちもわかる程のものだ。

 でも、やはり苦労させられている。今度、またお店に遊びに行って文句でも言ってやろうかなーなんて考えていながら階段を上がっていると、見覚えのある青年とすれ違った。メガネをかけ、肩にカメレオンを乗せている。その表情はいつになく楽しそうなものだった。


「……?」


 怪訝な顔をしながらも、今はどうでも良い事なので気にしないことにする。お届け物を届ける方が先だ。

 目的の部屋に着いた。


「城田先生、いらっしゃいますか?」


 ノックしてみたが返事はない。扉を開けようとドアノブに手をかけた時だった。

 隣の研究室の扉が、爬虫類のような柄なのに、電柱のような太さの脚に蹴り壊された。


 ×××


 研究室の中は薄暗く、パソコンの明かりしかない。カーテンも締め切られていて、外から中の様子を見学する事は不可能になっていた。

 クーラーによって中は冷やされ、外から暖気が侵入されてくることもない。この教室と外の空間だけ、時間の流れが変わっているような感覚に陥った。

 そんな不気味な閉鎖空間の真ん中、椅子に座らされ、両足首を椅子の足、両手は背もたれの後ろで結ばれ、口もタオルで縛られているのは、この前、校舎裏で告白してフラれた少年だった。

 まともな思考回路が働いているわけではないが「逃げなければ」という事実だけが、両手と両足をガタガタと動かしていたが、どうする事も出来ない。痛い程にキツく結ばれている。


「別に、この前の仕返しってわけでもないんですよ」


 大きい声でもないのに、耳にハッキリと届いていた。肩に相変わらずカメレオンを乗せている少年が、メガネから光を反射させて、何かの準備をしているようで、両手を机の上で動かしている。


「ただ……まぁ、全く顔も知らない人は何となく気が引けるじゃないですか。でも、あなたなら顔見知りってわけでもありませんから」


 淡々と、そう告げる声は機械のように無機質なものだった。全く迷いも躊躇もない。むしろ「やらなければならない」という使命感が唯一、含まれている人間的な感情だった。


「フーッ、フーッ……!」

「そんなに慌てないで下さいよ。あなたはこれから進化するんです。人間などという、食物連鎖の頂点を極めたに過ぎない害虫を、新たなステージに、人工的に進化させて差し上げると言っているんです。あなたは、その第一号だ」


 準備を終えたのか、メガネの光は徐々に自分に近寄って来る。その手には、注射器が握られていた。

 自分にそれで何をするつもりなのか? 思わずそっちに視線を向ける。なんにしても、ろくなことにならないだろう。


「……ああ、これですか。注射器って、150年も変わっていないそうですね。今のままが完成形だからとかなんとか」


 そんな事が言いたいわけではないが、何も言えない。口を塞がれているのだから。


「あなたも、これから……そうですね。少なくとも七〇〇〜六〇〇万年は進化の必要がない姿へと生まれ変わるのですよ」


 そう言いながら、メガネの青年は注射器を青年の腕に近づけた。抵抗しようとするも、どうしようもない。両手両足、全てが動かせないのだから。

 目尻に涙が浮かび、頭に血が上る。まさに、狂気を感じていた。

 だが、祈った所でどうにもならない。針の先端は、腕の血管に食い込み、突き刺さった。


「ーっ……⁉︎」


 直後、全身に苦痛が走ると共に、まずは両手足から変化が起きた。急激に力が入り、両手足とも電柱のような太さになると共に縄を引き裂いた。


「……うお、やばっ……」


 それを見るなり、メガネの青年は研究室を出て行った。どうせ録画もしているし、大事な物はここには置いていない。

 すぐに追いかけて殺してやりたい所だが、頭が割れそうに痛くてそれどころではない。身体が爆発しそうな程であった。


「ッ……カハッ……!」


 頭が、まるで動物の本能に焼き尽くされるように燃え上がっていった。

 ようやく痛みが引いた時には、意識と呼べるものは自分の中に残っていなかった。残っているのは、本能のみ。


 ーーーとりあえず、腹が減った。


 直後、コンコンという音が耳に届く。この部屋へのノックではない。


「城田先生、いらっしゃいますか?」


 生き物の声だ。つまり、餌だ。

 ドシンドシンと走ってドアを蹴破り、餌を見据えた。

 茶髪でポニーテールの女子生徒だ。ポーカーフェイスが過ぎる少女だが、それでも表情には怯えが含まれている。

 だが、そんな事はどうでも良い。問題は、腹の足しになるかならないか、それだけだ。


「‥‥私、最近こんなんばっか……」


 涙目になって逃げ出す少女を、逃すか、とばかりに追うが、あまりに早く走れない。目で獲物は追えているのに、足が追いつかない。このままでは、餌は階段を降りてしまう。そうなれば、視界の外だ。

