12 ハーフエルフっ娘と世界初の特許裁判4
今回、途中で切るに切れなくて、かなり長くなってしまいました。
ルキージアが絶望の、そしてブルドゥ達が勝利を確信した顔で暫く沈黙が流れた。
だが、その沈黙を破る者がいた。
「ああ、もう。仕方ないですね」
フォーリィだ。
彼女は立ち上がってブルドゥ達の前に移動する。
「さっきからサイクロン掃除機と風の魔石を無視やり結びつけて、こじつけに継ぐこじつけ。ブルドゥさん達はそんなに暇なの?」
「あっ。フォーリィさん?また勝手に――」
我に返ったルキージアが慌てて彼女を止めるが、それを手で制して言葉を続ける。
「いいの、いいの。どうせ誰もまともに裁判できる状態じゃないから」
そう言って手のひらをヒラヒラとさせる。
そんな彼女をモンバシアはニヤついた顔で見ている。
勝利を確信した彼には、フォーリィが最後の悪あがきをしているように見えたのだ。
「ブルドゥさん達は、このパネルに描かれている洗濯機が絵に描いた餅と思っているようだけど、実はもう現物があるんだよね」
フォーリィは、イタズラの種明かしをする子供のようにクスリと笑う。
「ふん。どうせ先程の手回し掃除機のような玩具――」
「と、言うわけで証人を呼んじゃいます」
人を見下したような気持ち悪い笑い顔で反論しかけたモンバシアを無視して、フォーリィは歩き出した。
予想外の動きに、法廷の誰もが無言で彼女の動きを目で追い掛けた。
そしてフォーリィは傍聴席の一番手前、家族や証人達が座っている席の前で立ち止まるとニッコリと微笑んだ。
「パサブリンカさん、証言をお願いします」
呼ばれて立ち上がったのは三〇歳くらいの猿人の男性だった。
「……はっ!裁判官!証人に証言の許可をお願いします!」
我に返ったルキージアは、慌てて裁判官に許可を求める。
「……あ、ああ。許可します」
王国の法律が書かれた本に手を置いて宣誓をしたパサブリンカに、フォーリィは再度証言をお願いする。
「えーと、私はパサブリンカと申します。木材加工の仕事をしていまして、今は川の辺の『水車小屋』で作業をしています」
「「「?」」」
初めて聞く言葉に、法定内の全員が首を傾げた。
「横から失礼します。パサブリンカさん。その水車小屋とは何ですか?」
そのまま話を続けられてしまう前に、ルキージアは空かさず質問を投げ掛けた。
「あ、はい。水車小屋とは水車が取り付けられている小屋です」
「「「……」」」
何の説明にもなっていなかった。
「ああっ!今説明します」
フォーリィが慌てて口を挟み、パネルの前に移動する。
「今、板を替えますから……誰か手伝って下さぁ~い♪」
フォーリィの呼び掛けに――
「おう!任された!」
「喜んで♪」
「力仕事は俺に任せな」
「いくらでも力になるぜ」
大勢の男達が弾かれたように立ち上がり、我先にとフォーリィのもとに駆け寄って来る。
「…………」
そしてルキージアが冷めた目でその様子を見ていた。
「皆さん。何度も有難う♪嬉しいよ♪」
板を交換してもらい、フォーリィは嬉しそうに微笑む。
「「「……お、おう……」」」
そして今回もフォーリィの天使の笑顔に見惚れる男達。
「では水車について私が説明させて頂きます」
手伝ってくれた男達が席に戻って法廷内が静かになったのを確認すると、フォーリィは説明を始めた。
「このパネルの左側が先程パサブリンカさんが言っていた水車の特許の要約です。これは川などに設置して、水の流れを受けて回転するものです。まあ、南の国で使われている風車の水バージョンです」
続いてフォーリィはパネルの右側に移る。
「で、こちらが自動ノコギリ機の特許の要約です。少し見ずらいですが――」
フォーリィは細い棒で図面の一箇所を指す。
「この部分に回転の力を加えると、こちらのノコギリが上下して木材を切ってくれると言うものです。水の力はかなり強いので水車に繋げると大きな木材でも楽に切る事ができます」
「…………」
法廷内を沈黙が流れた。
「あ、あれ?無反応――」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!」
