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217 ハーフエルフっ娘と奇怪なバケモノ【ギドラ・ザ・キング編】1

「どのような状況?」

 カデン軍の本部に到着したフォーリィは、室内の各種モニターを見ながら陸および空軍の軍曹に訊ねた。

 彼女の後ろには第五隊長に扮した兄弟子がいた。

 第五部隊の指揮は副部隊長に任せ、フォーリィは兄弟子と一緒に竹飛竜(ヘリコプター)で戻って来たのだ。


「大きさは不明ですが、金色の身体で頭が三つあるドラゴンだったそうです」

 陸軍軍曹が、各砦からの目撃情報を伝える。


「侯爵様の指示通り、既に超音速機を向かわせています。到着は三〇分後の予定です」

 そして空軍軍曹が偵察状況を伝える。


「了解したわ。私は第三会議室で第五部隊長から魔木についての話を聞くから、二〇分ほどここを離れるけど、何か変化があったら遠慮なく会議室に入って来て」

「「承知しました」」


 色々な通信が入って来ている作戦本部を後にして、フォーリィは兄弟子と共に会議室に入った。


「お兄ちゃん、ご苦労様。それで何か分かった?」

 会議室に入ると、周りに気配が無いことを確認した上で、フォーリィは地球で彼女達が所属していた組織内でしか使われていない言語で兄弟子に訊ねた。


 突然魔木が現れた穴はアンジェラトゥの伯父の領地で、フォーリィが「神の審判」で地表部分を吹き飛ばしたために剥き出しになったダークエルフ地下都市にあった。

 魔木が現れる前は大量の地下水が流れ込んでいて一般人はその内部を調査する事は無理だった。

 しかし、魔木が現れて穴を塞いだため、地下水の流入も魔木によって塞がれている可能性があった。

 加えて、アンジェラトゥの伯父からの要請もあったため――と言うか、自分たちでは対処できないため、甥の婚約者を頼ったのだが――フォーリィは兄弟子を部隊長に変装させて調査をお願いしていたのだった。


「ああ、魔道具らしきものが三つ見つかった」

 机の上に置かれた手のひらサイズの魔道具らしき円盤。フォーリィはその内の一つにそっと手を伸ばす。

 すると次の瞬間、彼女の右手首から先が形を崩し、黒い霧のようになる。

 その霧は彼女の腕と繋がっていて、霧の先端はゆっくりと魔道具を包んで行く。


 そして完全に魔道具を包み込んだ後、一分ほどその状態を保った後、霧は魔道具から離れて彼女の右手にその姿を戻して行った。


「相変わらず、お前の技はすごいな」

 称賛とも呆れともつかない口調の兄弟子に、フォーリィは何でもないような声で答える。

「お兄ちゃんも、これくらいはできるでしょ?」

「俺が完全に肉体を崩せるのは精々一〇秒だ。お前みたいに余裕でできるわけじゃないぞ」

「これでも、転生後のこの身体で使えるようになったのは、宰相との戦いの少し前よ。あの戦いでこの技が使えなかったら危なかったわ」

 あの時、部屋中を埋め尽くした炎を思い出し、フォーリィは僅かに顔をしかめる。


「それで、その魔道具?何か分かったのか?」

 あの時、近くで見ていた兄弟子は、フォーリィが余裕で対処していた事を知っているため、軽く溜息を吐き、話題を魔道具に戻した。


「どうやら、地面に振動を発生させて液状化させる装置みたいね。でも、これ単体では動かないようだから、恐らく別の大掛かりな装置の一部みたい」

 フォーリィ達は知らないのだが、ダークエルフ達が地上を征服するために開発した魔道具大地の意志(ヴォルントゥ・テラ)の中のユニットの一つだ。

 大地の意志は、分子同士の結合を緩めるユニット、地面を振動させるユニット、水を生成するユニット、分子の結合を強めるユニット、そして水分を蒸発させるユニットで構成されていて、任意に地面の液状化と硬化を行える魔道具となっていた。

 これらのユニットは、故障時にユニット単位で交換ができ、兄弟子が発見したのはその交換ユニットだった。


「しかも、劣化しているようすが無いことから、作成されてからそれほど経っていないようね。こうなると、魔木が言っていたように、あそこの地下にダークエルフの都市があったのかも知れないわね」

 戦争時とはいえ、都市全体を水没させて、そこの住民を全滅させたのだ。

 だが、フォーリィも兄弟子も、そのことで心を痛めたりしていない。

 彼らは地球で所属していた組織に、メンタル面での特訓も受けていたのだった。


 続けて次の魔道具を確認しようと手を伸ばしかけたフォーリィの動きが止まる。

 そして、兄弟子が焦らず、しかし素早く机の上の魔道具を掴み、ポケットに入れた。

『お前の執務室に置いておく』

 唇の動きで、尚且つ組織の言語で兄弟子は彼女に言った。


 暫らくして会議室のドアがノックされる。


「侯爵様。超音速機がそろそろ未確認ドラゴンと接触するそうです」

 ドアの外で隊員がそう告げた。

「分かった、今行くわ」

 フォーリィは会議室のドアを開けながらそう言った。


遅くなってすみません。1話分飛ばして書いていました。

投稿直前に気が付いて、急遽この話を書き上げました。

次の話は書き終えていますので、近日中にまた投稿します。

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