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とある空間で、二人が向き合っていた。
腑に落ちない顔の者へ、もう一方が言った。
「酷な話ですよ。」
「・・・。」
「ある年に、それは美しい虹を見たとするよね。そう、見ていた。その虹は、いつか消える。
別で言えば、ライブ。
そのステージに立っていた方も、オーディエンス側も、その時、その瞬間を、そっくりそのまま捉えておくことは出来ない。」
この発言の後、この空間には、しばしの静寂が訪れて、
言われている方は、
「そういうのは、後々、レコーディングされたものや上手く編集されたものが世に出回る可能性が、あるだろう?」と言うことは、言えたかもしれないが、そうとは言わなかったのが事実であり、言われた方は、言われたことを、ある意味、深いところで理解していたとすれば、そうにもなる。
静寂は、父を亡くしている者により、打ち破られた。
「・・明日さ、お気に入りのTシャツにジーンズ・・そう、ジーンズにTシャツを合わせる感じで身軽に外出してさ、また、僕、ここに帰ってきたら、君は、いるんだろう?」
傍からみたら、かみ合わない会話。
だけど、双方の顔に、呆れ顔や悲壮感は、微塵もなかった。