一泊遅れて歓声が起こった。
他国には風の力を利用した風車がある。しかしこれは、この国初の魔力を必要としない作業用の自動装置である。民衆が興奮しないわけがなかった。
「それ、粉を挽いたりも出来るのか?」
「もう販売してるのか?何処で買うんだ?」
「金はあるから、今売ってくれ」
再び法廷内が大騒ぎとなり、裁判官が木槌を使って静粛を呼びかける事となった。
「水車の販売については、裁判の後で説明しますね。それではパサブリンカさん、証言の続きをお願いします」
七分後、ようやく皆の興奮が収まったころ、裁判が再開された。
「はい。先程フォーリィさんから説明があった通り、魔力の無い猿人の私でも水車を使って楽に木材の加工が可能となっています。そして木を切るだけでなく、掃除機や洗濯機も使っています」
「い、い、い、異議あり!」
モンバシアは慌てて異議を唱えた。
「証人は明らかに嘘をついています。魔力を持たない猿人が風の魔石を使っている掃除機を――」
「だから私の掃除機は風の魔石がなくても使えるって言ったでしょ?パサブリンカさん、洗濯機などがどうやって動いているか説明してもらえますか?」
付き合ってられないとでも言うように無理やり言葉を遮り、フォーリィはパサブリンカの説明を続けさせた。
「はい。ノコギリを動かしている水車の回転する力で動いています」
「「「!!」」」
法廷にいる全員が言葉を失う。
今日、初めて魔力を必要としない家庭用器具の可能性を聞かされたばかりなのに、もう既に実用化されていたとは。
「ど、ど、ど、どうせ無理矢理繋げた、形だけのものに決まっています!!」
モンバシアは狼狽し、既に弁護人としての立ち振る舞いなど構っている余裕はなかった。
「いえ、木材を加工すると沢山の木屑が出ますので、壁に設置された掃除機に『ホース』と言う管を付けて掃除しています。掃除機は大変便利で、もう自動ノコギリや掃除機無しの作業は考えられません。フォーリィさんには感謝しきれません」
とても嬉しそうに語るパサブリンカだった。
「裁判官、証言は以上です。パサブリンカさん、ありがとう♪また証言が必要になったら呼びますね」
「はい、いつでもお呼びください」
パサブリンカはニッコリと微笑んで席へと戻っていった。
「裁判官。発言宜しいでしょうか」
「許可します」
完全に流れが自分たち側に傾き、そのチャンスを逃すまいとルキージアは攻勢に出た。
「ご覧の通り、彼女が行っている事は世界を大きく変える物です。それは人々の暮らしを豊かにするだけでなく、先程の水車のように産業も飛躍的に発展させるものです」
そう、それが彼女がフォーリィの弁護人を引き受けた理由だ。
彼女はフォーリィが世界を大きく変えると確信した。
そしてどうしても見たくなったのだ。フォーリィが熱く語る世界が実現するのを。
そしてその気持ちは、情熱は声となって裁判所の人々の心を打った。
ただ一人を抜かして。
モンバシアは腸が煮えくり返る思いだった。
市場の混乱の危機を訴えることにより、被告に有利な判決を下せないようにしたつもりだったのが、逆に経済的損失を訴えられるとは、とんだ計算外だった。
いや、そもそも何もかもが想定外だった。
モンバシアの常識もスキルも全く役に立たない。
彼は叫び出したい気持ちでいっぱいだった。『違うだろう!特許裁判なんて他人の特許を無断で使ったかどうかの簡単な話だろう』と。
特許に特許をぶつけてくる?どんな非常識の塊だ。そうだ、自分が負けた訳じゃない。この裁判が常軌を逸しているんだ。こんな裁判なんて無効だ。そう心の中で叫んだ。
「い、異議あり!被告の弁護人は産業の発展などと言ってますが、そもそもこの裁判は特許技術を無断使用したかどうかを争う場で、産業や経済の影響は関係ありません!」
「異議を認めます。被告の弁護人は裁判の争点以外に話を広げないように」
裁判官は形の上では異議を認めているが、冷やかな視線をモンバシアに向けていた。
「失礼しました。以上です」
