196 ハーフエルフっ娘の婚約5
今回はだいぶ短くなってしまいました。すみません。
『お待たせしました。カデン侯爵様とお父君のスタニェイロ様、セレカンティア・アジュール・マレール第三王女とお母君のターニヤ第一婦人様、そしてアンジェラトゥ・ラクトゥーヌ・メルオ伯爵様とお母君のエミュール様とお義父君のホーズア王様が壇上に揃いました』
ボニーニャの紹介に、会場が拍手と熱気に包まれる。
アンジェラトゥの母のメイクは、テレビカメラがあえてアップで撮影することを避けたため、誰にも気付かれることはなかった。
『ではここで、サリデュート聖教大司教代理の司教様のご入場です』
呼ばれて壇上に上がった司教は、白をベースにした装飾の少ない祭服に身を包んだ、とても真面目そうな中年の男性だった。
サリデュート聖教はカデン領と和解した後、上層部が一新され、聖教自ら贅沢を断ち切り、聖典を研鑽し、国民の為に身を粉にして働いていた。
それは、「天使様が人の姿で現れて、私達に正しき道を示して下さった」と、フォーリィが彼女の姉を蘇生させるところを遠視で見ていた聖教徒達が熱く語り、熱狂的にカデン領の方角に向かって日夜祈りを捧げたことにより、より強く『無二なる御方』への信仰が強まったためである。
『本来、司教様が婚約発表の場にご出席なさる事はありませんが、サリデュート聖教国からの強い要望により、ご参加いただく事になりました』
本来、婚約発表は家同士の約束であり、結婚式のように『無二なる御方』に誓うような事はしない。
だが、密かにフォーリィを天使認定しているサリデュート聖教国が、彼女の婚約発表会の事を聞きつけて、参加を強く要望したのだった。
『続きまして、マレール王国からも大司教代理の方が参加しています。それで、ですね……』
途端にボニーニャが口ごもり、頬を染めた。
その愛らしさが背面の大型スクリーンにアップで表示されると、会場および全国のテレビの前の人々から、「おおっ」と、ため息が漏れた。
『えーと、続きは私が説明します』
ボニーニャに説明させるのは酷だと思ったホシャロンが説明を引き継いだ。
『マレール王国は独特な文化を持っていまして。それで司教様の衣装もとても独特なのです』
彼女の説明に、全員が頭に疑問符を浮かべる。
『つまり、決してヒワイな目的でも、露出狂でもなく、彼らの正統な祭服なのです、ですので皆さん心を強く持って、決して騒がないようにお願いします。それでは司教様、壇上に』
ホシャロンの説明に、全員が嫌な予感がした。
やがて、チリーン、チリーンと透き通った鈴の音と共に、若干青みがかった白い祭服を身にまとった若い男性が壇上に現れた。
そう、祭服に身を纏った男だ。上半身は。
そして下半身は剥き出しであり、股間には金糸で綺麗に刺繍された黒い袋で大事な部分だけを包んでいた。
そしてその袋の先には金糸の組み紐がついていて、紐の先には小さな鈴がぶら下がっていた。
『えーと、ご、ご安心下さい。大事なところは隠れていますので、ギリギリセーフです』
額に汗を浮かべ、ぎこちない笑顔で弁明するホシャロンに――
(((((完全にアウトだろ!!)))))
――会場とテレビの前の人々が内心盛大なツッコミを入れていた。




