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216 ハーフエルフっ娘と奇怪なバケモノ【デストロイヤー&魔木編】7

『おのれぇぇぇ!!エルフどもぉぉぉ!!地獄で貴様らを待ってるぞぉぉぉぉぉ!!』

 地獄の底から響くような怨嗟の声と共に、魔力を吸い上げられた魔木がボロボロと崩れていく。

 それと連動してデストロイヤーが巨大化していく。

 魔木が自身の形を保てなくなり、崩れ落ちる頃には、デストロイヤーは全長四十メアトル、全高十五メアトルほどになっていた。


 その時、何かが飛翔して来た。

 デストロイヤーをここまで誘導していた竹飛竜(ヘリコプター)に積んであった飛翔神気(ミサイル)が、フォーリィの指示によって発射されたのだ。

 ここで、この新しく出来た小さな湖にごと、飛翔神気の攻撃により一気にデストロイヤーを凍結すれば、後は鉄の杭などを上空から落としてコアを破壊できる。


 もし相手が地上にいたら、飛翔神気から冷却の魔石を積んだポットをばら撒いでもその部分しか凍結しないため、巨大な敵に対しては効果が低かったが、水没したバケモノだから出来る技だった。


「嘘でしょ!」


 その時、フォーリィを含めカデン軍にとって想定外の事が起こった。


 湖の水が急激に下がり、魔木の残骸やデストロイヤーもろとも飲み込んでいったのだ。

 さながら巨大な水洗トイレ。


 発車された飛翔神気は、空しくその穴に飲み込まれて行った。


 隊員達がその穴に駆け寄ろうとしたが、フォーリィが待ったを掛ける。


「待って、近寄ると危険よ。先ほどまでは湖の淵だったけど、今は崖よ。崩れたら大怪我じゃすまないわ」


 それを聞いて、隊員達は怖くなった。

 自分たちの足元も崩れるのではないかと思ったのだ。

 そして、その不安はフォーリィ感じていた。


「皆、慌てずゆっくりとこの場から離れるわよ」


 移動しながらも、フォーリィは魔木の「存在」が完全に消滅した事を確認していた。

 だが、それに反比例してデストロイヤーが成長しているのも感じていた。



      ◆      ◆


「どのような状況?」


 一足先に竹飛竜で基地に戻ったフォーリィは、指令室に入るなり現状を確認した。


「それが、穴は結構深いようで、更にそこに大量の水が絶えず流れ込んでいます」

 説明を聞きながら、フォーリィはモニターを見る。

 目の前には三つのモニター。それぞれ可視光線、赤外線、紫外線のカメラで捉えている画像が映し出されていた。

 このような撮影の場合、竹飛竜同士が空中接触しないように、それぞれ別の高度でホバリングさせているのだが、指令室からの指示で既にレンズのズームを変えて、画面上の大きさが同じになるように調整されていた。


「どうやら、あの魔木が根を使って水をせき止めていたから、ある程度の水位を保っていたのね」


 可視光線で撮影された画面では、ぽっかりと大きな穴が開いていて、底が見えなかった。

 どうやら、デストロイヤーに魔力を吸われた魔木が崩壊した事により、根を使ってせき止めていた水が一気に流れ出したのだろう。

 今は、その大穴の途中から大量の地下水が滝のように落ちていた。


「穴も深いし、あれだけ水が流れていたら飛翔神気(ミサイル)で凍結させるのは無理ね」


 先ほど竹飛竜から発射された飛翔神気は、先端に強い衝撃を与えると破裂して、冷却の魔石を積んだ無数のポッドがばら撒かれるタイプだが、地上から発射して遠隔操作でターゲットに当てる飛翔神気は、先端に強い衝撃が加わらなくても遠隔操作をしている者が起爆ボタンを使って任意のタイミングで破裂させる事ができる。


 しかし、例え穴に入る直前にポッドをばら撒いたとしても、この大量の水では効果は期待できそうもなかった。




「動かなくなったわね」


 かろうじて赤外線カメラでデストロイヤーを捉える事ができたため、フォーリィ達はずっと観察していた。

 だが、最初のうちは結構暴れていたようだが、三時間も経つと全く動かなくなった。


「魔力消費を抑えるため、休眠状態になったのでしょうか」

「そんな感じね」


 だがそれは、とても歯痒かった。

 とどめを刺せない。

 魔力を吸いつくされた魔木は崩れ落ちた。だが、デストロイヤーはどうなのだろうか。

 魔木は、自分はダークエルフだと言っていた。

 元が人間だったから魔力を吸いつくされて死んだのか。

 では、人工的に創り出されたデストロイヤーはどうなのだろうか。


 魔力の殆ど無い水の底では、いずれ完全停止となるだろう。

 しかし数百年後、もし一時的にでも地下水の流入が止まったら、デストロイヤーは再び動き出すのだろうか。


 できればデストロイヤーをこのまま放置したくない。

 かと言って、この状況では手出しのしようがなかった。


 フォーリィは軽く溜息を吐いてから指示を出した。


「穴の淵にアームを設置して、その先に赤外線カメラ取付させて。そして監視班を編成。四交代でずっと監視するように。向こうの領主にはカメラ設置の了承を取っておくから」

「「「はっ!」」」


 こうして、手が届かない場所に行ってしまったデストロイヤーは、昼夜監視する事となった。


 ちなみに半年後、デストロイヤーの姿が赤外線カメラからも消え、この件は消息不明によりうやむやの内に終わる事になるのだが、それはまた別のお話。


「侯爵様!」

 フォーリィがアンジェラトゥの義伯父にカメラの設置の了承を得るため、指令室を出てテレビ電話がある部屋に移動し始めた直後、一人の隊員が走って来た。


「何かあったの?」

 隊員の緊迫した表情に、もしやデストロイヤーに動きがあったのかと彼女は身構えた。


「王都の北に、首が三つある巨大なドラゴンが現れたそうです」

 だが、隊員のその報告に、フォーリィは思わず膝から崩れ落ちかけた。


「勘弁してよ……」


 魔木は、あの時見た二つ首のドラゴンの前に、三つ首ドラゴンを造っていたようだった。

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[一言] キングギドラ来るか~(棒
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