ルキージアは裁判官の表情を確認し、席に着きながらも心の中でガッツポーズをしていた。
「被告、原告、双方の意見も出尽くしたようなので、一五……いや、三〇分の休憩を挟んで判決を言い渡します」
その後、裁判官が双方に反論などが無いかを確認し、お互いの主張が出尽くしたと判断すると裁判官はそう言い放った。
そして席を立ち法廷から退場する裁判官は、疲れきった顔をしていた。
◆ ◆
「判決を言い渡します。被告は無罪――」
「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!」」」
裁判官が判決結果を口にした途端、傍聴席は歓声で埋めつくされた。
「フォーリィ、おめでとう!」
ヴェージェがすぐさま立ち上がり、フォーリィに抱きつく。
「とうとう掃除機の利権を取り戻したわね。これでもう悪夢に悩まされることは無くなるわね」
「うん……うん……ヴェージェお姉ちゃんにもたくさん迷惑かけたね」
泣きながら抱き合う二人に、傍聴席から拍手が送られる。
「こんなの無効だ!!」
その感動をぶち壊す者がいた。モンバシアだ。
「非常識だろ、こんな判決。こんなの許してたら今後弁護人はどうやって弁護すればいいんだよ!」
喚き散らす彼に、ルキージアは冷たく言い放つ。
「お言葉ですが、そもそも裁判は形にはめるものではありません。複雑な人間関係や思惑。今までの常識に照らし合わす事が出来ないような全く新しい事件、それらに臨機応変に――」
「そんな事を言ってるんじゃない!」
ルキージアの言葉を遮って、なおも喚くモンバシア。その目は血走っていて、近寄り難い形相をしていた。
「大体なんだよ!次から次へと新しいもの出して来やがって!風の魔石を使っているんだから特許の無断使用でいいじゃないか!」
尚も喚き散らしているモンバシアに、ルキージアは心の中で深い溜息をついた。
彼の言葉には論理性も何も無い。ただ感情のまま喚いているだけだ。
つまり彼は――
「負けたら癇癪?」
指摘したのはフォーリィ。
「な、な、な……」
彼女の指摘は正しかったし、彼の先程の暴言は弁護人としてはかなり不適切な行為であった。
それを素人に指摘された恥ずかしさと、腹の底から湧き上がる怒りに、モンバシアは爆発寸前だった。
だが……
「貴方は!何のために弁護人やってるの?」
突然のフォーリィの叫びに、モンバシアは動きを止めた。
「な?」
そして彼女は、怯んだモンバシアに更に言葉をぶつける。
「ブルドゥさんを助けたいと思った?正義感?それともお金?どれでもいいわ。貴方は貴方の目的のためにブルドゥさんの弁護人になった。その目的を、夢をここで諦めるの?」
「…………」
モンバシアは返す言葉が見付からなかった。
だがそれは、彼女の言葉に目を覚ましたからではない。
もちろんモンバシアはここで諦めるつもりはない。この国では控訴制度はないので、判決は覆らない。だが、別の機会があったら、その時は彼女を叩き潰したいと強く思っている。
だからここで見苦しく喚き散らすのは愚策であった。
そのため、ここはぐっと抑えることにした。
「まだ先に進みたいなら今日は最後までしっかりお勤めを果たして――」
そして彼女はモンバシアに顔を近付けて優しく微笑む。
「次は確実に自分の野望を叶えるために、今日の敗訴の原因を分析して次に活かして下さい」
言われなくても分かっている。
そんな事、勝者側、しかも成人したばかりの少女には言われたくない。
でもここは怒りに任せてはならない。
そんなモンバシアの胸の内をよそに、フォーリィは言葉を続ける。
「しかし……ブルドゥさんの弁護人さんが私の特許を一通り確認したのなら、魔力を使わない道具に反応して欲しかったですね」
「……え?」
魔力を使わない道具なんて今回の裁判に関係ない所だと思ったから切り捨てたのだが、そこに勝訴のヒントがあったのか?モンバシアは思考を巡らせた。
だが、彼女の次の言葉は全く想定外のものだった。
「だってその技術は貴方達の地位を大きく向上させる物なのだから」
「……え?」
地位を向上?