 ならば、と。本能的にそれ以上に早く獲物を捕らえる方法に辿りついた。

 口を控え目に開いた直後、その隙間からシュボッと勢いよく点火されたジェット機のエンジンのような音を立て、舌が発射された。

 それが、まっすぐと前を走る少女に向かっていった。人間の走る速度など止まっているように見えるほどの速さだ。

 これなら、自分の腹ぺこ問題はすぐに解決する、そう踏んだ時だった。

 獲物の前に、別の獲物が猛スピードで現れ、舌を傘で打ち払った。


 ×××


 上の階から轟音が聞こえた直後、フェルトの動きは早かった。修羅場を予測したフェルトは、本気で階段を駆け上がった。僅か五秒もかけずに4階まで駆け上がると、めぐみが自分がいる階段に向かって走って来ているのが見えた。そして、その後ろからピンク色のテラテラした何かが追ってきているのも。


「! フェル……⁉︎」


 めぐみが声をかけ終える前に、フェルトは床を蹴ってめぐみの後ろに立ち、その何かを傘で打ち払った。

 それにより、ピンクの何かは元の場所に戻る。目で追えないほどの速さで戻った先には、緑色の巨大な人間がいた。いや、人間なのかは分からない。身長は大体、三〜四メートルほど。服を着ているから人に見えなくもないが、巨大な顔の両横に目がついていて、360度見渡せるようになっている。

 ピンク色の何かが引っ込んだのは、不機嫌そうにへの字に曲がっている口の中だった。


「……カメレオン?」

「フェルト⁉︎ あなた、こんな所で何を……!」

「悪い、めぐみ。雨降ってたから迎えに来てやったんだけど……」


 本当に申し訳なさそうに苦笑いを浮かべたフェルトが持つ傘は、半分から上がへし折られ、生地の部分は全て舞い散ってしまっている。折れた先端からは煙が上がっていた。


「折れちゃった」

「……そう」


 まぁ、今回はめぐみのためを思っての行動だし、外出を禁じたのは問題を起こすと踏んでいたからだ。罪を咎めるのは、問題が起きたか否かを確認してからで良いだろう。

 何より、助けられておいて説教できる立場ではない。


「一先ず助かったわ。ありがとう」

「悪ぃけど、まだ助かってねぇぞ」

「え……?」


 向こうはフェルトを警戒してか、二度目の攻撃を放ってこない。しかし、それはフェルトも同じで、迂闊に動けなかった。何せ、後ろにはめぐみがいるのだから。


「あれがなんだか知らねーが、奴はアタシ達をロックオンしてる。あれを殺すか止めるかしないと、まだ助かったとは言えんだろ」


 まず驚いたのは、舌の伸びる速さだ。あれは恐らく、フェルトが走るよりも速い。その上、へし折った傘から煙を出すほどの威力を兼ね備えている。

 それと、めぐみに向かって舌を出した以上、肉食なのだろう。ここで二人が逃げても、他の人間が狙われるだけだ。


「……めぐみ。戦っても、良いか?」

「ダメよ。逃げましょう」

「それはダメだろ。……って、めぐみも分かってんだろ?」


 その通りだ。放っておけば二次被害が出るのは確実だ。

 しかし、ここで戦えばフェルトの正体が周りにバレる。もう夕方で人は少ないと言えど、一人に見つかればSNSから拡散し、結局は全員にバレるのだ。

 どうしたものか悩みながら、なんとなくポケットに手を入れた時だ。良い案が浮かんだので、それを実行することにした。


「……良いわよ。やるしかないもの。でもその前に……」


 めぐみは、ポケットからメガネケースを差し出した。


「中にブルーライトカットメガネが入ってるから。それ掛けて、パーカーのフードを被りなさい」

「……それで誤魔化せんのか?」

「誤魔化せる、と思うしかないんじゃない?」


 その通りだ。さて、そのためにはまず隙を作らないといけない。

 フェルトは、手に持っている傘の柄を投げつけた。先端が急速にカメレオンに向かうが、それは舌によって弾かれる。その隙にめぐみを連れて、まずは直線上から身を隠した。

 その間にフードを被り、眼鏡を掛ける。


「似合わないわね、相変わらず……」

「るせーな……良いから避難してろよ」

「そうさせてもらうわね。私がいても役に立てそうにないし」

「あ、その前に」


 立ち去ろうとするめぐみに、フェルトはもう一本の傘を差し出した。


「はい、これ」

「良いの? 武器になるんじゃないの?」

「元々、めぐみのために持ってきたもんだからな。あいつが何者だか知んねーが、必要ねーよ」

「……そう。ありがと」


 それだけ言うと、めぐみは階段を降りて行った。直後、階段の前にカメレオンが走り込んで来る。だが、大した速さではない。舌の速さの割に鈍足のようだ。

 いや、むしろ獲物を捕らえるために舌を伸ばせるようになったのだとしたら、足は鈍くても構わないのかもしれない。


「さて、かかって来いや」


 直後、舌が火を吹いた。反射的に、天井に跳ね上がり、蛍光灯を握って天井に着地して回避する。

 フェルトですら驚く程の速さだった。何よりは、発射速度以上に口内への収納速度も速い。捕まったら終わりと考えたほうが良さそうだ。

 そう思いつつ、着地のために握っていた蛍光灯を外しながら地面に片膝立ちで着地する。

 着地した後ろ足は、全指の関節を折り曲げ、ギリギリッ……と踏ん張る。

 そして右手から、カーブを描く様に蛍光灯が、カメレオン男の右目を狙って投擲されると共にスタートダッシュを切った。

 蛍光灯とは真逆、左の壁に足をついて窓を足場に走る。視線と舌を逸らしつつ、真逆から攻めに向かった。案の定、舌は蛍光灯を捕らえ、口の中に吸い込まれる。

 蹴りを左側の顔面に放とうとした時だ。あの側面についている瞳が、自分を追っているのに気付いた。


「……まさか」


 直後、裏拳がフェルトの身体を捕らえる。メギッと軋むような音が響き、走っていた窓と挟まれる。

 ピシピシッ……と、窓や壁、天井や床に至るまで亀裂が走り、拳を振り抜くと共に破壊され、雨が降っている外に殴り出された。風圧でフードが翻る。

 ここは4階、普通の人間なら無事では済まないが、フェルトは普通ではない。


「いってぇなあの野郎……!」


 五体満足でピンピンしながら、落下中だというのに落ち着いていた。

 ジロリとカメレオン男を睨む。なんか色がオレンジ色に変化しているが、構っている場合ではない。

 それよりも、どう反撃しようか考えながら受け身を取る姿勢になろうとしていると、さらに上から舌が発射される。


「あ、やべっ」


 フェルトの身体に、舌が巻き付く。ひんやりと唾液が服に絡みついてくる感覚が身を包んだ。それと共に、口の中に勢いよく吸い込まれた。

 だが、はみ出た床に両足を着けて踏ん張ってみせた。


「ふんっ、ぐぐっ……‼︎」


 だが、力は舌の吸引力の方が強い。徐々に、上半身が起こされ、口の中に引き込まれていく。

 それでも抵抗する。両脚の指先にまで全開で力を込めて。こんな異世界で、変な化け物に喰われて死ねば、それこそ自分は「勇者討伐に必要がなかった人間」になってしまう。

 何より、自分がやられればめぐみがやられる。


「っ……のっやろっ……‼︎ コナクソォオオオオ‼︎」


 全身に力を入れて踏ん張った直後だ。足元の瓦礫が一気に崩れ、カメレオンごと建物の外に落下していく。

 突然の出来事にほんの一瞬、出来て緩んだ舌を殴り付け、脱出すると、その舌を掴んで自分の方に引き寄せた。


「仕返しだこのクソレロレロ野郎」


 カメレオンの顎に両足を揃えて蹴りをたたき込んだ。それと共にカメレオンの真上に馬乗りになり、顔面や腹、身体に拳を連続して叩き込む。

 効いているのか、右手を自分の顔面に押し付けて遠ざけようとするが、その手を掴み、今度は足で何度も踏み付け続ける。


「グッ……ガガッ……‼︎」


 呻き声が漏れる。このままではマズいと反応で察知し、強引に無理矢理、フェルトを両手で挟んだ。そのまま、口を大きく開けて自分の方に引き寄せる。


「チッ……汚え手で触るんじゃねえよ‼︎」


 両足でその口を押さえ込んでいる時だ。地面に着地し、衝撃で再び手放された。投げ出されるような形で地面を転がりつつ、受け身を取るフェルト。フードが外れていることに気付き、慌ててかぶり直した。