モンバシアは彼女が何を言っているのか分からなかった。
そもそも『貴方達』とは何だ?弁護人達の事か?
地位がどのように向上するんだ?
「……向上?」
「そう、向上。だって魔力を必要としない自動の道具ですよ。同じ道具を使えば貴方達もエルフ達と全く同じ作業ができるって意味ですよ」
「「「「‼」」」」
フォーリィの言葉に、モンバシアだけでなく傍聴者達も衝撃を覚えた。
確かにその器具なら魔力を持たない猿人達もエルフ達と全く同じ事ができる。水車が使える所と言う制限はあるが。
「つまり今後、水車以外の動力が開発されて小型化も進めば、貴方達ヒューマンの社会的地位が上がるんです」
「ヒュー…マン?」
初めて聞く言葉に、モンバシアは首を捻る。
いや、頭に疑問符を浮べているのは彼だけでなく、この場にいる全員だった。
「猿人の別名よ。今後エルフ達と対等になるかも知れないのに猿じゃおかしいでしょ」
「対等……ヒュー……マン。ヒューマン……ヒューマン!」
モンバシアの目には既に憎しみはなく、その瞳は歓喜に満ちていた。そして思い出した。どうして自分は弁護人を始めたのかを。
そう、彼は親友が不当に解雇された事に抗議する為に弁護人を始めたのだ。
モンバシアの親友は、猿人で魔力がない事を理由に過酷な労働を強いられていた。
五年前、待遇改善を雇い主に訴えたところ、解雇を言い渡されたのだ。
モンバシアは親友を助けたい、亜人と言われ虐げられている魔力を持たない者達を助けたい、その一心で頑張って王国の法律を学び、資格を取った。
それなのに、親友を助け、他の人達を救うに従い彼は裁判に勝つ事が生きがいになっていった。
勝訴の甘美は彼の心を濁し、次第に勝つことが目的となっていった。どんな手を使っても。
「そうでした。私は猿人……ヒューマンの地位を守るために働くべきでした。フォーリィさん、目を覚まさせてくれてありがとう」
そう言ってフォーリィの手を取るモンバシアに、傍聴者から盛大な拍手が贈られた。
青い顔をして一人項垂れるブルドゥを残して。
◆ ◆
「はぁ……」
あれから五日。ブルドゥは商品が積まれた倉庫に座り込み、途方に暮れていた。
事業拡大のために商業ギルドから借りたお金の利息。各工房への支払いなど、多額の返済が待っているのだが、現在彼は掃除機を販売する事が出来ないでいた。
いくらサイクロン掃除機が人気があるとはいえ、返済のため赤字覚悟で値引きすれば彼が販売していた掃除機も売れない事はなかった。
これが特許侵害にならないのであったならば……
そう、あの裁判の後、傍聴者達が帰り始めた頃にフォーリィが伝えた一言。
「そうそうブルドゥさん。貴方の掃除機は私のデザイン特許に引っ掛かるから販売を停止して下さいね」
デザイン特許。初めて聞くその言葉に彼の理解が追いつかなかったが、フォーリィが彼の前に広げた羊皮紙には、まさしく彼が販売している掃除機のデザインそのものに対して彼女が特許権を持っている事を示していた。
特許侵害を避けるためには、なるべくコストを掛けずにデザインを変えなければならないのだが、そもそも掃除機の原理が分かっていないため、どこをどう変えれば良いのかが分からなかった。
「ブルドゥさん」
突然後ろから声が掛けられた。
振り向いて確認しなくても分かる。フォーリィの声だった。
「何ですか?私を笑いに来たんですか?」
「笑わない……いや、笑えないわよ」
彼女の言葉の意味が分からず、ブルドゥは首だけ動かして顔を彼女に向けた。
そのブルドゥの瞳に映っているのは無表情だが若干怒っているような顔の少女だった。
その顔を見て、ブルドゥは彼女を騙した自分を怒っていると思った。だが違った。彼女が怒っているのは自分自身に対してだった。
(大金を手に入れた人の心がどのように変わるか、私は十分知っていたつもりだったのに……)
「では何しに来たんですか?」
「ブルドゥさんにまだ返してもらっていない物があったからね」
冷たく見下ろすフォーリィが、抑揚のない声で告げた。
「これ以上……まだ私から奪うのですか?」
まだ何かを取られる。それを聞いてもブルドゥは絶望しなかった。いや、もうすでに絶望の淵に立たされていて失うものなどなかった。
このままでは次の中締めの日までに一家そろって首を括らなくてはならない状態だったからだ。
「ブルドゥさんが持っている私の掃除機の特許よ」
意外な言葉に少しだけ驚いたが、すぐに絶望しきった顔に戻り、呟くようにブルドゥが質問する。
「ああ、まだそんな物がありましたね。なぜそんな特許を欲しがるのですか?あなたのサイクロン掃除機の前ではゴミ同然でしょう?」
「私は、自分が作った製品の特許を他人が持っているのが嫌なの。だからさっさと特許をよこしてちょうだい」
ブルドゥは再び彼女から視線を逸らして、力なく地面を見つめた。
「そうですね。元々あなたの物ですからね。分かりました返します。持って行って下さい。後で手続きをしておきます」
「何バカなこと言ってるの?裁判に負けたブルドゥさんから特許も巻き上げたら悪い噂が立つでしょ。商売に悪影響を及ぼすわ。だからちゃんとお金を払います。値段は、そうねぇ……三七〇万クセルにするわね。拒否権はないですよ」
「えっ?」
ブルドゥが慌てて振り向いたが、既にフォーリィは倉庫から出るところだった。
「明日お金を持って来ますね。書類の準備をしておいて下さいね」
そして振り返らずに倉庫を後にした。
◆ ◆
「フォーリィさん」
倉庫を出て少し歩いたところで声を掛けられて振り向くとブルドゥの奥さんがいた。
「有難うございます」
そして深々と頭を下げた。
「何の事ですか?」
「主人があなたを騙して苦しめた。それなのにフォーリィさんは主人を……私たち家族を救ってくれた」
「さっきブルドゥさんにも言いましたけど、私は自分のアイデアの特許を奪い返しただけですよ」
「主人の借金と滞っている支払の総額を調べてまで?」
「うっ」
バツ悪そうにフォーリィは慌てて視線を逸らした。
「本当にありがとうございました。そしてゴメンなさい。貴方のような心優しい人を騙して」
「……別に謝る必要ありませんよ」
フォーリィがポソリと言った。
「人間、大なり小なり大金を前にすると変わるものですよ。ブルドゥさんはまだマシな方です」
そう言って、その場を後にしようと踏み出したところで足を止めた。
そしてバッグから小さな板を取り出して彼女に渡す。
「ブルドゥさんの掃除機のモデル変更案です。まあ、私の魔道モーターを使う必要がありますけど。ブルドゥさんが心を入れ替えたと奥さんが判断したら渡して下さい」
そしてフォーリィはその場を後にした。
その後ろ姿に向かって、ブルドゥの妻はいつまでも頭を下げ続けた。
やっと裁判が終わりました。
永かったです。こんなに永くなるとは思っていませんでした。