 カメレオン男は思いっきり落下した衝撃からか、起き上がるのに時間が掛かる。

 その隙に、フェルトは地面を蹴って顎に飛び膝蹴りをお見舞いした。


「グッ……カッ」


 カメレオン男は体を強引に勢い良く起こした。いち早く、危険に気付いたフェルトは距離を置くが、それは失敗だった。

 口から舌が、無差別に放たれる。周りに止められている自転車、崩れた瓦礫など、片っ端から口の中に放り込み、咀嚼して頬に取り込んだ。

 何のつもりだ? と思ったのも束の間、口の中から取り込んみ、噛み砕いてバラバラになった物を勢いよくフェルトに吐き出す。勢いは舌ほどでは無いが、なかなかの速さがある。

 しかし、ヤケになった攻撃ほど、歴戦の猛者には読みやすいものだ。


「よっ、とっ……ほっ! ……はい、これと……これ!」


 攻撃を回避し続けた上に、飛んできた自転車のハンドルバーとサドルを手に取った。ヌメヌメするが、そういうのには慣れている。

 元々、投げるために作られたものではないから扱いづらいが、不可能ではない。物理的な遠距離攻撃はフェルトの得意とするものだ。


「ほーらよっと!」


 右腕を思いっきり振るい、サドルをぶん投げた。その起動は、真横と言っても良い方向に投げたにも関わらず、サドルは急カーブして縁を描く。

 カメレオン男の右目はそれを追うが、明らかに自分から外れている軌道であるためすぐに無視した。

 それよりも、接近して来るフェルトからも目は離せない。フェルトに対しては、舌で対応した。それが身体を巻き付き、勢いよく口の中に収納されていく。

 が、後頭部に何かが直撃したため、ほんの一瞬、舌が緩んだ。その先にハンドルバーを持つ左腕だけ脱出させ、舌が巻き付く勢いに身を任せ、喉に突き刺した。


「ガッ……⁉︎」


 喉を貫かれ、血が吹き出す。全身がビクビクンッと痙攣し、両腕や両脚の関節が指先に至るまで数回伸び切ったあと、すべての力を使い切ったように脱力し、全身が地面に落ち着いた。


「……うえぇ〜、ばっちぃ……」


 全身に浴びた体液を振り払いながら、心底嫌そうな顔で呟くフェルト。フードも本当は外したいところだが、それを脱ぐわけにはいかない。

 気がつけば、周りには野次馬が集まっているからだ。学校に残っている人数はさほど多くないと思っていたが、ザッと見て二〜三〇人ほどはいる。


「……あっ」


 サイレンと赤い光が回転しているのが見えた。これはドラマで見た警察のパトカーとかいう奴だ。警察が来て自分に事情聴取するのは、めぐみが一番、嫌がる事だ。

 その場で軽くジャンプし、校舎の屋根の上に、壁を走って跳び乗り、高い所からめぐみを探す。

 野次馬の中に、見覚えのあるポニーテールがこっちを見ているのが見えた。

 目があったと分かれば、めぐみは自分がいる建物の中に入って来るので、フェルトも同じように屋根の上から窓に移動し、中に入る。

 建物の中は真っ暗で、非常口の明かりしかない。不気味ではあるが、その分、自分以外の足音が響き渡ってくる。その聞こえて来る方向に歩き出した。

 が、途中、ふと足を止めた。何者かの気配を感じたからだ。


「お疲れ様、フェルト」


 が、声をかけられ、思考を打ち消す。それにより、もう一人の気配が完全に消えた。この世界の人間に、気配を消すスキルがあるとは思えないため、接触してくる予定だったのだろう。

 だから、別人の声が聞こえたから慌てて退散した様子だ。


「本当に。なんなの? ここにああいう化け物いるもん?」

「いないわよ。あれが何なのかも分からないわ」

「……ああ、やっぱり」


 カメレオンのような男が突然、大学の研究室から現れた。何をどうしたらあんなのが生まれるのか分からない。まだロボットと言われた方が信じられるくらいだ。


「……でも、今はとりあえず家に戻りましょう。ここであなたと長話しているわけにもいかないわ」

「そっか……それな。じゃあ……先に帰ってて。アタシは目立っちまうし、遠回りして帰るから」


 そう言って、建物の窓から再び飛び降りようとした時だ。そのフェルトの首根っこを、めぐみが掴んだ。


「待ちなさい」

「クェッ……な、なんだよ」

「あなた、傘が無いんでしょう?」

「平気だよ。アタシ、低温で風邪引くほどヤワじゃねぇし」

「良いから傘に入って行きなさい。そもそも、これはあなたが持ってきた傘でしょう? 他人に持ってこさせた傘に自分だけ入って、その人は雨にあたらせて置いていくような真似はしたくないの」

「……」


 そう言われてしまえば、フェルトも頷かざるを得ない。助かると言えば助かるが、どうにも申し訳ないと思ってしまう。自分なんかに気を使うことなんかないのに、と。


「……でも、どうやって帰るんだよ? メグミまで目立っちまうぞ?」

「簡単よ。一緒に遠回りして帰れば良いわ」

「……お、おう。なるほど……」


 そう言って、とりあえず別の出口から出て行った。なるべく人気の少ない道を選ぶのは全てめぐみに任せ、傘はフェルトが持って大学を出た。

 自分が化け物を退治し、多くの人を救ったというのに、フェルトの内心は罪悪感で満たされていた。

 と、いうのも、結局はめぐみに面倒をかけさせてしまったからだ。無断で家を飛び出し、余計な世話を焼いて、最終的には目立つ真似をした。

 今だって、雨で多少、流れているとはいえ、カメレオンの唾液塗れのフェルトは臭うはずだ。本人の嗅覚にはかなりキている。しかし、めぐみは何も言わない。着ている服だってめぐみのものだと言うのに。

 いや、かと言って来なけりゃよかった、というものでもないが。来なかったらめぐみは食われていた。

 結局、どうするのが正解だったのか、見出すことが出来なかった。


「ねぇ、フェルト」

「っ、な、なんだ?」


 唐突に声を掛けられ、反射的に振り返る。


「今日は助かったわ、ありがとう」

「いや……礼言われるような事じゃねぇよ」

「お礼を言うようなことよ。あなたが来なかったら、私はこうして生きていなかったもの」

「……」

「魔王を討伐した後でも、戦いに臨めるのは立派だと思うわ。普通、戦いなんて何度もしたいものではないから」


 そう言われ、フェルトは少し喜ぶ……よりも、奇妙に思えた。今のセリフは、まるで戦闘に参加したことあるような口振りだった。


「……めぐみは、何か戦ったことがあるのか?」

「違うわよ。ただ、元カレがそういう人だったの。困っている人を放って置けない人で、いじめられてる人とか暴行事件とか見ると必ず首突っ込んで怪我して帰ってくるバカだったのよ」

「え……弱いのにそういう事するのか?」


 というか、彼氏いたのか? と思ったのは置いておいた。


「するのよ、呆れたことに。怖いはずなのに。でも、暴力を受けている人の方が怖いと思うからって、それだけでボコボコにされてきたの。私は、その人のそういう所が好きだったんだけど……」


 でも、実際にその行動により、めぐみ自身にも被害があり、こうして留年するはめになった。だから、一概に良いとも言えなかった。


「……って、私の元カレの話はどうでも良いのよ。とにかく、あなたにお礼が言いたかっただけよ」

「メグミ……」


 つまり、元彼氏がそういう人だったから、戦いに臨むのが怖い事である事が理解出来るわけだ。


「でも、アタシ問題を起こしたぞ。明日からのバイトは延期か?」

「気にしなくて良いわ。一応、正体は隠してたわけだし、試しに外に出てからの戦闘シーンを撮ってみたけど、顔はほとんど見れなかったから」


 なるほど、と内心で相槌を打つ。そもそも、雨が降っていたから、スマホを構えている奴もほとんどいなかった。


「とにかく、ありがと。あなたがいたから、私は助かったから」

「……いいって」


 本当に、本心から、本音でお礼を言われた。その事が、どこかむず痒くて、それでいて気恥ずかしかった。

 フェルトは「自分がいたから助かった」なんて言われたのは初めてだった。だから、照れたように頬を赤く染めて目を逸らすしかない。こういうのはあまり慣れなかった。この世界でなら、自分は自信を持って役に立てる、と思えるかもしれない。

 必死に嬉しさを、下唇を噛み締める事で押さえていると、アパートに到着した。カンカンと鉄の階段を上がって二階の「木崎」と名札が置かれた部屋に到着すると、部屋に入る前にめぐみが声を掛けてきた。


「じゃ、脱いで」

「……はい?」


 ちょっと何を言っているのか分からなかった。一応、聞きたい所だが、部屋の中で、だろうか?


「へ、部屋で、だよな?」

「は? そんなわけないでしょう? そんな格好で中に入れさせるわけにいかないもの。助かったけど、それとこれとは話が別だから」

「……え、そ、外で?」


 外で裸になるのに抵抗は無いが、それは人気が無いところ限定の話だ。流石に他の人が暮らしているアパートの二階で脱ごうとは思えない。


「外で。中に入れるにも準備があるの。あ、段ボール渡すから脱いだ洋服はその中に入れてね。‥…この時間から洗濯機は回すと近所迷惑になるから、後でコインランドリーに行くから」

「ひ、人に見られたら……」

「大丈夫よ。見られても」

「どういう意味だ⁉︎」


 上げて落とす、とはこの事か、と変に納得してしまった。助けてあげたのに、その辺は許してもらえなかった。

 まぁ実際、謎の生物の唾液塗れで部屋の中に入れば、中は大惨事になるし悪臭も大変な事になる。軽い事故になり得る。

 しかし、めぐみは無情にも部屋の中に入ってしまった。


「……うう〜」


 こうなれば仕方ない。脱ぐしかない。パーカーを脱いで手摺にかけると、そのまま下に来ている、Tシャツに手をかけた。

 周りの人が見ていないかを確認するが、長年の戦闘生活による弊害で、すぐに見張られているわけではないことが分かってしまった。

 それなら大丈夫……と、必死に自分に言い聞かせ、震える手でTシャツを脱ぎ、胸に巻いたサラシが晒された時だ。部屋の扉が開いた。


「はい。ラップタオルとバスタオ……え、なんで脱いでるの?」

「はぇえへ?」


 マヌケな声が漏れた。こんな声、前の世界にいた時にも漏らしたことがない。


「いや、まだダンボールもラップタオルも渡してなかったから脱いでると思わなかったんだけど……」

「りゃ……らっぷたおる?」

「首から下を包むためのタオルよ。両手も自由に動かせるし、それをしてれば脱いでも裸を見られることはないんだけど……いらなかった?」

「……」


 羞恥やら何やらで頭の中がグチャグチャになったフェルトは、大慌てでめぐみの手からラップタオルを奪い、身体を隠した。


「……どしたの?」

「紛らわしい言い方するなああああああ‼︎」

「ちょっ、うるさっ……静かに!」


 思わず怒鳴ってしまったフェルトの口を、慌てて塞ぐめぐみだった。


 ×××


 爬虫類のフィギュアやら置物、模型だらけの部屋の中で、メガネの青年は動画を繰り返しみていた。

 今回の実験で分かったのは、まず理性を失う事。どう見ても知性的に行動しているようには見えなかった。それと、他の面は全て成功していた事。パワーに関しては想定外だったが、これから先の生存競争を考えると、強いに越したことはない。

 あの化け物じみた人間の介入は予定外だったが、そのお陰で他の面も見れたと言っても過言ではない。


「……やはり、僕は選ばれた人間だ」


 一度目の実験で、まさかここまでの出来になるとは。サンプルはまだまだ山ほどあるが、カメレオンの文においてはすぐに完成するだろう。

 サンプルになる人間など、腐るほどいる。あとは理性を失くさせずに今の力を保てば良いだけだ。

 だが、問題が一つだけある。あの介入した人間だ。最近出てきた、ヘルメットマンとかいうふざけたヒーローと同等の身体能力を有しているように見えた。

 その上、投擲の技術は化け物じみていると言わざるを得ない。プロ野球にいたら、伝説の投手の完成だ。


「……もし、次に邪魔して来るようなら……」


 その時は容赦しない。そう心の中で決め、とりあえず試薬の改正を始めた。



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